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30.一方その頃

最近更新できなくてすみません!仕事とか忙しくなるので毎日更新は厳しいですが、必ず更新するのでお付き合い下さい!


一旦こっちが一段落するまで最強少女の方は更新止めますが、必ず更新するので読んでくださっている方には申し訳ないですが、気長に待っていただければと!


「詠唱破棄!火よ!」


 詠唱の呪文と共にグラスウルフが火に包まれ床へ倒れる。土に囲まれた通路に肉や毛の焦げる匂いが充満する中、少女は汗を腕で拭い一息着く。


「ふぅ、やっと慣れてきたわね」

「お疲れ様です。サラさん」


 後ろから歩み寄るルシールはそう言いながら水の入った革袋をサラに手渡す。


「ありがとね。それにしてもルシールって詠唱破棄までできたのね?」

「えぇ、昔習って訓練したんですよ」

「昔って、アタシと年も変わらないだろうに……」


 水で喉を潤わせて、通路の向こうを見る。通路の奥では時折、重い打撃音と獣の断末魔が響いている。音の主は天井に届こうかと言う程大きく、重厚な筋肉を纏った巨漢であり、その周囲には先程倒したのと同じグラスウルフが山と詰まれていた。


「お、そっちも終わった様であるな!」

「武器も使わないで魔物倒すなんて化け物ね……」

「ハッハッハァ!!筋肉とは武器であり鎧なのだよ!」


 その巨体に合わせる様に大きな笑い声が通路に響く。


「でも、ゴンザレスに会えてよかったわ。詠唱破棄についても学べたし」

「貴族たる者の努めだよ。気にするなサラ嬢!」

「サラさん、公爵様なんですから呼び捨てはマズいですよ……!」


 この世界の国々では階級制度が導入されており、通常であれば庶民が貴族を呼び捨てにすることも馴れ馴れしく話しかける事もほぼ無い。しかも公爵とは王族を抜けば最高位の貴族であり、場合によっては文字通り首が飛んでもおかしくない相手である。


「気にするな少年!貴族とは庶民に支えられて生きているのだ!有事でもなければお互いただの人と変わらんよ!」

「でも……」

「それとも何か?ゴンザーラ家の者はコレくらいの事で気分を害す程狭量だとでも?」

「いえ、そうでは無いですけど……」

「なら問題ないだろう!さあ、気安くゴンザレスと言ってみよ!」

「ゴンザレス……さん?」


 豪快に笑うゴンザレスに圧倒される様にルシールは縮こまりながらそう言う。それを聞いたゴンザレスはその広い肩を精一杯縮めてサラを見る。


「まぁ、人にはそれぞれ距離感があるからな。少年は魔法の才能があるのに小さい事を気にし過ぎだな!」

「それにしてもゴンザレス。その見た目でジョブが魔法使いなんて未だに信じられないわね」

「我がゴンザーラ家は魔法の名家だからな!貴族たる者は魔法が達者でなくては務まらんのだよ!」

「貴族で冒険者って言うのは良くある事なんですか?」

「いや、当主で冒険者をしているのは我だけだろうな」


 サンザーラ王国では魔法とは貴族の嗜みであり、有事の際、国を守るのに最低限必要な武装でもあった。その為、貴族の子息が冒険者としてダンジョン攻略行うこと自体は珍しい事では無いが、低いとは言え命を落とす事もあるダンジョン攻略を行っているのはサンザーラ王国でも非常に珍しい。


「そういえばサラ嬢!まだ先入観が強い様に見えるぞ!詠唱とは魔法を行使する為の補助であり、本来魔法とは自由なのだ。もっと頭を柔らかくするのだ!」


 そう言いながら、指の先から雷、水、炎、土、岩の小さな塊を出現させくるくると回転させるゴンザレス。


「自由にって言ったって……。ゴンザレス以外に無詠唱なんて見たこと無いわよ……」

「我より魔法に長けた者なぞゴロゴロ居るぞ!二人は我より魔法の才能があるのだから努力すれば必ずできる!」

「魔法の話なのに脳筋なのね……。無詠唱魔法を使う人って結構いるのかしら?」

「いえ、僕も兄様以外では見たこと無いですね……」

「ほれみろ!コレくらいできる者なんぞそこら辺に居るものなのだよ!」


 胸を張り豪快に笑うゴンザレスに呆れる二人。


 イーリスでの転移事件でサンザーラ王国へ飛ばされたサラとルシールは、転移先で運悪くグラスウルフの群れに襲われ、偶然通りかかったゴンザレスに助けられ、今に至る。


「そういえば二人はどうしてココに?見た所この国の出身ではなさそうだが?」

「実は――――」


 ゴンザレスに問われ、二人は今までに起きた事をかいつまんで説明する。


「ふぅむ……」


 先程の豪快さとは違い、真剣に悩みこむゴンザレス。


「それはマズいな……」

「マズいって?」

「いや、大した事では無いのだが、二人が正式な入国手続きを取って居ないと言うのがちとな……」


 そう言って暫く考え込んだ後、思いついた様に口を開くゴンザレス。


「そうだ!深く考えずに全部済ませてしまおう!」

「「え?」」



――――――――――――――――――――――――――――――


 塵一つなく掃除の行き届いた赤い絨毯。その両端に規則正しく整列している兵士達。絨毯の先では豪華な宝飾を施された玉座に座る壮年の男性と横で控えている眼鏡を掛けた老人。そしてその前でかしずく三人。


「面をあげよゴンザレス。発言を許可する」

「はっ、本日ダンジョンにて鍛錬を行った所、異国のこの者らと出会い、話を聞くに不慮の事故でこの国へ来てしまったようで」

「ふむ。それは災難だったな。それで?それだけなら手続きを済ませればよかろう?」

「勿論それだけであれば私だけで対応するのですが、この者らの身分が少し問題でして」


 淡々と話すゴンザレスに眼鏡の老人が反応し、馬鹿にするように笑いながら問いかける。


「どう問題なんだ?王の時間を取る程なのか?」

「我は王と話しておるのだ。貴様が口を挟むなザイード」

「なっ……!!」


 ゴンザレスの威圧的な態度に怯みつつも顔を高潮させ言葉を続けようとするザイード。しかし言葉が口から出る前に王が手を挙げ静止する。


「よせ。客人が見ているぞ。で、何が問題なんだゴンザレス」

「はっ。この者らはイーリスの勇者の同行者であり、対応に間違いがあれば国際問題に発展しかねないと思い、王の沙汰を下していただきたく存じます」

「ほぅ。イーリスの……」


 そう言い目を細める王。その隣で不服そうに三人を睨むザイード。しばしの沈黙の後、王が口を開く。


「であれば失礼があってはいけないな。ゴンザレス。この件に関してはそちに一任する」

「はっ!」

「ザイード。イーリスへ親書を送る。準備を」

「かしこまりました」


 そう言いその場を後にする王。そしてその場にかしずく三人を見下しザイードが口を開く。


「ふん!こんな汚い小僧共に王の手を煩わせるとはな。ゴンザーラ家の質も落ちたものよ」


 サラは少しムッとした表情をするも相手は貴族であり、このような公式の場で庶民の自分が口を挟む事はできないと、口をつぐむ。


「貴様、何と言った?」


 ザイードが不満を言い満足そうな顔をしていると重く冷たい声が広間に響く。


「な、何だ!流石の貴様も家を侮辱されては黙って居られないか?」


 強がっては居るがザイードの声は震えている。


「我が家を侮辱したければすれば良い。それは我の落ち度だ」


 かしずいた姿勢のままそう続けるゴンザレス。しかしその後ろ姿は怒気に満ちており、それを表現するかの様に体を纏う魔力が大きくなり、その密度から空気が歪んでいる様に見える。


「しかし、客人を侮辱する事は許されん。その行為はこの国の……王の威厳を損なう行為であるぞ?」


 なお高まり続ける魔力に耐えきれなくなった床に亀裂が走る。至近距離でその魔力を受けるルシールとサラは苦しそうに息をしていた。


「貴様に礼儀を教えてやろうか?」

「ひっ……お前に教えられる事などあるものか!ワシはお前と違って忙しいからな!」


 そう言いながら逃げるようにその場を後にするザイード。広間の扉が荒く閉じられ、その場の緊張が徐々にほぐれていく。


「む、すまんがココの修理を頼む」

「はっ」


 何事も無かったかの様に立ち上がり、近くに居た兵士に床を指差しそう指示するゴンザレス。先程の圧力から開放されたサラとルシールは体勢を崩してその場にへたり込む。


「恥ずかしい所を見せたな」

「いや、そんな事ないですよ……」

「それよりさっきの魔力が効いたわね……」

「では、詫びとして我が家で食事を振る舞おう!」


 ダンジョンでの調子を取り戻したゴンザレスにホッとしつつ苦笑いを浮かべる二人。


「あの人は怒らせない様に気をつけましょ……」

「そうですね……」

「どうした?何か言ったか?」

「いえ、ご飯が楽しみだなって話てたんですよ!」

「そうかそうか!ならこの国の名物をたっぷりと食べさせてやろう!さあ、こっちだ!」


 そう言われ引きづられる様に広間から連れ出される二人。広間には来た時と同様に規則正しく整列した兵士達だけであった。

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