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いいひと連合:休憩

 本当に気のせいだったのかな?


 平穏な職場での仕事が日常化するにつれ、次第にそんな気もしてくる。

 平穏なことを異常だと感じるオレの方が異常なのかもしれない。


 しかし、眠い。

 14:00を少し回った所で、今日予定していたタスクは全て終了してしまった。

 他に何かやることは無いかと主任の平沼に聞いたら、「今後の勉強していてくれ」とのこと。

 取引先の情報やら、取り扱っているシステムの仕様書等を眺めてはみるものの、全然頭に入ってこない。


(少し冷えた空気を吸ってこよう)

 オレは席を立って、階段で3階から1階まで下りた。そして社員食堂に行き、自販機で缶のアイスコーヒーを買う。


「あっ加藤さん」

 不意に声をかけられた。

「一緒に休憩しませんか?」

 同じチームの西谷双葉と星川七海がテーブル席でアイスを食べている。

「うん。。。じゃあ」

 多少バツが悪いが、断る理由もないので近くに座る。


「私達、この時間、よくオヤツタイムするんです」

 双葉が言った。

「そういうのアリなの?」

「いいじゃないですか!タバコ吸わないんだし、喫煙者が喫煙室に行く時間の合計ぐらいはオヤツ食べてもいいと思いません?」

「加藤さんもタバコ吸わないですよね?」

 七海も加わって畳みかけるように話す。

「・・・うん」

 気圧されるようにオレは答えた。

「だから誘ったんです!非喫煙者連合です。男の人がいると心強いですし」

「そういうことか」

 一瞬モテたのかと思った自分を内心恥じた。


「でも、めずらしいですね、ウチで吸わないのって」

 職業柄・・・と言ってはいけないのだろうが、世の流れに反してウチの会社は喫煙者が多い。

「そうかもね。別に深い理由は無いんだけど、なんとなく吸わないまま生きてきただけ」

 本当にオレが吸わない理由は何もないのだ。

「シブイですね」

「このまま吸わない方が良いですよ!」

 二人とも良く喋る。前の職場にはいなかったタイプだ。


「実は・・・」

 頃合いを見計らったように双葉が言った。

「加藤さんって怖い人だと思って、ウチらめちゃめちゃビビってたんだよね」

 七海が3回頷く。

「なんでだよ?!」

「品保の和田って子、知ってます?」

「うん。顔と名前ぐらいは。あんまり話したことないけど」

 開発部門が製品を作り、世に出す前に様々な検査をするのが品質保証部門。内輪では略して品保と呼ばれている。自分もバグ発覚で差し戻されたことは何度かあり、その際に一緒に対策会議をするので品保のメンバーはだいたい知っている。


「あれ、ウチらの同期なんですよ。そんで言ってました。加藤さんってめちゃめちゃ仕事出来て、めちゃめちゃ厳しい人だって」

「ね、一番若いのに、加藤さんが全部仕切ってたって」

「うん。誰も加藤さんに逆らえなかったって」

「んなバカな・・・」

 傍からはそんな風に見られていたことを初めて聞いた。


「都合よく使われてただけだよ。どっちかというと仕事を押し付けられる側だった」

「でも、それは任せられる実力があるってことですよね!」

「なんか、ウチの会議聞いていても、ちょっとレベル違うよね」

「ほんと、だいたいウチらに仕事押し付けたら会社終わるっしょ」

「ちげーねぇ、ははは」

 双葉も七海も、オレに話を振ったと思ったら、いつの間にか二人で盛り上がっている。なかなかリズムが掴めない。

 この調子で気圧されていると、食堂に主任の平沼が入って来た。そして自販機で冷たい緑茶を買う。


「お疲れ様でーす!」

 双葉と七海は明るく平沼に挨拶をした。

 それに合わせて自分も軽く頭を下げる。

「お疲れさーん」

 それだけ言うと平沼はお茶を持って戻って行った。

 サボっていることにバツが悪そうにしていたのは自分だけだった。


 場所には場所の文化がある・・・ということなのだろうか??


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