第49話 強面の試験官登場。地下訓練場で実技試験スタート!
「そうよ! 例えば、水場のない場所でも体を清潔に保てたり、雨で濡れた衣服を乾かしたり、汚れた装備を綺麗にしたり……戦闘以外で、パーティに貢献できることは山ほどあるわ!」
なるほど!
言われてみれば、確かに。
私もこの異世界にきてからは、通販だけでなく、生活魔法にも頼りっぱなしだったし。
前世でも生活魔法を使えてたら、きっと人生は何倍も楽だったろうね。
こっちの世界の住人達も、色々面倒なことを魔法一発で解決できるなら、それは確かに、最強のサポートスキルかもしれない。
(私のチート能力、もしかして、とんでもなく需要があった…?)
自分の能力の市場価値を、今初めて正確に認識した。
これは、いける!
エマさんは、興奮した様子で続ける。
「よし、決めたわ! コトリちゃん、ギルドには、登録希望者の実力を見るための、簡単な『実技試験』があるの。それを受けてみない?」
「実技試験、ですか?」
「ええ! あなたのテイマーとしての実力と、その素晴らしい生活魔法を、みんなの前で見せつけてやるのよ! それに合格すれば、もう誰にも文句は言わせないわ!」
熱っぽく語るエマさんの瞳には、「私があなたを絶対に合格させてあげるから」という、力強い意志が宿っているようだ。
(……よし!)
このお姉さん、完全に私の味方だ。
この流れ、断る理由がどこにもない。
むしろ、これはチャンスだ。
私の能力を、この街でアピールできる絶好のチャンス!
「やります! その試験、受けさせてください!」
私の力強い返事に、エマさんは満足げに頷く。
「いい返事ね! それじゃあ、早速準備するから、ちょっと待ってて!」
そう言うと、エマさんはカウンターの後ろの事務室らしき部屋へと消えていった。
残された私とコロ。
そして、私たちの周りには、いつの間にか、遠巻きに様子を窺う野次馬の冒険者たちの人だかりができていた。
「おい、マジかよ。あのチビ、試験受けるってよ」
「生活魔法ねぇ……。まあ、確かに便利だが、それで魔物に勝てるのか?」
「面白え、見物してやろうぜ」
冒険者たちの好奇の視線が突き刺さる。
うん、悪くない。
こういうのは、注目されてこそ、だ。
(ふふふ、見てなさい、皆さん。これから、私の華麗なるデビュー戦が始まるんだから!)
私は、足元で「きゅん?」と不思議そうに首を傾げているコロの頭を、ぽんと撫でた。
「コロ、これからちょっと、お遊戯の時間だよ」
『おゆうぎ? やったー!』
そう、これは、お遊戯。
コロの戦闘力の高さは、あの夜で証明済みだ。
そして、私のレベル99の生活魔法。
きっとこれは、私の快適なスローライフを実現するための、最初で最後(?)の派手なプレゼンテーションなのだ!
◇
エマさんに連れられて、私はギルドの奥にある扉をくぐる。
その先には、下へと続く薄暗い石の階段があった。ひんやりとした空気が下から上がってくる。
(うわ、完全に地下ダンジョンの入り口じゃん、これ! 衛生環境、大丈夫? カビとか)
私の内心のツッコミなど知る由もなく、エマさんはランタンを片手に、慣れた足取りで階段を降りていく。
私も、コロと一緒にその後に続く。コロは、初めて見る地下空間に興味津々で、くんくんと壁の匂いを嗅ぎながら歩いている。うん、君の好奇心は頼もしいけど、変なもの舐めたりしないでね!
階段を降りきると、そこには広い空間が広がっていた。
天井は高く、壁にはいくつもの松明が掲げられ、パチパチと音を立てて燃えている。
床は土間になっている。
ここが、冒険者ギルドの地下訓練場か。
(うーん、まさに『訓練場』って感じ。女子力のかけらもない、無骨な空間だわ……。しかし、何でわざわざ換気しにくい地下に訓練場作るんだろうね? 騒音対策かな?)
そんな感想や疑問を抱いていると、すでに訓練場の中心には、ギルド職員らしき冒険者風の男の人が仁王立ちで待っていた。
筋肉質で、身長は180cm近くあるんじゃないだろうか。剃り上げた頭で、顔には大きな傷跡のようなものがある。そして、何か怒ってるような厳めしい顔つき。この人、こわっ!




