030【ガラスの支配者】
〖神暦 3240年 4月 8日〗
日記の筆者『イズ』
場所「バター高原」
「ワタシは硝子を、『支配』しているのよ。」
アリスの目が、赤く染まった。
…これが、アリスから返ってきた答えだ。
『支配』だと?
まさか、無生物の支配、『世界の力』を使用している…だと?
「ねぇ、アリス、 ヘンなこと聞くけど、死んだ事ってある?」
私は、少しためらったが、アリスに尋ねることにした。
私が知っている、『世界の力』の入手方法は、これだけなのだ。
「…あるわ。」
やはりな。
「えぇ!」
テオが叫んだ。
まぁ無理もない。
「じゃ、今のアリスは誰?」
「ワタシはワタシよ、お兄ちゃん。」
「だよ…ね。」
「…どうやって戻って来たの?」
死後の世界、『天国』、つまり精神次元空間に行ってしまった魂は現世に帰還することは難しい。
ただ、ゼロではない。
『アドルフの魔法、第三法則』
魔法で出来ない事は無い。
「私の場合は、死んで行ったわけじゃないから、普通に戻って来たけど…」
私は、一度精神次元空間に行った事がある。
と、前に言った事がある気がするが。
その時は、『死』で行ったわけではないので、なんの代償も必要としなかった。
「硝子と同じ、向こうから、ワタシの屍を支配して、『憑依』したのよ。」
死体の支配?
…まぁ、硝子を支配している時点で驚いたので、もう驚かないが…
「ま、とりあえず、村に向かうわよ!」
アリスが原っぱの奥を指さした。
私は、すこしモヤモヤを抱えたまま、村の方向に向かって、飛び始めた。
数分後
「おぉ…」
平原より、少し上に突き出た大地に、大きな村が広がっている。
「…あ、そうそう。ちょっといい?」
私は、そう言って、皆から少し離れた。
「どうしたの?」
テオが言う。
「白龍を外にだしてあげなきゃ。」
私が、そう言うと、テオは「あ!」と声を上げた。
「よいしょっと!」
私は、ポータルをひらく。
ゴゴゴ
大きな音がなり、開いたポータルから、白龍が現れた。
その細長い体をポータルから出して、こちらをむく。
『遅いではないか!!!!』
大きな叫び声が耳に響く。
そして、白龍の独特な角が夕日に照らされ、オレンジに光って見えた。
「ごめんね…忘れてた。」
『忘れてただと?!』
私は、その声の大きさに、耳をふさぐ。
「…ま、まぁ、許して?」
私は、両手を合わせる。
『…はぁ、ま、よかろう。』
白龍がため息をついた。
『その代わり! また今度でよいから、バター高原の小龍の村に行って、「白龍が帰ってきた」と伝えておいてくれよ?』
白龍の要望は、思ったよりハードルが低かった。
「OK!わかったよ。」
『頼むぞ? では、達者でな!』
その声とともに、白龍が空の彼方へ、飛び去って行った。
シャ
空気を割く音がした。
気が付いたころには、白龍の姿は見えなくなっていた。
早くね?
「い、今のなによ?」
アリスが走って来た。
「白龍だよ。」
「はくりゅっ、えぇぇ?」
アリスは少し動揺し、白龍の飛び去った方向を見つめる。
「うん。その反応は間違ってないよ。」
私は、そう言い、テオのいる方へ飛んで行った。
「あ、ちょっと待って!」
アリスが私の後を追いかけ、走った。




