ギルド登録と初めてのビジネス 9
「エマ、そいつが例のチビか」
地響きのような、低い声。
うわ、こわっ! この人、絶対にカタギじゃない!
エマさんは、そんな彼にも臆することなく、にこやかに紹介してくれる。まあ同僚だし、慣れてるんだろうね。
「はい、ゴードンさん! この子が、今日登録試験を受けに来たコトリちゃんです。コトリちゃん、こちらが今日の試験官を務めてくださる、ゴードンさん。元Aランクの冒険者で、今は新人さんの指導をしている、とっても頼れる方よ」
(どこが!? どこをどう見たら『頼れる』になるの!? 私の目には反社会的な危険人物にしか見えないんだけど!?)
私が内心で全力でツッコミを入れていると、ゴードンさんは、その鋭い目で、私を上から下まで品定めするようにじろじろ見る。
「ふん。嬢ちゃん、今からでもやめていいんだぞ。ここはままごとの場所じゃねえ。怪我しても、泣いても、誰も助けてはくれん」
その声には、子供を諭すような響きと、ほんの少しの、優しさ……みたいなものが含まれている、気がしなくもない。
うん、たぶん、根は悪い人じゃないんだろう。見た目が完全に悪役なだけで。
「大丈夫です。よろしくお願いします、ゴードンさん!」
私がぺこりと頭を下げると、ゴードンさんは少しだけ驚いたように眉を上げた。
そして、その後ろ。
私たちが降りてきた階段から、ぞろぞろと野次馬の冒険者たちが降りてくるのが見えた。
さっき、私たちを馬鹿にしていた連中だ。
完全に、面白い見世物を見に来た、という顔をしている。
「おいおい、本当にやるのかよ」
「あのゴードンさんが試験官とはな。あのチビ、泣いて逃げ出すに100票だぜ」
「賭けようぜ。俺は、1分もたない方に銅貨10枚だ」
聞こえてますよー! 全部聞こえてますからねー!
でも、いい。
むしろ、観客は多い方がいい。
私の、そしてコロの、華麗なるデビュー戦を、その目に焼き付けさせてやる!
ゴードンさんは、そんな野次馬たちをちらりと一瞥すると、うるさそうに舌打ちを一つした。
「静かにしろ、てめえら。試験の邪魔だ」
その一喝で、騒がしかった冒険者たちが、ぴたりと静まる。
おお、やっぱりこの人、すごい人なんだ。こわいけど。
ゴードンさんは、再び私に向き直る。
「よし、嬢ちゃん。試験を始める。試験は二つだ」
彼は、壁際に置かれていた、一体の人形のようなものを指差した。
(ん? なんだ、あれ……?)
それは、たくさんの木材を組み合わせて作られた、人間くらいの大きさの人形だった。
手足の関節には、金属の蝶番のようなものが見える。なんとなく、デッサン人形を巨大化させて、ゴツくした感じ? で、あれをどうするの?
ゴードンさんが説明を続ける。
「第一試験は、『魔物討伐』。あの木製ゴーレムを、制限時間内に戦闘不能にしてみせろ。時間は、砂時計が落ちるまでだ」
(ゴーレム!? 今、当たり前のように『木製ゴーレム』って言った! さすが異世界! でも、この世界、ゴーレムってそんなに一般的なの!? 一家に一台ゴーレム、みたいな感じなの!?)
脳内で一人、カルチャーショックを受けている間に、ゴードンさんは砂時計の方を指差す。
ざっと見て、5分くらいだろうか。
「第二試験は、『自己PR』。戦闘以外で、お前が冒険者として、パーティやギルドにどう貢献できるか、そのスキルを証明してみせろ」
「分かりました」
「よし。では、第一試験、始め!」




