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21話 急転

スランプ中なので色々すっ飛ばします。

「さて、フレリアはヴィジーに対して何か言うべきことがあるのではないかな」

「え、ボク?」

 開口一番アルバーナのセリフに目を点にするヴィジー。

 今、この部室には部員全員が揃っており先日の乱入についての反省会を行っていた。

 アルバーナは一つ頷いて。

「その通りだろ。ヴィジーはフレリアに命令によってピエロを演じていた。あの空気の悪さはさすがのヴィジーでも辛いものがあったのではないかと推測するが」

「いや、まあ。確かにユラス君が登場するまで冷や冷やものだったけど、ボクとしては結構スリルがあって楽しめたから別に良いんだよ」

 ヴィジーはエキセントリックな性分であり、己の身に深刻な危険が降りかからない限り大歓迎というスタンス。

 今回の乱入もフレリアに脅されていたとはいえ、本人自身も楽しんでいる節があった。

「実際ユラス君の活躍によってボクの失態など無かったことにされたから何も言うことなし。むしろ楽しませてくれてありがとうと言いたいね」

 ヴィジーはあの時の様子を思い出しているのかクツクツと喉を鳴らす。

 その様子から本気でどうでも良いと考えていると判断したアルバーナは背もたれに体を預ける。

「そうか、まあそれなら別に良い」

「全然良くありませんよ!」

 が、ここまでずっと黙っていたメイプルが顔を真っ赤にして立ち上がる。

「ユラスさん、あなたはもっと怒るべきですよ。勝手に物事を進められ、準備どころか情報すら与えられずにいきなり大一番の舞台に放り出される。私なら噴飯ものですよ!」

 確かにこの計画はフレリアが中心となって進み、主役のアルバーナが知ったのは登場直前。本人以外全員が出演することを知っている逆シークレットライブみたいなものだ。

 が、アルバーナはあっけらかんと。

「まあ、俺が知れば反対していただろうな」

 アルバーナからすれば新歓は別にそんな大勝負をかける程重要ではなかったので必ずストップをかける。

「だから、その意味ではフレリアの選択は正しいな」

 と、何故かアルバーナはフレリアを褒めた。

「いや! 何でそんな言葉が出てくるのですか!? おかしいでしょう色々と!」

 アルバーナの言葉に訳が分からないと叫ぶメイプル。

 そんな彼女にフレリアは口を開いて。

「ユラスに一般人の感覚を求めること自体が間違っているのよ」

 達観したことをのたまうフレリア。

「ユラスは遊んでいたおもちゃを横から掻っ攫われて怒らない。別のおもちゃで遊ぶだけで、それを取っても怒らず最後は寝てしまうのよ」

「ああ、確かに。ユラス殿は最後のおかずを取られても平然としていたのを覚えている」

 翡翠ものっかって幼少時のエピソードを話す二人にアルバーナは一言。

「時間を潰す、空腹を満たすといった目的は達成されたからそんな些細なことで目くじら立てるのはおかしいだろ?」

 そうかもしれないが、何故小学生ぐらいの年齢時にそんな境地まで達しているのか。

「まあ、旅をしていれば理不尽なことなんて日常茶飯事だぞ。身ぐるみ剥がされて奴隷として売られた時もあったし、とある少数種族に捕まって儀式の生贄にされかけた時もあったしな」

 あっけらかんと、空気が凍りつくにもかかわらずアルバーナはそんなことを言う。

「……私、本当にユラスさんに勝てる日が来るのでしょうか?」

「大丈夫よメイプルちゃん。諦めずに努力していれば必ず追いつけるわ」

 メイプルが自信無さ気にそんなことをポツリと呟いたのでエイラは彼女の頭を撫でながら元気づけた。

「まあ、とにかく」

 コホンとアルバーナを咳をして空気を元に戻す。

「あの乱入のおかげでこの教育研究部の知名度は一気に上がったわけだ」

「はい、空き教室を使用して行った討論も多くの方に見て頂き、さらに内容も好評でした」

 カナンはその言葉と同時に数十枚の入部届を出す。

「この二、三日だけでこんなに集まりました。この調子ですとさらに集まるでしょう」

「やはり空き教室使用を許可されたのが大きいな」

「さすがにあそこまでやっておきながら教室申請を認めないとなると不公平感が出てしまいますからね」

「カナン、そしてエイラ先生、ありがとう」

 アルバーナは骨を折ってくれた二人に向かって頭を下げる。

 本来なら認められないのを認めさせたのが二人の尽力によるものなのが周知の事実である。

 その裏の苦労を想像したアルバーナはただ頭を下げるしかない。

「いえいえ、ユラスさんのためですから」

「この時ぐらい顧問の先生らしくしないとね」

 と、ありがたい言葉を掛けてくれる二人にアルバーナはますます頭を深く垂れた。

「ユラスさんが頭を下げるなんて意外ですね」

「おいメイプル、それはどういう意味だ?」

 その様子を見ていたメイプルは意外とばかりに呟いたのでアルバーナはジト眼で顔を上げる。

「ユラスさんの性格上傲岸不遜、唯我独尊を地で行く性格だと考えていましたので」

「それは泣かされたいというメッセージか? いいぞ、すぐにでもその望みを叶えてやろう」

「ご、ごめんなさい」

 アルバーナの眼が本気だということを察したメイプルはエイラの陰に隠れて涙ながらに謝罪した。

「また話が逸れた」

 アルバーナはそう呟いた後にフレリアを見て。

「フレリア、他の新入部員や見学者達の対応を任すことが出来るか?」

「ええ、十分そつなくこなせるわ」

「俺がいなくとも大丈夫か?」

 アルバーナの質問にフレリアは笑って。

「結構ユラスによって鍛えられたからね。大丈夫、あなたが何を伝えたいのか十分理解しているわ」

 それを聞いたアルバーナはゆっくりと息を吐いて「そうか」と答える。

 そしてアルバーナは立ち上がり出口へと向かう。

「少し行ってくる」

 おそらくまたアルバーナの放浪癖が出てしまったのだろう。

 いつものことなのでフレリアを含め、全員が特に注目せずに見送り、そのまま解散した。

 この時皆は浮かれていたせいかアルバーナが普段と少しだけ寂しさの色を覗かせていたことに誰も気付かなかった。

 現実は非情である。

 ここまで好き勝手にやってまでもお咎めなしとかそんな甘い処分などない。

 あくる日の早朝

 このような紙が掲示板に張り出されていた。

「……何なのよこれ」

 フレリアはその掲示板の前に立ち、信じられないとばかりに真っ青になって呆然としている。

 その紙にはこう記されてあった。



 次の者、退学処分に処す


 一年A組 ユラス=アルバーナ

スランプが「もうすぐ来るよ」って予め報せてくれるのなら本当にありがたいんですけどね。

現実は今の様に突然訪れてきてしまう。


応募作品に構想期間を含めて2ヶ月というのは無謀過ぎたのかなと後悔してみたり。

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