母娘と再会
なんら冒険もせず、起伏も危険なこともない旅を続けています。
わしと幼女の二人旅。気ままに行きたいがどうやら幼女の保護者に見守られているみたいだ。気にしちゃ負けかな。
細長い下ぶくれな島をアッチへフラフラ、コッチへフラフラとして海産物を満喫していく。
コレステロールは大丈夫かなとかこれっぽっちしか気にしない。
そんなわけで旅で重きをなす宿は、リバイア海運の厚生施設をありがたく利用させてもらい、快適に南下してさらに渡船でより大きな島に渡る。
降り立った初めての町では、なんか一斉摘発でもあったのか、街全体がざわついていたけど、旅人には関係ないみたいだ。
ヘンに関わりを持たないように、わしらは町と周辺の風光を観ていこう。
領の端、境近くにあるから隣領の影響があって、ウリが定まっていないのが面白い。
基本、食べ歩きだったのがいたくレビアさんは満足だったらしくて機嫌がよい。
「そろそろ次の街へ行きますか」
「おー 行くぞー」
十分な背なくて後部シートから前が見えないからと、直ぐ立つ幼女は元気そのものだ。
走り出して道沿いの民家が途切れて少しの辺りで何かを見つけて跳ねだしたので「危険がアブナイし裾が翻って歩いている」注意をすると「フィナちゃんのお母さんだよ」と返ってきて指さす方向を観ると、街の若奥様って感じの女性がスゴイ形相と勢いですれ違っていった。
ナンだったんだ今の。
たしか冒険者のハズなんだが違ってたか。
観ちゃいけない深淵を観てしまった気分だ。
気を取り直して道なりに進めば、フードで顔全体は判らないが特徴ある髪色と影に光る赤い目の特徴に覚えがある三輪車に乗ったちっこいのが手を振っているぞ。
「ロックー。おひさー」
「おう、フィナちゃんか。じゃあすれ違ったのは、やっぱフィメさんでよかったんだ」
「たぶんねー」
「なんか心ここにあらずって感じで走ってったぞ」
「うん、それね。あそこに見えてる茂みの中にゴブリンがいるみたいだから、こんどゴブリンかオークの弟か妹が欲しいなーって言ったの」
「はあ? 気持ちは分らんでもないけど、娘を放っぽって逃げて行くなんておまえのカーチャン、ホントに残念な人だな。あっ、ごめん」
「いぇ、お構いなく。ポンコツですからー」
フィナはさっと三輪車から離れ、くいっくいっと後ろに回ってレビアさんとハイタッチする。後ろの幼女からしたらロータッチだけど。
「フィナちゃん、こんにちわ」
「旅はどお。疲れない」
「大丈夫…」
「ロックに浮気されてない?」
「おぃおぃ」
「大丈夫、逃がさない」
幼女とは思えない膂力でぎゅっと背中に回した腕に力を入れている。いや、痛いから。
「苦しいから、やめでぇー。チカラぬいてぇー」
本心から懇願した。か弱い一般男性を虐めないでね。
「じゃ、ママを追っかけるからよろしく」
ちっこいのから冷たい視線を送られてクセになりそうになったが、ぐっとこらえていると『前方注意(驚異はその背後にあり)』のハンドサインをだしてきた。
『詳細は?』
知られてもまずくはないが、レビアさんに気づかれないようなフィンガーサインを出すと、自分のサインが通じたと認識したようで情報を送ってきた。
『後はワシが引き継ごうかの』
(はて、誰だろう?)
頭の中でどこか聞き覚えのあるような幼い子供の声がした。
『なんじゃ、冷たいのう。では・・・・・・・』
そいつは、わしの黒歴史を並べ立てた。
((;゜ロ゜)・・・・・・)
『もっとお聞きになりませんか。特に今から数年後のなんか、それはもう抱腹絶倒ですよ。特におすすめのネタです』
(もう結構です・・・)
負けた。わしは力なく指示に従うことにした。敗者の矜持である。これ以上恥辱を言われたくないからではない。
はっきり思い出した。アイツは『創造神の代行者』を自称する悪魔だ。
『ほう、お仕置きをご所望かの』
わしは、同じ轍を二度踏むふがいない男だった。
『因みに、いまのワシは"アイ"と名乗っとるでの』
(了解っす)
なんか"アイ"と"アル"が、重なった気がしたけど、気にしちゃダメだ。




