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悪役令嬢の方が素晴らしい人なんです  作者: 妃 大和


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10/11

女友達は大事にしましょう

 無事にお茶会が終了し、フロイライン子爵と子供達は王都でお土産を買い込んで再び我が家へと帰っていった。


 リリアンヌがヴィルベルト王子主催のお茶会に招かれたのは一度きりだった。うわさほどの人物と思われなかったためと思われる。

 お茶会の席で王子にうながされ、領地内で行っている孤児院の訪問など慈善事業についてリリアンヌは語った。説明の仕方が悪かったのか、よくある話と他の令嬢達に一笑されてしまった。確かに慈善事業は貴族であれば行うのが当たり前のよくある話であった。きちんと聞けば、身分の高い令嬢がよく行うような単なる形だけの孤児院訪問ではなく、領地でとれた余った野菜を使った菓子を差し入れたり、人手を必要とする場所で臨時に孤児を雇ってもらう仲介をしていたのだが。リリアンヌは軽んじられる地方の下位貴族の弱い立場をしっかりと味わったのだった。

 では、愛らしい見た目のリリアンヌを王子が気に入ったかといえば、微妙なもので、転んでいたところを助けられた点では印象づけられたものの、遅刻したうえに他の令嬢とは少々違うボリュームあるドレス姿……高い好感度を得るとは思えない。それに大人びた王子にとって、好みの女性は凜と気高く美しい人であった。リリアンヌにとって、名を覚えてもらえて良かったとしか言いようがないお茶会であった。


(絵本と違って、現実は甘くないわよね)


 リリアンヌ自身も輝くばかりの王子の姿には目を見張ったし、誰にでも優しい対応をする姿に「さすが王族は違う」とときめいた。

 しかし、もっと気になったのは、公正で気品あって凜として美しい公爵令嬢ロゼリアである。何気ないちょっとした仕草でさえ目を引く、絵本の中の素敵なお姫様のようであった。ヴィルベルト王子の好みピッタリの女性であり、婚約者候補筆頭の令嬢であった。リリアンヌが彼女にまつわるうわさを集めてみれば、学問ももちろん優秀で、ダンスもお手本のように正確なステップを優雅に踏むらしい。まさに非の打ち所のないお姫様だった。

 リリアンヌにとってロゼリアは憧れの令嬢となった。


(ロゼリア様みたくなりたい。次に会ったときには話しかけられる存在になりたい)


 リリアンヌは再び自分磨きの努力を始めた。

 自らが絵本の主人公になるためではなく、貴族の力関係に負けない自分を作り始めたのだった。



 もう一人、従者としてお茶会に参加したカナルは王都から戻ると体を鍛え始めた。しなやかな身体は程よい筋肉を付けて、リリアンヌの側で荷物を軽々と持つ姿を見せるのであった。


「最近のカナルって、力持ちよね?」

「従者だからな。リリ様を守るには力がいるだろ」


 妖精使いはどちらかというと守られる立場になるものの方が多い。妖精が剣など武器となる刃物を嫌がるからだ。宝石などの輝きは大好きだが、刃物の輝きはダメらしい。従者として、カナルは護身術を身に付けたのだった。もちろん妖精使いの勉強の基礎となる学問にも真剣に取り組んだ。



 リリアンヌが参加したお茶会から一年後、王立学院入学直前であったヴィルベルト王子の婚約者に公爵令嬢ロゼリアが決定した。



 ◇◇◇



 地方都市ダーチェの裕福な商家、ハバロス家の庭園の一角にリリアンヌは来ていた。カナルも一緒である。ハバロス家の屋敷を訪ねるくらいにはリリアンヌと一人娘のユーミラは仲が良かった。

 マーブル模様の大きな石を椅子にして、リリアンヌとユーミラは座っていた。


「ねぇねぇ、ユーミラ、頼んでいたロゼリア様の絵姿、手に入ったんでしょ。早く見せて」


 待ちきれないリリアンヌは手を大きく差し出した。


「がっつかないでよ。全く、黙っていればリリアンヌはおとなしそうな令嬢なのに。はい、これよ」

「ありがとー」


 礼を言いながら、リリアンヌはユーミラから小さい封筒を奪い取った。ニコニコとしながら、絵姿を取り出す。


「わー、素敵ー。ロゼリア様、きれいー。やっぱり、持つべき友は王都にツテがある商人の娘よね」


 リリアンヌはユーミラにバチッとウィンクをした。そして再び絵姿に目を戻し、穴が空くかと思われるくらい凝視する。ため息を付きつつ、ひたすら見ている。


「まっ、まあ、そこまで喜んでくれたなら、初回限定100枚の一つを手に入れた甲斐があったっていうものね」

「これがあれば、王立学園に入る前の勉強もまだまだ頑張れるわ。この間、お忍びでダーチェに来ていた貴族から絵姿が出版される話を聞いておいて、ホントに良かった」

「王都から来た人を捕まえて、ロゼリア様の噂話を何か知らないかって聞くリリアンヌもすごいと思うけど。まあ、こんな田舎でリリアンヌに聞かれたら、力になろうと話してしまう男性の気持ちも分からなくはないけどね」

「人徳よ。人徳」


 大きなウエーブのかかった明るい茶色の髪をユーミラはかきあげながら、隣りに座るリリアンヌに目をやった。如何にも貴族といった可愛らしい容姿に、鈴を転がしたような可愛らしい声を持ちながら、平民のように気さくな少女が座っている。

 同世代の貴族の娘の友人がいない代わりに、リリアンヌは商人の娘ユーミラと仲良くなった。

 領地のあちこちに視察として現れるリリアンヌは、同様に商人の勉強として現れるユーミラと顔を会わせる機会が多かった。遠くから見るだけにしようとユーミラはしていたのだが、友人に飢えていたリリアンヌはどんどん近づいていった。結果、二人は身分差を超えて友人となったのだった。外面だけでなく、互いの()の姿を知る貴重な関係である。


「ハバロス商会の有能さの宣伝、いつものようによろしく」

「もちろん。こちらこそ、よろしくお願いします」

「その、はにかんだ笑顔がくせ者なのよね。庇護欲をかき立てるわ。リリアンヌが王立学園に入ったら一波乱起こしそう」

「ない、ない。こんな田舎者でがさつな私に、王都の本物の貴族の皆さんが目を向けることないって」


 二人は目を合わせて、ふふふと笑った。

 キラキラとした二人の姿をカナルはボーッと見ていた。実際、カナルはキラキラと二人の周りを飛ぶ妖精を見ていた。



 後日王立学院に入ってから、ユーミラの言葉がまんざら嘘ではなかったということをリリアンヌが思い起こすことになるのは先の話である。














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