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テオとイズの冒険日記  作者: モードー
日記帳一冊目【無理なお使い】
32/35

031【契約精霊】

〖神暦 3240年 4月 8日〗

 日記の筆者『イズ』

 場所「セレスタル地方」



夕暮れの村。

子供たちは「またなー」と手を振り合い、各々の家に帰って行っている。

そして、広場の市場では、店の片付けをしている。


「もうちょっとで夜だね。」


テオが、家々の隙間から差し込む、夕焼けを指さした。


「…宿に泊まるのもいいけど、お金が…」


テオが財布をひっくり返す。


「魔鋼を売った時のお金があるじゃない!」


私は、魔法空間から財布を取出し、中の銀貨を見せびらかした。


「あのさ、宿に泊まるのもいいけど、その前にワタシ、ちょっと行きたいところがあるの。」


アリスが道を曲がった。

それに私たちは付いて行く。

何分かアリスの後ろを歩き、小さな家にたどり着いた。


西洋風に、赤い屋根の家だ。


コンコン


アリスがドアを叩く。


「なによ! この、わらわの家の扉を叩くのは、たとえ神でも許されなわ!!!!!!」


その家から、少女の怒鳴り声が聞こえてきた。


「…このこえ…」


テオがボソッと呟いた。


「ワタシよ~ リリー、 アリスよ。」


アリスが言う。


「…なんだ、アリスなのね? ならいいわ。」


少女の声が聞こえたかと思うと、そのドアが開いた。

そこには、8歳程の少女…幼女が立っていた。

髪は金色で、肌が白い。

おとぎ話に出てきてもおかしくないくらいの、可愛らしい見た目をしている。


バタンッ!


ドアが勢いよく閉じた。

ん?


…そして、キィと、ドアが開いた。


「…リリー?」


テオが言う。


「な、なななな、なによ、」


その幼女、リリーが目を泳がせている。



「久しぶり、元気にしてた?」


テオが笑顔で聞く。


「べ、べべべ、べつに? わらわは、大丈夫よ?」


…これは、なにかあるな。

私は、そう思った。


「…怒らないから、話して? なんで僕との契約を無視したの?」


テオが言う。

…これは怒っている。

テオが怒っているのは、初めて見た。

静かに怒るタイプだ。


「い、いいい、いや… 逃げたわけじゃないし?  む、無視はしてないし?」


リリーが言う。


「ふ~ん…たしか、僕との契約は、『水の臨精霊、マリリア=アラバスターは、しゅテオドア=ベルカントを最大限守ることとする。そして、契約続行中はその身はしゅのものである。 しかし、マリリア=アラバスターは、しゅテオドア=ベルカントの魔力、エネルギー、霊力、生命力、の全てを利用することが出来る。』 …そして、臨精霊は、しゅからエネルギーを分けてもらわないと、生きていけない。…だよね?」


テオが言う。


「え、ええ…」


リリーが小さく頷く。


「つまり、僕はリリーに、僕は何の見返りもなく、エネルギーを分け与えていたという事だよね?」


「…そういうことよ… けど! わらわ、ちゃんと仕事はしてた! で、逃げたくて逃げたんじゃなくて、わらわは、わらわは…」


リリーが少し泣きそうになっている。

…というか、テオは、リリーは『臨精霊』だと言っていた。


臨精霊、

という文字は入っているが、彼らは、精霊が天使の座を奪った後に生まれた精霊を指す。

つまり、私の先祖のかたきではないという事だ。


名前の由来は、降臨、臨む、上から見下ろす、などからきているそうだ。


「だって、だって…」


リリーが泣き出してしまった。

…テオも言い過ぎなのでは?

…けど、契約放棄は、臨精霊にとっては結構なことだし…


そんな事を思い、私はどうすればいいのか考えていると、おもむろにテオがしゃがみリリーに抱き着いた。


え?


何が起こったか、まったく理解できない。

うん。

さっきまで、喧嘩してたよね?


「もう! 探したんだから、半年くらい!」


テオが言う。


半年…テオが冒険している時間と同じだ。

テオの旅の目的は、このリリーを探すこと?


「…アリスもアリスで、知ってたんだったら、おしえてよ… 僕は何のために旅をしてたと思ってんの…」


テオがアリスに向かって言う。

アリスは「え、リリーのこと、さがしてたの?」と、驚いた声を出した。


「…テオって、リリー探すために冒険してたの?」


私はテオに問う。


「そうだよ。」


テオはそう言いながら、立ち上がった。


そして、テオはリリーの頭を撫でる。


「けど! なんで、僕との契約を破ったのかは、説明してね?」


テオが両腕を腰に当てた。


すると、リリーは涙を手でふき、口を開いた。


わらわは、逃げたわけじゃないのよ。 まず、テオ…マスターと契約したのが5年前よね?」


リリーが言い、「とりあえず、家の中にはいれ」と、言わんばかりの手招きをした。

それに従い、私たちはリリーの家に入った。

…そこには、なにもなかった。

ただの、真っ黒な空間。

…床はある、天井も、壁もある…はず。

真っ黒で、なかに入った者だけ、薄っすらと、見える。


「[光よ]」


リリーが呟いた。


すると、その暗闇が、まるで霧が晴れるようにサァと消えた。


「…とりあえず、すわるのよ。」


リリーがソファーを指さした。


皆がソファーに座った。


「じゃ、話すとしましょうか。 わらわがなぜ、ここにいるのかを。」





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