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いいひと連合:衝突

「大枠の方向性は良いと思います。でも、やっぱりしっかり調査しないと。週明けに対策見込みと報告した方が良いですね」

 和泉が言った。

 数人が頷く。それで周りが冷ややかだった理由をオレは理解した。


「これ、どこのシステムなんですか?販管システムっぽいですが・・・」

 プログラムを見て気になった部分をオレは質問する。

「スーパーです」

 七海が答えた。

「ダメじゃん!土日どうするんですか??」

 オレは呆れるを通り越して驚いたのでつい素の言葉が出てしまう。


「そこは、しばらく既存のシステムのまま様子を見てもらってさ」

 と誰かが言う。

「落ちると分かってるシステム使えってことですか?ちょっと背景までは分かりませんが、こんな古いバグが顕著化したってことは何か理由がありますよね?客数増えたとか、商品のラインナップが大きく変わったとか」

「最近リニューアルオープンして混雑しているんですよ」

 双葉が言った。

「なら、なおさらダメじゃん!修正パッチ出しましょうよ。スーパーならちょうどいいじゃないですか!閉店時間がある!21:00閉店なら締め作業が22:00終了と見ると、そこで入れ替え作業が出来ます。今から作業始めれば5時間は取れます。確認作業もできるでしょう」

「しかし影響範囲が」

 また別の誰かが言う。


「もちろん仮パッチですよ。出した後も並行して調査・監視はします。仮パッチ出すのもダメなんですか?」

「パッチに不具合があったらどうする?」

「それ言います・・・?その時は対応するだけですよ。もちろん、そうならないよう最善を尽くした上でですが。そもそも、それを心配するなら、高確率で不具合が出ることが分かっている現システムを使わせることを心配しましょうよ」

 嫌な沈黙。


「深夜残業に、休日出勤になる」

 和泉がボソりと言った。数人が小さく頷く。

 まぁ、これが本音だろう。

 なんでこの職場はこれが許されているんだろう?と不思議になる。


「そこが心配ならオレがやりますよ。アナタ達にやれって言ってないでしょ?!クライアントに対して誠実な仕事がしたいだけですよ。これがダメって意味が分からないです」

 抑えなければと思いつつも言葉の端々が荒くなる。何でこんなことが通じないんだろう?


 別にオレは綺麗事で言っているのではない。こんな雑な対応をしていたら顧客を失うことを懸念しているだけだ。

 どんだけ権利を主張した所で売上が立たなければ自分達の給料の原資が無い。そうなれば不採算部門は閉鎖になる。それが会社だ。

 ここまでズレたホワイト化は自分の首を絞めることが、なぜ通じないんだろう?

 ひょっとしたら、オレがおかしなことを言っているのだろうか?と不安にすらなる。


「品質保証はどうするんですか?ウチだけじゃ納品できないですよ」

 と和泉。

「頼めばいいじゃないですか・・・彼らが嫌だって言うんですか?逆にオレは彼らからは『少しでも早く対応しろ』としか言われたことないですけど。なんなら、オレが電話しましょうか?」

「今時は、人事が煩いからなぁ・・・」

 平沼が苦笑いをしながら言った。

 やはり何人かがヘラヘラ笑いながら頷く。

「それ、本気で言ってます?製品不良による顧客のクレーム対応でさえ、残業・休出してはいけないなんてIT起業ありますか?それもオレが人事に電話して確認すればいいですか?」


 再び嫌な沈黙になる。

 オレの問いに対して平沼は「いや、そこまではしなくても。。。」とモゴモゴ言った。


「そこまで言うなら加藤さんがやればいいんじゃないですか。でも注意喚起はしましたので私は責任持ちません」

 そう言って和泉は自席に戻った。


 結局その後、オレ、平沼、七海、品質保証部で対策会議を行い、21:00に緊急対策パッチを納品した。そのまま現地で入れ替え作業をして、土日はオレ、七海、平沼が自宅待機で様子を見ることになった。


 幸いシステムはトラブルなく稼働した。


 しかし月曜、和泉が出勤して来なかった。

 人事から連絡があり、退職代行から書類が届いたという。


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