第075話 〝松山藩主筆頭候補〟大工部マグ
大工部マギ。
大工部マゴ。
突欠クロワ。
妖怪皇帝。
4人体制のパーティーが誕生した。
「もちろん船を譲るつもりはありませんわ。あくまで船に辿り着くまでの一時的な共闘」
マゴの提案を全員が了承。
さっきまで怯えていたクロワも、
「なんだか皇帝さんのこと嫌じゃないんですよね」
超鳥の固有能力【魅了━ファスツィナツィオン━】のおかげだった。
一行は将軍陵墓内部を探索し、床に扉を見つける。
皇帝がいくら押したり引いたりしても開けることはできなかった。
「かなり頑丈に見えるため、破壊は困難に思われるが」
「屋上にあった扉は勝手に開きましたわよ?」
「勝手に……?」
マゴの発言をいぶかしむ皇帝。
「ほら、ご覧なさい」
マゴがふんぞり返る。
確かに誰も手を触れていないにもかかわらず、扉は開いた。
だが皇帝はマギに目を向ける。
「息子よ、やはり貴様の能力は……」
「早く進みなさい!!!!!」
マゴが兄に鞭を振るう。
「もたもたしてると皇帝のおっさんに先を越されてしまいますわよ!」
「下の階に何があるかわからないぞ」
マギは慎重だった。
「そちとてケガしたくないはず。用心して行こう」
「おおお! 人間の愛!」
マギの思いやりに皇帝はいたく感動。
「……余が鞭で叩かれたところは見ていなかったのか?」
4人は下の階に進む。
* *
場面はかわって松山城。
「おー。久しぶりじゃーん」
城主の間で出迎えたのは大工部マグ。
突然の訪問にも平然と対応する。
「あなたは相変わらずですねぇ」
玄関ではなく窓からぬるりと入り込んで来たのは長子・大工部マガ。
またの名を巡カズスエ。
蚊虻教の教祖として暗躍している。
「城主筆頭候補になったのに、まだそんな服を着てるんですかぁ?」
マガは煽る。
第3子マグが来ているのはぴっちりしたラバースーツ。
「いいじゃん。これ好きなんだもん。仕事はしっかりしてるよ?」
「その点は心配してませんよ」
「で、何の用? マガってなんちゃら教っていう宗教やってるんでしょ? サボリ? 暇なの?」
「蚊虻教ですぅ。忙しいですぅ。バカな弟に手を焼いてますからね」
「バカな弟って言うと? どっち?」
「マギです。そう言えばマゴは?」
マグは第5子マゴに関する説明をした。
「町長ですか……。まあ、お飾りですから大丈夫でしょう」
安心するマガ。
マグは容赦なく、
「でも気に入らない召し使いに暇を出しまくってるらしいよ」
「……」
「私も注意はしたよ? でも、あんまし強く言う気にはなれないんだよねー。やっぱさ、あの子が一番母上になついてたじゃん。結構つらいんだと思う」
すでに先代将軍の訃報は日本全国に知れわたっている。
ただし、その正体が彼らの母だとは一般市民の知るところではない。
重くなった空気を変えようと、マガはおどけるように、
「それにしても、あなたは私に驚かないんですね」
「どゆこと?」
「よく見て」
言われるがままによく見てから、ようやくマグは兄の変化に気づいた。
「きもーっ!!!!!」
マガは人の体をしていなかった。
貝殻のような上半身。
イカのような下半身。
まるで妖怪である。
「なんでこんなことになっちゃったの!? 卵を割った?」
「妖怪になったんじゃないんですよ」
「あー……改造されたんだ?」
マグは察した。
彼らの父親・大工部ヒトフリはカラクリに精通している。
「戦闘で受けた傷を治療するついでにね」
マガは得意気な顔をした。
一方、マグはドン引きを隠さない顔をして、
「わざわざそのキモイ姿を見せに来てくれたの? もういいから。帰って。しっしっ」
「はいはい」
「あれ? 本当に帰るの? 用は何だったの?」
「……別に用なんてありませんから」
「……寂しかったら、いつでも来ていいからね」
「何も言ってません」
マガが城から出て行こうとしたところ、ふとマグは思い付く。
「せっかくここまで来たんだったら、ついでに妖怪退治してってよ」
「公儀祓除人でも呼べばいいんじゃないですかぁ?」
「でもめっちゃ強いんだよ」
「どんな妖怪なんです?」
「なんかねー、羽が生えてて、体がカッチカチで、ガキみたいなやつ」
聞き捨てならない情報だった。
「……ほぅ?」




