ムッツリノススメ
光沢のある黒塗りの高級馬車が、やってきた。これたっかいやつやん。
御者の横に座っていた男がさっと降りてきて、ノリ口を開いて階段を引き出すと搭乗するよう言ってきた。
「お待たせいたしました。これからご案内させて頂きますのでお乗り下さい」
レビアは仕方ないとして、小市民のわしは自前の移動手段で移動するからとやんわり断ったのだが、いっしょに乗らないのなら自分も乗らないとレビアが言い出したので、出しかけていたアイテムボールをそっと戻した。
勧められるがままレビアの手を取り先に上げて、後からのそりと乗り込むと場違い感が増した。明るい土色をした革張りのシートとか汚すとまずいよな。エァ椅子で行くか。いや脚ももももそのうちプルプルするわな。
「豪華だね。お高いんでしょう」
「んーと、よくわかんない」
「えーと、君んちのじゃないのコレ」
「わかんない」
レビアか首をかしげる。
しばらく揺られながら流れる外の景色を堪能する。晴天の海はええのう。
なにやら大きな門の前まで来た。豪勢で物々しいったらありゃしない。御者の横にいた男が、なにやら詰め所には行って行ったぞ。検問所かよ。
男が帰ってくると、閉じていた門が開いていく。
門から屋敷までの距離も少しあって「到着です。準備をしますので中で今しばらくおくつろぎ下さい」と声を掛けられた。
ふぅやっとかさすがにももがピクピクしてきたよ。
「どうぞお降り下さい」
開けられた扉の向こうには、左右に並ぶヒト、ヒト、ヒト。
固くなり始めた脚を踏み外さないように、降りるとデカイ屋敷の玄関だった。
先に降りたわしはレビアに手を添えて下ろすとそのまま手をつないで、ヒトがつくる並木道を進んでいく。
レビアの手を引く大人でく、わしは心臓バクバクを落ち着かせるために手を握っているのが、しぇーかい。
入ったロビーで少し待たされて、応接室に通された。まぁ謁見室でも執務室でもどっちでもとれるような広さと質感だった。見たこと無いけどね。
濃い青系スーツにタイトスカートを着た20代前半に見える女性が出てきて、自己紹介やらレビアを保護した経緯やらを話したりとしたことは覚えているけどどんな風に話したか、よく覚えていない。ただスーツの生地に五百円硬貨が折り重なり鯉のぼりのウロコ模様が付いているように見えて気になっていた事ぐらいか。足を組むから気持ちがバストと行ったり来たりしていたわけではない。標準よかありそうだが巨乳よかは小ぶりなのはなんと表現しようか自分のボキャブラりーと格闘していただけだ。あと生足なのか目立たないストッキングなのか直に触って確かめたいとかは一度しか思っていない。合ってから分かれるまでずっとだからな。ムッツリは美徳だ。
わしはレビアを後部座席に載せてバイクを駆り南下していた。
整理する。
屋敷での話しをかいつまんで語ると、応接室であった女性の名は、リヴァイヤさんといい海上交通などの海運業をしている。別にいいのだがわしの知らない今回の情報を得た。
レビアは母親と喧嘩してありきたりの「出て行きなさい」「いいもん、出て行くもん」と言って屋敷を出たもののにわかに行く当てもなく、別居中の父親の元へ行くことにして連絡を取って迎えに来てもらうことになったが連絡を中継ぎした者から人さらいに情報が伝わり、情報操作された父親からの迎えが着いたときには攫われた後だった。
高額な身代金が取れるとあって実行犯の仲間割れがありレビアは隙を見て逃げ出したがさらに奴隷商に連れ攫われるのを実行犯に目撃、追跡され移動していたところに襲撃を受けていたところをフィメとフィナ、そしてわしが保護して現在に至るのであーる。
で、なぜレビアがわしと一緒にいるかだって?
ふふふ、それはまだ親子げんかが継続中らしいくて、押しつけられたのだよ、アレチくん。とんだとばっちりだよな。
当のレビアもバイク旅はまんざらでもないらしい。
「あのこも、アナタが気に入っているみたいですし、しばらくお願いします」
「いや あの 風来坊な男旅ですから、余り楽しくはありませんよ」
「旅の資金とかこちらでいくらか用出てて先々で受け取れるようにいたしますし、我が社との提携グループの施設なども優待でご利用下さいまし」
時折上体を前に倒してお辞儀気味になったりするものだから、いゃー谷間がね、あと少し。いいものもってらっやる。基本、貧乳好きなのだが、巨乳・爆乳が嫌いなだけであって豊かなのはOkですから。
で、なぜ後ろに乗っているかだって?
「ライダーの前に乗れるのはお子様の特権だ」と言った後に「背が大きくなってちゃんとライダーにしがみつけるようになったりすると乗るのは後部座席になるんだよ」「女の子がライダーの後に乗るのって恋人同志だったりするんだよな」と続けていったら前に乗りかけていたのに止めて、上目遣いに「後ろに乗る」とぼそっと言った。
「えーだって、まだ後ろは危ないよ。小さいんだから」
「小さくないモン」
「小さいよ(ママよか背もバストも色気も)、今いくつ」
「レディーの年齢を尋ねる者ではありません!」
顔を真っ赤にして殺気を飛ばしてきたので、慌てて6精霊達に連絡を入れ、子供が乗っても大丈夫なようにギミック付きの荷台に固定するフレームを送ってもらった。仕事が早くて感謝する。
うん、子供扱いされるのが駄目な時期なんだね。背伸びしてたがるがきんちょだな。
そんなこんなで背中に幼児がへばりついてるわけだ。これがナイスバディのおねーさんならなぁ。二つのクッションが背中に当たって、えへっ・・・えへっ・・・・えへっ・・・よだれが出まんがな。
後ろから背中にげんこつを受けたけど、全然痛くない。
「どーしたんですか、レビアさん」
「何でもない」
こうして二人の旅は、新たに始まった。
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
一区切りとしてここで一度、完了の形にしておきます。
予定していた、ゴブリン族お家騒動篇は、いずれまた再開という形です。