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そして、2月14日。
待ちに待ったバレンタイン。
わたくしは、ミハエルに告白する……!
といっても、ラザンの根回しのおかげで、わたくしが昨日久しぶりに学院へ登校した時には、もうラザンとの婚約解消も、ミハエルとの恋も周知になっていたのだけれど。
襲われかけたわたくしを身をていしてかばったミハエルをみて、わたくしはずっと自分のそばで守ってくれていた人にきづいて……という虚実おりまぜたロマンスが語られているらしい。
おかげで周囲の目が生暖かいです。うれしいけどね。
国王陛下たちにも、ラザンとの婚約解消は認めていただいた。
お父様にいたってはミハエルとの恋を喜んで、応援してくださった。
ほとぼりが過ぎたら、わたくしとミハエルは婚約することになるだろう。
だから今更といえば今更なんだけど。
この日、告白して結ばれた恋人たちは、何人たりとも引き離せない。
それが、この世界でのバレンタインというイベントだ。
念には念をいれて、告白したいじゃないですかっ。
両想いだと知ったなら、なおさらね。
わたくしは、告白スポットである時計台の前に、ミハエルを呼び出していた。
周囲にはたくさんの人だかり。
シイタケ伯爵に寄り添っているのは、ヒロインだ。
ラザンは……、マツタケ侯爵令嬢が彼の隣をキープしている。
才色兼備で侯爵家の娘である彼女が、ラザンと同じ年齢なのに今まで婚約者もいなかったのは、ラザンをひそかにおもっていたかららしい。
このたびの婚約解消を聞いて、「わたくしなら、王太子のおそばにいられるのなら、どんな危険も受け入れます!」と平素のおとなしやかなさまもどこへやら、猛烈に立候補したそうだ。
今はまだ、彼女の立場も保留中だけど、うまくいくんじゃないかな、なんて思っている。
余計なお世話だろうけど、ラザンにも幸せになってほしいから。
周囲をみまわして、そんなことを考えていると、ミハエルがこちらへ歩いてきた。
日の光に照らされて、銀の髪が輝く。
はにかんだように微笑むその顔に、わたくしの胸がどれだけきゅんきゅん高鳴っているか、だれかれとなく語りたくなる。
ミハエルが、わたくしの正面まで歩いてきた。
わたくしは、両手を胸において、いう。
「ミハエル。わたくし、ずっとあなたのことが」
言いかけたところで、ミハエルがわたくしの唇を手で覆った。
いうなってこと?
まさか、いまさら……?
信じられないと目をまるくしたわたくしの両手をとって、ミハエルはその場にひざまずいた。
そして、わたくしを見上げて言う。
「その言葉は、俺に言わせてほしい。アリーシャ。ずっとあなたのことが、好きでした。これからもずっと俺と一緒にいてほしい」
わたくしを見つめるミハエルの瞳は暖かくて、わたくしを包み込むようで。
わたくしの目に、涙がうかぶ。
守ってあげたいと思っていたかわいい弟。
守ってくれたたくましい騎士。
そのすべてが、あなたなの。
わたくしは、なんて、幸せなのかしら。
「もちろん、返事はYESよ!わたくしだって、大好きだわ、ミハエル!」
ぎゅっとミハエルの首に抱きつけば、ミハエルは危なげなくわたくしを抱きとめてくれた。
「愛してるよ、姉さま」
そう耳元でささやいて。




