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5、属性選別の裏と表

「うお!?これRX7じゃないですか!?」


学校の駐車場。六文銭舞雪は自身の車のドアを開け、天川にも乗るように促す。


「?ああ、こいつを知ってるのか。別に大した思い入れはないんだがなんとなく気に入っててね。それよりさっさとおまえも乗るんだ」


黒いスポーツカーを見て感動している天川を尻目に六文銭は特に感想はないと言った感じだ。

一方の転生前の天川はスポーツカーに乗ることが憧れだったのだが、維持費が高すぎるので断念していたのだった。

天川も助手席に乗り込みその内装を見て目を輝かせる。


「…初めて楽しそうな顔を見せたな、天川翔。だが今のお前にそんな余裕はないぞ?」


言いながら六文銭はエンジンをかけた.

轟音が辺りに響く。車が動き始めた直後、天川も正気に戻った。


「…失礼しました。しかし先生、前会った時と口調が少し違いますよね…なんか荒くなったというか…」


天川からの指摘に今度は六文銭がはっとなる。


「…失敬。感情が高ぶるとどうにもね。じゃあ、お互い正気に戻ったところで今後の方針でも話そうじゃないか」


六文銭はそう天川に笑顔を見せた。

車は学校を抜け街中を走りだす。


「その前に。試験に合格したとはいえ僕って無属性には変わらないですよね?そこらへん先生はどう考えてるんですか?」


これは海野にも言われたし天川自身も疑問に思っていたことだった。

魔法は本来持って生まれた属性の有無で大きく差が生まれる。それは努力ではどうにもならないと教科書にも書かれていた。

それでも六文銭は時属性の顧問として天川を生徒として認めたのだ。

属性の才がない天川を。

だが六文銭はくつくつと笑いながら



「君のその…『異常な魔力量』があればそれで充分さ。『今』の所は…ね」



そう答えた。

異常な魔力量。

天川は夢で出会った少女。

水無月霧雨を思い出す。

彼女にも同じことを言われた。

しかしだ。

確かに天川は魔法の授業でも時の試験の練習でも脅威のタフネスを見せた。

しかし周囲が多少驚いただけで特別な才能という評価はされていない。魔力の多寡ではなく属性の有無の方が重要視されているはずだ。

少なくとも学校では。

そう思考しながら表情を曇らせる天川に六文銭は口元を歪ませた。


「解せないかい?まあ、あれだけ周囲が属性属性と騒ぐのだから無理もない…事実、属性『が』重要なのは事実さ」


六文銭は『が』の部分を強調した。

何が言いたいかわからない天川は六文銭の次の言葉をまつ。もったい付けるなよと少し苛立ちながら。


「ふふふ、怒るなよ?君の反応が少し面白かったからな…じゃあこれぐらいにして核心を言うか」


六文銭はそもそもだ…と貯めた後…






「【『無』属性などというものは存在しない】」






と、言い放った。


六文銭のいきなり且つ驚愕の発言に天川は眼を見開く。


「それは…どういう意味ですか?」


期待通りの天川の反応を見て六文銭は満足そうに笑った。


「選別の水晶はあくまで現段階で確立されている属性…火、水、地、風、心、命、時の魔力にしか反応しない。つまり仮に新たな属性持ちが現れたとしても、だ。当然水晶は反応しないから全部一緒くたに無属性とされるのさ」


…なぜそんなことを?

天川は考える。

他の人が言うならいざ知らず、時魔法の権威である六文銭が言っているのだ。

信憑性は高い。

にもかかわらず、学校では水晶が反応しなかった生徒は有無を言わさず無属性の烙印を押されていた。

…。

もしかしたらあの中に新たな属性を持つ才能持った子がいたかもしれないのに。


「…愚考かもしれないですけどあれですか?『愚民化計画』って奴です?先生の言うことが仮に本当だとして、全ての人間がなにかしがの属性持ちであれば管理しきれるものじゃなさそうだし」


天川の返事に満足そうに頷いた六文銭。


「その通り。『監視管理する側』にとってはもう新たな属性なんて確立されたくないのさ。現時点でも世界を滅ぼしかねない魔法使いも…複数人いるから…ね。だから『選別』によって危険な才能をはじく」


世界を滅ぼしかねない。

なるほどと天川も頷く。

属性選別は表向きは属性の有無を見分けるもので『裏向き』は新たな属性の排除が目的だったのかと。


「…と、話が逸れたな。ところで天川。君の異常な魔力量の事なのだが…単純に君が持って生まれた才能という可能性もあるにはあるのだが。もっと説明のつく理由がある」


と、突然六文銭は話題を変え急に真剣な表情に変わった。天川自身としてはもう少し続けたい話題であったものの、こちらも気にはなっていたので六文銭の次の言葉を待つ。


「そしてそれを説明するうえで、先ずは私の質問に君が答える必要がある」


天川は黙って頷いた。



「君…死んだ経験はあるか?」



「!?」



「…それはどういう」


意味ですかという前に六文銭が被せてきた。


「別にみなまで言えとは言わないさ。イエスorノーでいい。経緯はいらない」


天川は黙ってしまう。どう答えれば良いべきかと。

と、ここで天川は思い出す。

会話に夢中で気づかなかったが、アルマの姿が見えない。

そもそもツーシーターなのでアルマの座る場所がない。

それで天川が何気なく後ろを振り向くと、アルマが車のウイングにぶら下がって風に揺られていた。


…。


本当に何してんだあの女神は。


天川はなんだか考えるのがあほくさくなってきた。


「…ありますよ。詳しいことは何も言えませんが」


なので正直に答えてみた。

これだけならまあ、問題はないと判断したから。


「そうか。それは結構結構、これで大分『工程』を省ける」


ここで六文銭は車を停止させた。

そこは大きいスポーツジムだった。


「続きはここで話そう」



ーーーーーーーーーーーーーーーーー


ジム内。

六文銭が貸し切りにしていたそうで、中には誰も人がいなかった。


《天川!天川!私はトレーニングマシーンで遊んでてもいいですか!?》


アルマは初めてのジムだったそうではしゃいでいた。

天川は好きにしろよとため息をつきながらそう返した。いつの間にか店内にあったジャージなのかそれを拝借(厳密には拝借ではないが)しそれに着替えていた。


そして。


ミラー張りされた広いフィットネスルーム。


六文銭と天川が差し向かいで立っている。


「さて。君に死んだことがあるか否かを問うた理由なのだが。君に限らず誰でも例外的に魔力が爆発的に跳ねあがるときがある。死んだ時がそれだ」


六文銭が腕を組みながらそういう。


「死ぬ瞬間に魔力が全身から放出される…つまるところ火事場の馬鹿力という奴だ」


六文銭の論に天川が疑問符が浮かぶ。


「その理屈なら死んだことがあるというより、死にかけたことがあると言ったほうが正しくないですか?」


天川の反論に首を横に振る六文銭。


「死にかけ程度ではその瞬間だけ多量の魔力が放出されるだけ…魔力の容量を上げるには死ななくてはならない」


六文銭は続ける。


「死を意識することで全てのリミッターが外れ全身から魔力が放出される。その時魔力を貯めていた器が壊れる。しかし死ななかったらその器は直ってしまい元の容量に戻ってしまう」


六文銭は続ける。


「しかしそのまま死ねば体は生き返らせようと魔力を一気に生成し始める…容量を超えても作り続ける。そして体内の魔力量は肥大し続ける」


そしてと六文銭は区切り。


「完全に死ぬことでその肥大した器は肥大したまま…固定されるのさ」


だから自身に死んだことがあるかどうかと聞いたのか。


「…例えるなら元々バケツくらいの容量だったのが、こわれてドラム缶くらいの量に変わったって認識でいいですか?」


天川がそう聞くと六文銭がアッハッハッハと軽快にわらった。


「ドラム缶なんてそんな可愛いいもんじゃないけどね。でもまあその認識で正しいよ。…それじゃあ本題に入ろうか」


六文銭はにやりと笑った。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「さて。これから君は私の『課外授業』を受けていくことになるのだが…それにあたって先ず君に『身を守る手段』を教えないといけない」


喜々として話す六文銭に対して怪訝な表情を向ける天川。


「…そんな危険な授業なんですか?」


天川の問いにわざとらしく首を傾げる六文銭。


「当然だ。初めに私の教育は厳しいと言っただろう?命の危険すらあるから全力で学べよ?」


とても冗談とは思えない六文銭の口調に天川は大きくため息をついた。


「…わかりましたよ。で、僕は具体的に何をすればいいんです?」


「そのまま立っていればいい。…動くなよ」


言いながら、六文銭は天川の頭を左手で鷲掴みにした。


「!?なにを…」


「いいから黙って目を瞑れ。別に取って食いやしない」


解せない天川だったが、取り合えず抵抗を止め言われた通り目を閉じた。


「わかればよろしい。では天川翔、お前の記憶を遡ってやろう」


六文銭はそう言って。

右手の指でぱちんと音を鳴らした。


「!?」


すると。


まるでスクリーンを見ているかのように記憶が鮮明に天川の脳内に映し出されていく。

これまでのこと。

三好達とパーティーをしたこと。

時の試験の事。

アルマと出会ったこと。

最新の記憶から順番に古い記憶えと再生されていく。


「天川。死んだときの記憶まで遡ったら私に言え。そこで『再生』を『停止』させる」


再生を停止?

記憶が怒涛によみがえりそんな余裕のない天川だったが。


死んだ瞬間。


その時が再生された。


あの幼女。


飛び出してきた幼女を避けるためにハンドルを思いっきり切ったこと。



「うわああああああ!!!???」



天川は思わず六文銭の腕を振り払い目を見開き叫んでしまった。


《天川!?何があったのです!!?》


天川の悲鳴を聴いたアルマが慌てて入室してきた。


「…。うむ。どうやら『準備』が整ったようだな」


焦る二人をよそに六文銭がそう満足げに頷いた。


「…これは!?」


天川は自分の異変に気付く。

タブレットを飲まないと視認できなかった自身の魔力が視認できている。

天川を覆う薄緑色のオーラのようなもの。

それは天川自身の魔力と示していた。


「今の記憶と感覚をよく覚えておけ。それを脳内で再現することでリミッターが外れ、全身から魔力が放出される。当然目からも魔力が放出されるので魔力を視認できるようになる」


狼狽する天川に気を遣うでもなく淡々と説明する六文銭。


「…。これってどう考えても外法ですよね?まともじゃない」


そう息を切らす天川に六文銭は外法どころかお前にしかできない法さとわらう。


「何度も言わせるな。私の教育は厳しいのだ。でもま結果的にお前は色んな手順を飛び越えて成長できてるのだから、文句を言われる筋合いはない」


平静を装っている六文銭だったが、口調がまた荒くなっている。内心楽しくて仕方がないのだ。

自身の教え子が自信の思い通りに成長していくことに。


《…天川。大丈夫ですか》


天川以外視認できないアルマが心配そうな顔で聞いてきた。もっともこの六文銭はアルマの事が見えている的なことをにおわしていたが。


《ああ、大丈夫だよ。心配してくれてありがとなアルマ》


だが申し訳ないけどと天川は続けた。


《もうしばらく『こいつ』と二人きりにさせてくれ》


そう天川はにやりと笑った。


《…天川?》


「先生。次は何をすればいいんですか?」


今度は。

汗をかきながらも不敵な表情を六文銭に向けた。

天川自身も実感してきていたのだ。


自身の急激な成長に。


そしてそれはこの上ない愉悦だった。



「…ようやく『自覚』し始めたか。それでいい」


六文銭は続けた。



「がっかりさせてくれるなよ、天川翔」


























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