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テオとイズの冒険日記  作者: モードー
日記帳一冊目【無理なお使い】
30/35

029【透明な破片】

〖神暦 3240年 4月 8日〗

日記の筆者『イズ』

場所「バター高原&セレスタル地方」



あ、セシリアさんだ!


私はやっと思い出した。


遺跡で会ったエルフの王族の、セシリア・ベルカント


「ねぇテオ、貴方のお母さん、エルフ?」

「えぇ、なんでわかったの?」

「で、テオの、本名何?」


「テオドア=ベルカント だよ。」


テオが言う。


「アリス=ベルカント よ。」


空気を読み、アリスが言う。


「エリザベス=ベルカント じゃ。」


これまた空気を読み、エリザベスが言う。


まじか、これは何かありそうだな。(複線回収早くね?)

…ってか、テオって『テオドア』だったんだ。


「な、なんでお母さんが、エルフだってわかったの?」


「あのね、事の始まりは、二日程前…」


私は遺跡、(正確には違うが)でセシリアさんに会い、そこで話した事を皆に伝えた。


「…つまり、うちのママが王様の血を持っているってこと?」


アリスが首を傾げる。


「まぁ、結論から言うとそういう事…かもという事ね。」


「なるほど…」


エリザベスが首を縦に振る。


「…ところで、その…アレナさんってどんな魔法が使えんの?」


私が皆に聞いた。


「…よくわかんないけど、綺麗な魔法を使うわ。」


アリスが答える。


「ふ~ん。」


私は何故か妙に納得する。


「じゃ、私は帰るぞ。よいな?」


エリザベスが言い、ガラスの扉を開き、ターミナルから出て行ってしまった。

しまった? いや、くれた…だな。


「じゃ、行きましょうか。」


アリスが言う。


「行くか。」


テオが答えた。




数分後




すごい。

と、しか言えない。


飛行機の外側は真っ黒で堅そうだったが、内側にはいろいろある。

操縦席の後ろには、ソファーやテーブルあと、冷蔵庫がある。


中はやや狭く、縦長だが生活するには十分な広さだ。


「みんな、椅子…そこのソファーに座って~」


アリスが操縦席から、顔を出した。


「は~い」


私は返事をした。


「よいしょ」と、言いながらテオも座った。


「とりあえず、上空に出るから、しっかりつかまってて。」


アリスが言った。

――刹那、重力の方向が変わった。

下ではなく、後ろだ。

は?

何が起こっている?

外は…

私は窓へ視線を移す。

景色が物凄い速度で、下に落ちていっている。

どういう事…?

そんな事を思っていると、急に重力が戻った。


…雲を抜けた。


「よいしょっと」




ドォォォ



飛行機が近くの平原に降り立った。


「ついたわよ」


「早すぎるだろ!!!!」


私は、叫んだ。


「これで行けば、晴れの森から一日もかからんかったわ!」

「まぁ、イズ…落ち着いて?」


「じゃ、行きましょうか。 お兄ちゃん達、村に行くんでしょ?」


アリスが言った。


「…じゃぁ行くか。」


私の話を聞かずに、二人で話している。




数分後




「お兄ちゃ~ん。 疲れた。おんぶして~」


アリスが言った。

飛行機を私の魔法空間にしまい、私達は村へ歩いている。

(私は、飛んでいる)


「無理だよ。リュック背負ってるから。」

「じゃぁ、お姫様抱っこ。」

「はいはい。」


テオが言い、アリスをお姫様抱っこする。


…あの二人、双子なんだよな。

高校生の兄と、小学校低学年の妹、くらいの精神年齢の差があるように見えるのだが…

私の言えたことでは無いのは、わかってますが…

もしくは、あの二人、は恋人だと言われたら納得できる。


にしても、テオって意外と力持ちなんだな。


背丈もほぼ一緒の同年齢の男子を軽々と持ち上げる(飛空場のターミナルの高い高い)アリスにも私は驚いているが…


「というか、思ったより寒くないわね。」


アリスが言った。


「まぁ、季節が春だからね。 冬はもう寒くて寒くて、お湯も凍るらしいよ。」

「へぇ…」


すると、私の魔力探知レーダーに、影が映りこんだ。

――っ早い。


「みんな、にげ…」


ドシュ


私が言う間もなく、鈍い音がした。

は?

私は急いで振り向く。


「…たぶん黒凶狼ブラックウルフの一種ね。」


アリスが、テオの腕に抱かれたいまま言う。


「ワタシが倒したから、大丈夫よ。」


私はとっさに振り向いた。

そこには、首に穴が開き倒れている黒い狼が見えた。


「すご…」


私は言葉を漏らす。

すると、アリスの手の中に、なにか太陽の光を反射し、輝くものが見えた。


…ガラス?


「それなぁに?」


私は尋ねる。


硝子ガラスの破片よ。 ワタシの得意な攻撃魔法。 硝子ガラスの破片を出現させ、飛ばす。っていう魔法よ。」


テオは「アリスなら、いつものことだよ」と言わんばかりの、平然とした顔をしている。


けれど、硝子ガラスの破片を飛ばすというのは、すごいことなのだ。


まず、そもそも硝子ガラスは非魔伝導体だから、鉄などと違い、魔力を全く通さない。

非魔伝導体なら、敵の防御魔法をかいくぐる事が出来るから、恐らくアリスは硝子ガラスの破片を武器に選んだのだろう。


しかし、非魔伝導体は魔力を通さない、すなわち魔法によっての制御が不可能なのである。


「あ、あのさ、アリス、 その硝子ガラス、どうやって操ってんの?」


私は、尋ねる。


「うん? …あのね、ワタシは…」


アリスが言いかけた、その瞬間、あの影をまた捉えた。

しかも複数。

…視界に入った。


「あ!」


テオがアリスを抱いたまま、声を荒げる。


「た、倒すわよ!」


私は叫び、魔法を発動する。




ジャラッ キィィィィィ




なにか、物凄い数の硬い物がこすれあう音がした。


「なっ…!」


私の目の前には、透明な物体が集まり、構成されている一種の液体のような物があった。

その物体に、西日が差し込みキラキラ輝いて見える。

よく見ると、小さな『破片』が一つずつ単独で行動している。

…魔力を感じない。




ピキッ




音がした。




ダダダダダダダダダダ




なにかを連射する音だ。

その塊から発射された、無数の硝子ガラスの破片が黒凶狼ブラックウルフ一匹一匹に突き刺さっていく。




ガガガガガガガガガ




目の前で、黒凶狼ブラックウルフが血しぶきを上げ、倒れていく。


こんなの戦いじゃない。

――ただの蹂躙だ。




その時、目の裏にあの光景が浮かんだ。

…この硝子ガラスで形成されている物体は、目がくらむはど美しい。

それは、認めよう。

ただ、けっしてこの硝子ガラスは美しいものではない。


殺意と、憎悪と、嫉妬と、執着と、怒りと、恐怖と、絶望と、落胆と、不安と、哀と、愛の、混ざり合った、究極さいあくの作品。


…この攻撃を、私は昔見たことがある。

発射している『物』は違うが、ハッキリとわかる。

これは、この魔法は、人類の領域をとっくに過ぎている。


そして、その術を行使しているのが、一人の少女だと言うのだ。




ドシャァ




その猛攻が終わり、硝子ガラスの破片が粉になり、散っていった。

その粒子に、太陽光が反射し、水面に映る光のようにキラキラと輝いている。


「ワタシが非魔伝導体である、『硝子ガラス』を操れる理由?」


テオの腕の中から降り、アリスは私を見た。


「簡単だよ、ワタシは硝子ガラスを………」


その答えは、私の想定内では収まらなかった。



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