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34 ウキウキからの大慌て①

「どうじゃ実音(みお)!?」

 そう言って胸を張るぬし様(人型)。


 先日、エルフ村の服飾部門にお願いしておいた、ぬし様の服がついに完成した。

 そして今、ようやくぬし様に服を着せる事ができた所なのだが、気に入って貰えたようで、すっかりご満悦だ。

 食堂(今は教会)で着替えをしていたので、女神様にも手伝ってもらっての着替えとなったが、いや〜苦労した。


 ぬし様が服を着る上で、難所が3つある。

 ひとつは頭に生えた(ツノ)

 次に背中と腰に生えた2対4枚の羽。

 最後に尻尾だ。

 これらに対応した服で無いと、ぬし様は着ることができないのだ。


 そこで、エルフの服飾部門と私が相談して、服を作った。

 まず上着だが、正面から見るとベトナムの民族衣装であるアオザイに近い。

 長袖、丸みを持ったつめ襟、裾はすね辺りまでと長いが、ウェストより高い位置までスリットが入っており、動き易くなっている。

 これに手を加え、背中側はスリット位置まででカットした。

 そこから背中の翼のやや上まで大胆に切れ目をいれた。

 ボタンを使い、翼から下を留められるようになっている。

 また、正面の中央にも切れ目を入れており、角により服を傷つけることなく、服に頭を通す事ができるようになしてある。

 もちろん、この切れ目もボタンで留めるようにした。


 下の衣装はスカートにした。

 威厳を出すために、すねまでの長さがある。

 尻尾があるので、後ろ側が若干めくれてしまうが、これだけ長さがあるので、重要な部分は見えないようにできている。


 ちなみに、腰の羽は上着とスカートの間の位置になる。


 色は、上着は濃い青、スカートは白色とした。

 これにぬし様の金色が加わり、美しい色合いとなっている。


「ぬし様!似合っています、とても良いです!」

 正直に褒める。

 うん、良い出来。

 だがこれに満足してはいけない。早速、第2弾を考えなければ。

 あ〜、でもぬし様きれいだな〜、かわいいな〜。

 携帯をこっちの世界に持って来る事が出来ていれば、限界まで写真を撮るのにな〜。残念。


「うむ、そうか。似合ってるか。

 そうじゃろう、そうじゃろう」

 ぬし様もご満悦だ。

 頬を若干赤く染め、自慢気な顔をされている。


「かっこいいです、ぬし様!」

「そうじゃろう、そうじゃろう」


「綺麗です、ぬし様!」

「そうじゃろう、そうじゃろう」


「かわいいです、ぬし様!」

「そうじゃろう、そうじゃろう」


 …いや、分かっていますよ?これ、ダレかが止めてくれないと止まらないという事ぐらい。

 でも仕方ない。最早自分で止める事が不可能な状態なのだから。

 このままぬし様をほめ続ける永久機関と化してしまっても良いかと思うぐらいだ。


「本当に、素敵なお洋服ね、ドラちゃん」

 そこに、危険極まりない呼び名でぬし様を呼ぶ声がした。

 この命知らず…紫蘭、じゃなかった。女神様だった。


「それだけ素敵だと、お披露目したいわよね?」

「うむ、そうじゃな。(みな)に見せ付けてやらぬとな!」

 おぉ…そうか、お披露目か。その発想は無かった。

 流石女神様と素直に褒める事にする。

 あ、ちなみに女神様はぬし様と普通に会話できている。

 全種族と普通に意思疎通できるようだ。


「そうよね。折角良い物ができたんだものね。

 皆に知らせたいわよね。よく分かるわ」

 あれ?

 女神様、何か含みを持った言い方をしていない?

 私の方をチラチラ見てきているし…はて?

 女神様…えっと、髪切った?


 ふぅ、とため息を吐く女神様。

 何?私が悪いの?誰か教えて!


「私の教会も皆にお披露目しても良いかしら?

 この世界で、ここにある1つだけなのよ」

 あ、なるほど。教会を自慢したかったのか。

 しかしいいのかなぁ、こんなほぼ食堂を教会としてお披露目してしまって。


「うむ、今なら妾にも、皆に知らせたい気持ちは理解できる。

 存分にやるが良いぞ」

「本当?

 じゃあ張り切って皆に知らせるわ!」

 ふん、と腕に力を込めて言う女神様。


 そして右腕を天に突き上げ、パチンと指を鳴らした。


 直後、リンゴ〜ン、と響き渡る鐘の音。

 え、鐘!?どこから?少なくともこの屋敷には付いていないよ?

 ぬし様も、頭に右手を当て不思議そうな顔をしている。

 え、頭?

 まさか…。


『全世界の皆に、世界の管理者、女神からお知らせします。

 よ〜く聞いてね』

 頭の中に響く女神様の声、そして目の前の女神様から発せられる肉声も響き渡る。

 頭の声は念話か!


『この世界で、私が唯一認める教会が出来上がったわ。

 ここでお祈りしてくれれば、私にも皆の声が届くわよ。

 聖女と一緒に待っているから、是非来てね』

 う〜ん、本物の女神様は語り方が軽い。

 親しみがあるというべきか…。

 私がこの世界に来る時に見た偽者とは、似ても似つかない。

 アレを作った奴は女神様を知らなかったんだな〜。


『さあ皆、目をつぶって。

 今から教会の場所を皆が頭に描けるよう、イメージを飛ばすから、しっかり覚えてね』

 女神様の言葉に従って目をつぶってみる。


 そして、真っ暗になった視界が、青一色で染まった。海だ。

 そして陸が描かれる。

 ひとつの大陸と、本当に細かい島々。

 あ、でも少しだけ大きい島はあるようだ。

 沖縄ぐらいの大きさのようだけど。

 この世界はこうなっていたんだ、勉強になった。


 それから、地図は徐々に一点が拡大されていく。私達のいる半島だ。

 こうして見てもドラゴンの横顔のような形をしている。

 面白い偶然だ。


 そうして、今現在私達のいる屋敷の位置に光が灯る。


『教会はここよ。

 それじゃあ、皆、待ってるわ』

 徐々に視界が元の真っ暗闇に戻っていく。

 へぇ〜、女神様、こんな事ができたんだ。

 感心しつつ目を開けると、ぬし様も目をぱちくりとしていた。


 2人で見詰め合っていると、どやどやと、教会(元食堂)に人が集まってきた。

「女神様!今のは何ですか?」

「同時に念話なんて、そんな事ができたなんて」

「あの映像、あれがこの世界の全てなのですか!」

 皆興奮している。

 そうだよね〜、翼を持たない私達からしてみれば、世界を上から見るなんて一大事だ。

 ぬし様は普段から見ているし、そんなに驚く事じゃないかもしれないけど。


「のう、女神よ」

「何かしらドラちゃん?」

 ぬし様が女神を呼ぶ。何か気になる事があったのだろうか?


「今の念話、ダレに対して送ったのじゃ?」

「え〜、ドラちゃん私の話をちゃんと聞いてた?

 全世界の皆と言ったら、全世界の皆よ。

 流石に虫とか魚とか、知能の低い子達には意味が理解できなかったでしょうけど」

 流石ぬし様!そこに疑問を持つとは…。

 え?いや、待って、女神様今何て言ったの?


「だから、全世界の皆っていうのは、言葉通りの意味よ。

 種族も、場所も関係なく、今の念話は全ての生き物に届けたわ!」


 女神の発言に凍りつく私とエルフ達。


 始まる…。


 戦が、始まる!


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