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恋心

 翌日、改めてレオナルドさんとセバスチャンさんがお礼を言いに店に来た。


 セバスチャンさんはお礼の品として、希少な鉱石が沢山入った箱をエル兄さまに差し出した。


「ありがたく頂戴いたします」


 もちろん、エル兄さまは少しも遠慮することなく受け取った。


 レオナルドさんは、兄さまに大型魔道具の依頼をして帰っていった。


 もうすぐ年に一度の祭りがあるらしい。

 レオナルドさんに、祭りを盛り上げるのに何かいい魔道具がないかと聞かれた兄さまは、闘技場に大型スクリーンをつけたらどうかと提案した。


 闘技場では祭りの人気イベントがあるそうだ。そのイベントの様子をそのままスクリーンに映して見られるそうだ。

 小型スクリーンもいくつか町に設置し、離れたところからでも闘技場の様子を見られるようになるらしい。


 エル兄さまはいつも、誰も思い付かないような物を考えだして本当にすごい。今回も出来上がるのかすごく楽しみだ。

 スクリーンの材料となる聖水晶は、東聖山の頂上で採れるらしい。

 聖獣・白竜様が棲むところだ。


 翌日、私とリーンちゃんはアルトさんに山頂まで連れて行ってもらうことになった。

 小福ちゃんも白竜様に会いたそうに、瞳をキラキラと輝かせていたので連れてきた。


 兄さまは昨夜からずっと工房に籠って、夢中でスクリーンの設計図を書いているので、今日は店は休業日とした。

 リーンちゃんとアルトさんはギルドでは顔見知り程度なので、一緒に素材集めに行くのは今回が初めてだ。


「わぁー! すごい! すごく早いのに息苦しくないですね」


 快適な空の旅にリーンちゃんは楽しそうだ。


 雲の中を通りすぎ、山頂へと到着した。


「わぁ……」


 山頂は雪に覆われていた。大きな聖水晶があちこちにあり、光を反射してキラキラと輝いている。

 そして、聖獣・白竜様が静かに佇んでいた。


 アルトさんはフードを外した。

 ここまで来れるのはアルトさんぐらいしかいないので、他に人間は誰もいない。

 私は魔道具を外してポケットに入れた。白竜様とご挨拶をするのに、偽った姿のままでは嫌だから。


『おや、アルベルトや。初めて見る子達を連れているのう』

「こんにちは、白竜様。最近北から来た人達ですよ」


 ……アルベルト?

 アルトさんのことだよね。


「白竜様、初めてまして」

「初めてまして。聖水晶を採らせていただきに来ました」

『キュッ! キュキュキュー』


 小福ちゃんは濃い聖気の中で、いつも以上にはしゃいでいる。


『ああ、いくらでも好きに採っていくといいよ』


 


 体の二倍ほどの大きさの聖水晶を、リーンちゃんは次々と採っていった。

 私とアルトさんは兄さまから頼まれているいくつかの鉱石を探した。


『キューキュキュー』


 小福ちゃんは白竜様の尾を何回も転がりながら遊んでいる。すごく楽しそうだ。


 

 夢中で鉱石を探しているうちに、気づいたら至近距離にアルトさんの顔があった。

 私は最近変だ。ふとした時にすぐにドキドキとしてしまう。

 

「あの、アルトさんは白竜様にアルベルトって呼ばれていましたよね?」


 動揺を隠すかのように、さっき気になったことを聞いてみた。


「え? あっ、そうか。ちゃんと名乗っていなかったね。俺の名前はアルベルト・ローウィス。領主家の次男なんだ。レオナルドは兄だよ」


「え!?そうでしたか。そういえば領主婦人はアルトさんと同じ銀髪でしたね。どうして気づかなかったんだろ……そっか、だからサラさんととても親しかったのですね」


 あの時は、サラさんのことでそんなことを考えている余裕も無く、その後はその後で、素性を明かしたことによってアルトさんに嫌われたのではないかと、そればかり考えていたから。

 

 ……そっか、お兄さんの婚約者だったら、サラさんと親しくて当然だよね。


 なんだか心の中のつっかえがとれたような気がした。

 サラさんにはレオナルドさんという婚約者がいるって分かっていたはずなのに。

 ギルドの外でも、よくアルトさんとサラさんがいるところを見かけて、なんだかモヤモヤしていた。


「まさかお互い領主家の人間だったなんて思わなかったよね。フィルく……うーん、その姿のときにフィル君って呼ぶのはなんか変だね」


 アルトさんは首を傾げた。


「そうですね。ギルドではそう呼んで欲しいですが、今のように知っている人間しかいない時でしたら、どう呼んでいただいてもかまいませんよ」


 でも本当は、私の本当の名前で呼んで欲しい。

 そう言えばいいだけなのに、なんでだろう。恥ずかしくて言えない。



「そっか。えっと、それじゃあ……アリアちゃん?」

「っっ、はい……」



 名前を呼ばれた瞬間、胸がきゅーっと締め付けられる感覚を覚えた。

 ただ名前を呼ばれただけなのに。


 私、変だ。


 とっさにローブのフードを被り、下を向いた。

 きっと私の顔は真っ赤に染まっているだろうから。

 

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