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⑩兄弟に狙われる木


 お掃除とは、当たり前の事である。机をずらしてお掃除するのだが……私たちはホウキ片手に掃除をする。


 私はそのまま塵取りでゴミを取り木のゴミ箱に入れる。令嬢として学園掃除も手伝う理由は第二王立の発足時に使用人が多かった時代の名残である。


「今では令嬢でも掃除をさせる学園のか大多数ですから。ナナリ、ふっくらしない」


「わかってるわ。ただ、面倒なの……ふぅ、ねぇ……あなたはゼロの兄さんに何をしたの? 最近ちょっとねぇ……しつこい」


「少しありました」


 廊下で会ったぐらいだ。


「そう。探りで少しあなたの事を私に聞くようになったわ。今日はとか……気になるのなら直接聞けばいいのに面倒よね。変わりに拳をあげてるの」


 ゼロ様、かわいそう。


「それは私も聞き及んでます。フランベルジュ家を探る方々がいらっしゃるようです。身辺調査ですよ。王立親衛隊ぽいんですよねぇ。直接動くから依頼したのでしょうか?」


「本当に何したの?」


「……えっと心当たりはこの前、言ったことしかないです」


「本当に? 私の知らない所で出会ってない? 密会」


「出会ってませんね。廊下でしか出会ってません」


「おーい、お前ら!! 見てくれ!!」


 私たちが話をするなかでリディアがホウキを肩に構え、地面に手をつきながら笑みを溢す。


「……だーれだ」


「………?」


「いや、その奇行に心当たりはございません。強いて言うならリディアが変なだけです」


「あら、わかりませんの? Sクラス、『狂戦士のバクラ』さんですわ。盾を持たず。大剣を両手と片手で振り回すパワー系の切り込み隊長ですわよ。ストリートファイターでもあるから今は罰で牢屋ですわね」


「正解、じゃぁこれは」


 ホウキを今度は両手で掴み。正面に向ける。そのまま、動かず。ナナリは疑問に思うが技名を唱えた瞬間に手を上げる。


「わかったわ!! Aクラスの騎士のガルロンドさんですわ。その技は防御力を上げる基本技ですが、仏頂面でコソッと言うところは彼だけの特徴ですわ。リアル志向故の花のなさが特徴です」


「………すっご。わかってんじゃん」


「ええええええええ、ナナリにドン引きです。どれだけ詳しいのですか?」


「ふふふ、簡単よ。リディアが特徴がある人だけを演じてますもの」


 ナナリの博識と言うよりも熱狂的なファンの凄さを垣間見た。そのまま二人でホウキで技の出し合いをはじめ、クラスの一部の令嬢が大いに笑い。いつしか寸劇になる。


 あのツンツンして仏頂面のお嬢様だったナナリがクラスの中心でキラキラとする。自信満々に。


「はぁ、俺っち熱くなっちまったぜ」


「クラス内での暴行は禁止ですわ」


「遊びだよ、お嬢様」


「そのお嬢様に2勝3敗の人が何を言ってるんですか?」


「今日で五分だぁ!!」


 ナナリはホウキを捨て、リディアもホウキを捨てて。格闘を始める。机を寄せていた子達が机を勝手に二人を周りを囲うようにして魔法でリングを作り上げる。有効打で体が不随になるように魔法操作し、クラスのドアを閉鎖。外敵から音が漏れないようにして密閉空間を生んだ。武器は無しらしい。


 クラスから最後に私にお願いがあがる。


「先生の監視をお願いしますわ」


 私は仕方なく根で覗く。先生の現在位置を。


「へへへ、俺さ。令嬢学園なんてつまらない学園と思ったけど……つえぇ奴ばっかで楽しいぜ」


「それだから私に負けるんですよ? なめてるから。あなた自分を『強者』と勘違いしすぎ。弱者です」


「褒めてやってんだ。鍛えてるだけじゃ……俺は越えられねぇぜぇ。ヘチマ」


「誰がヘチマの糞貧乏、貧弱糞女ですって!! お下品!!」


「そこまで言ってねぇ!!」


 台詞が非常にカッコいいし下品だ。周りの令嬢はこういう荒事嫌いかと思えば……今では慣れてしまい。普通に楽しんでいる。中には既に服を脱いで自前の装備をつけて準備をしている子もいる。武器を携帯し、何をする気だそこの二人とも。


カーン!!


 そのままコングが鳴り響き。リディアの速攻が始まった。私はそれを見ながら天井を仰ぐ。


「学園の華やかな令嬢生活を夢みてたけど……実際はもっと変なんですねぇ……」


 「令嬢ってなんだろうかぁ」と私はクラスの隅で思うのだった。





「つぅ……いてぇ」


「ふふふふふふ。ほーほほほ!! おほほほほほ」


 午後の茶会、私が先生を説得した結果。そのまま体育となった授業後。隠れた庭園で彼女達に塗り薬と痛み止めを処方する。私の髪と根を混ぜた物を服用させて、魔力を流して生命力向上で傷を癒す。内出血が多いがすぐに治まるだろう。同じものをクラスで配布していた。傷が絶えないクラスなのは……本当に令嬢教育の学園かと疑う。


「畜生……ぐずずび……なんで勝てねぇんだ。悔しい、ずびびび」


「ほーほほほ!! 理由はもちろん……カウンターですわぁ。フェイントいれなさい!! わかりやすいわよぉ」


「本当にアザだらけなのに元気ね。二人とも」


「ふふふ、それはもちろん自信がついたからですわ。私は強い」


「はいはい、お強いですよ……」


 私はナナリの激変に驚くが、元々才能があったのだろう。そういうのが得意なのだこの脳筋。


「本当……女に生まれなければ……私が男なら……良かったのに」


「そうしたら……私とリディアは二人で寂しい学園生活ですよ」


「さすがに勝ち逃げは許さねぇぜ!!」


「ふふ。そうね……今の私はあなた達と共にだわ。皆、男なら良かったのに」


 アザで晴れた頬なのに誇り逞しい姿に「血族遺伝と言うのが本当にあるんだなぁ」としみじみする。ドリアードの記憶では、ガルガンチュアは武家だった事を教えてくれる。戦闘大得意な血筋だ。それはもう最前線の将軍様であるからこそだが。


「にしても、クラスの彼女らが……同じ趣味を持ってるなんて運命ね。ほーほほほ」


「本当にね。メジャーでもありますし……莫大なお金が動いてますから。ちらほら黒い噂もありますけど、好きな人は好きですしね」


「あなた、黒い噂のとこ。いっぱい知ってそうね? 今日の修羅場は何ヵ所?」


「2ヶ所です。本当に争いですねぇ。そろそろ私も廊下を歩きます」


 本当に学園内は安らぎは少ないと思えた。


「いい出会いがあるといいわね」


「はい」


「俺、昼寝する。ふて寝だ」


「では、虫避けのお香炊いておきますね」


 鞄から香草を用意し、小皿に置いて火をつける。庭園は草がおおいので虫も多いのだ。夏に向けて増えていく。


「ありがとう、ふあぁ……ねむ」


 私はそのまま日課も徘徊を始める。今日もきっと何もないかもしれないが……少しは噂になっているだろう。





 廊下徘徊も早くて、ひと月が立とうとしていた。徘徊する者として名は売れたが逆に近付く男はいない。


「うーん、成功しない方法ですねこれは……」


 そろそろ悪目立ちする。そう思っていた時に……声をかけられる。複数人の男性に私は露骨な嫌悪感を抱きながら笑顔で対応した。


 悪目立ちするなら、悪目立ちした男性が近付く物だ。今回、これは悪手だと考えられる。そろそろ潮時らしい。


「君、婚約者いなんだって?」


「ちょっと一緒に遊ぼう。折角一人なんだし」


「一人で待ってるんでしょ? なら、どうかな?」


 3人、名前を言わない。まぁ私は知ってますけど。


「名前を伺っても?」


「名前かぁ、家を言うと萎縮されちゃうんだよね」


「名家でも偽名で通しますよ?」


「まぁまぁ、そこの空き部屋の鍵があるし、そこで……こっそり話そうよ?」


「魔法の類いは達者ですね。鍵開けと防音がしっかりしてますね。婚約者達との話は解決してますか?」


「婚約者とも友好だよ、お嬢様」


 そう、婚約者は優しい。逆に婚約者と協力し……他の婚約者を嵌めたり。依頼で他社を蹴落とすために暗躍している。だが……それが表へ出ることはない。有能だからこそ、目を瞑られやすい。腹黒い。


「おい、何か喋ったらどうだ?」


「私は婚約者居ませんし……何か弱味を握るには理由が乏しいかと」


「今は弱味がないだろう? 後々、そういう事があったと言うこと言えば……弱味になる」


「私に婚約者が出来た後に揺すりに来るんですね。そういう記憶は忌々しいので普通は忘れたがります。今までに何人犠牲になったんですか?」


「君、調べてるね。面白いじゃん……それを口封じするのもいいな」


 実力行使、まぁ私はそれを見ぬふりをしていた。「関わってはいけない」と思う世界だから。しかし、向こうから来るのは違う。自己防衛が成立する。


「あれ、トル。ここで何を?」


「えっ? ゼロ様? なんでここに居るんですか?」


 私は根で二人を叩き起こし、その助けが来る時間を稼ごうと思案していたとき、不思議なことにゼロが顔を出す。汗などなく、逃げて来たわけじゃない。涼しい顔から、たまたまだろう。なぜたまたまと考えた。違う。見ていたんだ。


「これは……王子様」


「君たちは……彼女になんか用かい?」


「ええ、少し。目障りなんです」


「……ごめん。トル……甘かったみたいだ」


「何のお話ですか? 本当に何のお話ですか?」


 私の知らないところで話が進んでいた。


「ガルガンチュア家と何か揉め事があれば君達も大変だろう? 僕の顔を立てるために引くのはどうかい?」


 私は廊下の奥からナナリとリディアが来ているのを確認し……彼女たちが様子を見てニヤニヤしているのを確認する。なに野次馬になってる。助けを求めたのに。


「わかった。王子様の顔を立てるよ。ただ、これだけは言っておくぞ。トル・フランベルジュ……引き際を考えろ」


「私が? えっ……もしかして……関係あると勘違いされてませんか? こちらから、彼とはお断りですよ」


「君はそう言っているが……裏で繋がってるだろう? 妹と仲がいいとも聞く。妹から紹介して貰ったんだろう?」


「おい、うるさいぞ。彼女が困ってる。去れ」


「はいはい……王子様。涼しい顔をしていいんですか? 大変でしょう?」


 3人はそれぞれ嫌味を言いながら去り、私は溜め息を吐き。リディアとナナリを呼びつけたが無視される。こいつらぁ。


「大丈夫だった?」


「ええ、ですが……その。リディア、ナナリ、出てきなさい!!」


 私が睨むと渋々とした表情で廊下の影から出てくる。そのまま、私は溜め息を吐き。首を振る。


「助けは呼んでいたんですけど……静観してムカつきましたよ」


 私は腕を組んでプンプンと怒りを表す。


「でも、女性では男3人には力で負けてしまうよ?」


 腕相撲に負けたのに、殴られているのに妹の事を知らないんだとわかる。仲良くないんだろうか。


「おーほほほ。あんなナヨナヨした男性にわたくしが負けるとでも? お兄さまより腕っぷしは強いですわよ」


「そそ、俺っちも負けてムシャクシャしてたから丁度よかったんだけどなぁ~自己防衛で勝って泣いて嘘ついて被害者面すれば!? あんな男達にはめられた同級生の事件をまとめて解決したのにな」


「狙ったわけじゃないですけど。リディアの言うとおりで……負ける事はなかったと思います。あわよくば逆に弱味を握れたかと」


「君たち……そんな危ない事を?」


 ナナリのお兄さんには少しだけ、世間を知らない節がある。そういう事がこの学園で行われている事実がある。それを知らないと言うのは頭がお花畑だ。


「危ない事ですが。危ない事が起こってるのは確かです。婚約者同士のいじめ、修羅場、恋のいがみ合い。他にも若いから起きる集団的な虐待もあります。私でのクラスではナナリが力で治めてるので全くないですけどね」


「ふふ、若いからこそ危ないのです。トルが言う、原種的な少数を切り捨てる生存戦略が人間の私たちに色濃く残っている。ですが、それさえわかってしまえば逆に捌け口を用意すればいいのですわ。お兄さん」


 ナナリの豹変に驚く彼、家では仮面を被って居るだろう。ごめんなさい……私が彼女をこんな姿にしてしまいました。極悪人のような表情をみせるナナリ。


「ナナリ……君。ずっとこんな事を? 今までずっと?」


「いいえ、お兄さんの質問は家で聞きますわ。お止めになりたいのでしたら。母親にチクればいいですわ。まぁ私は悪い子で母親の言葉は怖くないですけど。反抗期です」


「君はそんな子では……」


「『そんな子ではない。そんな面倒な子ではない。そんな悪い子ではない』。お兄さん……それは大人たち、母親、父親の都合のいい子供を演じているだけに過ぎませんわ。時に演じることも大切ですが、時にいつか一人立ちするためにはそれだけではいけませんことよ。特に当主は母親、父親なんて関係なくなるのですから」


「……ごもっとも。妹の言うとおりだね。いつか皆居なくなる。その時を継げるようにするには立派な人格者に成らなければならない。ああ、今回は私が勝手にでしゃばった事を許してほしい」


 ゼロは素直に頭を下げる。庇ったつもりが実は邪魔をしたことを悟ったようだ。わかりずらい批判していたナナリは満足げに自身の兄を見下す。


「お兄さん、トルに気がある素振りで迷惑かけるんですから。ささっと誰かを婚約者に選んではどうですか?」


「……そうだね……うん」


「まぁまぁ、ゼロ様も反省してますし。何事もなかったのでナナリも溜飲下げて、仲良くしましょ。ね?」


「ごめんなさい。ついつい熱くなってしまったわ。お兄さんの煮え切らない態度がイライラさせます。正直に言ってみてはどうですか? 気になるのでしょう? トルの事が、気になるのでしょう? ふふふふ」


 ナナリ、こやつ。私が避けてる話題を全力で押し通すつもりだ。ホの字があるかもと私も思ってるけど。勘違いの恥ずかしさが勝ってるので聞かないようにしているのに。そして……リディアは満面の笑顔で親指立てている。悪役ぽく。私が困る事を楽しんでやがる。


「あら、優しい。トルはお兄さんの肩を持つのですね?」


「うぐぅ……それは……そうです。人助けをしようと勇気を出して出てきた事は褒められる事です。確かに邪魔をしたかもしれませんけどね。そこは釘は刺しておきます」


「本当にすまない……」


 ゼロの表情が本当に泣きそうな顔になる。いい顔が台無しですが……貴重な顔なのかも。


「ふふふ、お兄さん。いい顔ですわ。では皆さん行きましょう」


 ナナリの一言でねちっこいゼロいじめは終わる。私は落ち込む彼が逆に不憫でならず。甘いと思うのだが……頭の飾りのふりをした花を千切って外し、彼にお渡しする。心の傷薬にはなれないだろうが。


「お兄さん、その……助けていただきありがとうございます。お礼としてこれを差し上げますので……その勇気と志は大切にお願いします。この国のためになるでしょうから」


「………」


「この花、砕いて塗り薬とすると傷を癒す効果。ハーブティーにすると落ち着きますので……心の傷に効くかわかりませんがどうぞ」


「う、うん」


 なんか嬉しそうな表情から、なんとも言い難い苦笑いの表情に変わる。変な事を言った自覚はないが……何か変な事を言ったらしい。


「トル、行くわよ」


「ごめん、ナナリ」


 急かされるように私はナナリを追いかける。そして、ナナリの表情を追い越して見ると満足した表情で私はついつい、彼女の肩を小突いたのだった。






 私は帰りの車でお兄さんに声をかけてもらう。もちろん、今日あったことだ。そして初めての事だった。


 いつも登校、帰宅は馬車、竜車、鳥車に乗り。屋敷に向かう。その感に私たちは一切言葉を交わさない。同じ共通の話題を持っていないからだ。


 そんな登校下校の沈黙ルールを破って兄が青い薔薇を大切に持ち、話を振ってきたのだ。


「ナナリ……君の本心が知りたくなった」


「お兄さん、本心とは?」


「学園の姿だよ。屋敷に帰ると大人しく。そして、黙々と筋トレする君がわからなくなった。声をかけても無視か拳だ」


「ふふ、お兄さんの本心も見せてくれるなら~いいですわ。もちろん、見せるのは学園です。クラスに見学する時間がございますでしょう? ご覧になりました?」


「あれは婚約者探しと婚約者を監視、発破をかけるための物だが……君はそこで何をするんだ?」


「その発言で一度も来てくださってないんですね?」


「ナナリが嫌がると思って……」


「本人に聞かずにその心は分かるんですね。素晴らしいですわ~」パチパチ


 乾いた拍手にお兄さんは眉を歪ませる。


「……」


 兄は非常に弱々しく見えた。完璧超人と思っていたお兄さん。しかし、それは演じていただけである。


「お兄さんにアドバイスを……完璧を演じてしまうと多くの人は近寄り難く、神聖な者を見るような目で本心を隠し、距離を取って話をします。ですが……弱点を持ってると違います。人並みの親近感が湧く弱点を見せる。また、好意が上がりやすい物を用意すれば……話しかけやすくなります」


「たとえば?」


「私の趣味は決闘見学です。もちろん、自身を鍛えるのも趣味ですし……決闘も趣味です。お兄さんはそつなく何でもこなします。でも、これだけは好きでたまらない。これだけは譲れないと言う何かが足りない気もします。思いつきますか?」


「……当主になるため頑張ること」


「はい、もう二度と会話したくなくなりました」


「ま、待ってくれ!! もう一回考えさせてくれ!!」


「はい、それが弱点です。そんな当たり前の物はどうでもいいんですわ。お兄さんが好きそうな話題がなくて会話しにくいのです」


「……好きな物か……好きな食べ物はあるけど」


「もっと深掘りできる話題はないのですの?」


「うーん、何を話せばいいんだ?」


 お兄さんを測るように聞いているが……これは……どうしよう。


「……えっと。わたくしなら。お兄さんの興味を引けそうなトルの話が出来ますけど」


「ああ、彼女か。フランベルジュ家の長女で学園のテストは平均。目立った成績を持ってるわけでもない。しかし、廊下徘徊や……言動が変わってるし……魔法の習熟度は高く。他の子より隠している何かが見えるけどね」


 わかりやすい食い付きに私はにやけてしまう。お兄さんを操ってるような錯覚さえする。


「そこまで調べてるのに、なんで直接会って話を嫌がるんですか?」


「嫌われてそうかなって」


「嫌いな人にその花はあげませんよ」


 私は知ってる。皆に褒められてから咲かしている花だ。それをあげるのだから……そう悪い意味でもない。


「なおさら、わからない。でも距離は取ろうとしている。王家を危険視している」


「この前言ったんですが。危険視してる訳ではなく。家の事で距離を置いてます。距離を置く理由はもちろん目立つのが嫌だからです。では、『どうすればいいか』と言うと……その目立つのが嫌な理由を探るのがいいんじゃないでしょうか? 弱味をダシに迫る事が出来ますよ」


「……ナナリ。それは王家として人として屑な方法だ。絶対にしてはいけない」


「お兄さん、ご立派ですね。でも、私ならそうします。距離を置かれる理由を知らず知らず嫌われるなんて嫌ですもの。なので……直接聞き出し。根負けするまでしつこく噛みつきますわ。そう、トルにそうしようとしました」


「……あるのかい? 弱味が」


「ええ、ありますが。それを話すほどにお兄さんとは仲良くなくってよ」


「そうだね。それを言う事は絶対、今のところない」


「でも、トルは素直に仲良い私たちには見せてしまいました。仲良くしましょう。お兄さん」


「ナナリ……なんか怖いな」


「安心してください。仲良くするためにいいお話を……トルの家は母親側が王家で遠い親族が革命か何かで全員処刑された事があるそうです。昔なら、親族皆殺しはあり得る話ですがそれを強く危険視しております」


「……時代錯誤だ」


「そうでしょうか? 今でも変に恨まれて狙われてますよね? 今日の逆恨みに巻き込まれますし、使用人を離している行為は自殺行為と言われるぐらいに治安がいいわけではないでしょう。後ですね、婚約者探しは本当です。フランベルジュ家は婚約者を捨てて正妻として迎え入れております。その結果、界隈で除け者になりましたが……実力で成功しております」


「第一王立学園にお兄さんがいるね」


「ええ、婚約者居ませんけど。お兄さんもお探ししております。そう、値踏みするんです。あの家は一生を共にする相手を探す。そのために手段は選ばないでしょう」


 まだ、そういう人と出会ってないだけで。出会った場合は根を張り。腰を据えて捕まえるだろう。神話の世界で言われている。気に入った男を木に埋め込む行為を行うかもしれない。


「ああ、やりそうですわ……その時は私が抑えないと」


 拉致監禁を想像出来る。表面上無害そうなのに内面はトゲ持ち、毒持ちの木である。


「ナナリ、頭を押さえて大丈夫か?」


「トルが取りそうな危ない事を考えて戦慄しましたわ」


「……彼女……そんなに危ないのかい?」


「婚約者探しで徘徊するぐらいには」


「納得した。本当に変わり者だね」


「そうそう、変わり者です。実は決闘をまだやってないんですけど、絶対強いですわ」


「ケガをするからほどほどに」


「ほほほケガは女の勲章ですわ」


「……ナナリ。君は彼女に影響受けたね、絶対」


「それは兄弟でと訂正しますわ」


「ああ、全くそのとおりだ」


 私もお兄さんも彼女にぞっこんだ。そう、私は「出会ってないときっと……こんな性格にはなっていない」と自信を持って言える。そう、悪い悪い性格の私を殺すほどに。
















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