019【空中を行く機械】
〖神暦・3240年 4月 8日〗
日記の筆者『イズ』
場所「ウェイタ平原」
………はっ
体が上下に揺れる振動で、私は目が覚めた。
「ここは…?」
私は何か、柔らかいものに横たわっている。
そこからゆっくりと起き上がる。
「あ、イズ大丈夫?」
テオの声が聞こえた。
「大丈夫…」
寝起きの時のように、少し目がぼやけている。
少し目をこすり、辺りを見回した。
木でできた壁が周りを取り囲んでいる。
そして、少し上を見ると、窓らしきものがある。
簡素な馬車かしら…
「テオ、ここはどこ?」
「馬車のなかだよ。」
「やっぱり…」
「うん。通りすがりの商人に乗せてもらったの。」
ふ~ん…
…今、気が付いたのだが私はどうやらテオ膝の上で寝ていたらしい。
「よっと。」
私は飛び上がり、窓の外を見た。
「…平原? ウェイタ平原かぁ。」
ああ、そうだった私達はあの遺跡を抜けたのだ。
「あ、そうだ。テオはセシリアさんに会った?」
「セシリアさん?」
…テオはセシリアさんに会ってないのか。
「なるほど。」
一度に介入出来る精神は一つだけなのかな…
「セシリアさんって誰?」
テオが尋ねた。
「あの遺跡に有った昔の街の王様だよ。」
私が答える。
「ふ~ん。」
テオが小さく、数回頷いた。
数分後
「ついたぞ~」
布のカーテンに挟まれた向こうから、中年男性らしき声が聞こえた。
…恐らくテオの言っていた、通りすがりの商人だろう。
「あ、は~い。」
テオが返事をした。
ガタン
馬車が止まった。
すると、片方の壁がキィーという音を出しながら開いた。
「ほれ。」
商人の男性が扉をあけてくれたのだ。
開いた扉の奥に町が広がっているのが目に飛び込んできた。
「わぁ…!」
思わず私は歓声を上げた。
「おじさんありがとう。 はい。」
テオが商人に何かを手渡した。
「なぁに?それ。」
私はテオにに尋ねた。
「銀貨3枚だよ。」
…なるほど、代金か。
「あ、そうだ! 商人さん。買い取ってほしいものが…」
私はそう言いながら、魔法空間から魔装魔導衛兵の魔鋼の一部を取り出し、商人に渡した。
「どれ… っこれは、魔力の練りこまれた鉄、魔鋼じゃないか!!」
彼が目を光らせた。
「これで全部か?」
「いいえ、まだあるわよ?」
私はすべての魔鋼を取り出し、地面に置いた。
「なっ…!!! 40…いや、50で買い取らせてくれないかっ?」
商人が私を見た。
いや、「買い取らせてくれないか?」って、普通私が「買い取ってください。」っていう側なのに…
「ええ、もちろん!」
銀貨50の臨時収入だ。
「ありがとう!」
彼が私にお礼をし、(普通、逆じゃ…)お金の入った袋を手渡した。
「じゃあその魔鋼をこの馬車に積んでくれ。」
「は~い。」
私は魔法で魔鋼を馬車に積んだ。
「どうして、そんな魔鋼を欲しがるの?」
私は商人に尋ねた。
「えっ…」
彼は少し動揺し、後に口を開いた。
「実はね、ある大商人が魔鋼を高額で買い取ってくれるんだよ。」
「…じゃあ、そちらに売ろうかしら。」
少し冗談を言ってみた。
「えっ…じゃあ、これもおまけであげるから!!」
彼は焦った口調で言いながら、私に小さなボールのような物を手渡した。
「これは?」
「これは、昔、バター高原で手に入れた…玉だ。 これもおまけであげるから他に売るなんて言うなよ~。」
「解ったわ。」
私がそう言いうと、彼が私の気が変わらぬうちにと、私たちの背中を押して、 「またな!」 と言った。
「うん。またね~」
私達は商人を後にし、町の中心にある『ウェイタ飛空場』に向かった。
数分後
「わぁ…」
私は言葉を失う。
見上げると、鉄でできた大きな鳥のようなモノが轟音を轟かせ、物凄い勢いで飛んでいた。
全長50mはある長い胴体に、二本の長い羽が付いている。
…もうどこかに飛んで行って、見えなくなってしまった。
「なにあれ、飛空艇?」
あんな形の飛空艇は見たことがない。
普通は船に気球をくっつけたような形だ。
「知らないの? アレは帝国史上最も早い飛空艇。科学と魔法の融合体。」
科学と魔法が手を繋げば、あんな物を作り出せるのか…
…テオが言葉を続ける。
「飛行機だよ。」
ゴゴォォォォォ
テオの言葉と同時に、飛行機が私達の上空を通過した。




