【29話】『ないないない令嬢』は幸せになれる場所を見つける
それから一週間後。
オフェリアは結界の展開とケガ人の治療を終えた。
これでラグドア王国は、少しずつ元の姿へ戻っていくだろう。
ベルクから頼まれた仕事は終わった。
役目を終えたオフェリアは、最後にアディールと一緒にベルクのもとを訪れた。
「オフェリア。お前のおかげでこの国は救われた。心より感謝する」
「いえいえ。ベルク様のお役に立てたのであれば幸いです」
「ありがとう。そう言ってくれて私は嬉しい」
そう言うと、ベルクの表情が引き締まった。
「オフェリア。お前にひとつ、提案したいことがある。ラグドア王国へ戻ってこないか?」
思ってもいなかった提案が飛び出してきた。
オフェリアはビックリしてしまう。
「お前は救国の英雄だ。最高の待遇を与えることを約束しよう」
オフェリアの仕事に、ベルクなりの誠意を見せたくれただろう。
その気持ちは本当にありがたい。
でもオフェリアは首を横に振った。
「申し訳ございませんが、私にはもう新しい居場所があるんです」
隣にいるアディールを見上げる。
そこが、これからのオフェリアの居場所だ。
彼はこれからレシリオン王国へ戻る。
オフェリアもそれについていく。
だからここにはいられない。
「そうか。幸せになれるところを見つけたのだな」
「はい。あの日、レシリオン王国を勧めたくれたベルク様のおかげで素敵な出会いがありました。ありがとうございます。……それから」
オフェリアは宝石のついた耳飾りを手に握った。
それは出立の前夜、ベルクに餞別としてもらったものだ。
ベルクに近づいたオフェリアは、耳飾りを返した。
「これはお返しいたします。もうお金に換えるようなことはないでしょうから」
「そうか」
ベルクが優しい笑みを口元に浮かべた。
「達者でなオフェリア。お前のことは我が子のように思っている。離れていてもこの気持ちは永遠に変わらない。幸せを祈っているぞ」
ベルクは最後に、出立の前夜とまったく同じ言葉をかけてくれた。
オフェリアは深々と頭を下げてから、アディールと一緒にそこを去っていった。
******
一年後。
オフェリアの大天使の加護の力で、レシリオン王国は大きく発展を遂げていた。
魔物による襲撃は皆無。農作物の収穫量は激増。
今では世界の大国と渡り合えるほどに、大きな力をつけている。
国を発展させた立役者であるオフェリアは、『大天使様』と呼ばれ多くの国民に愛されている。
そんな彼女は先日、魔術師団の団長であるアディールと結婚した。
結婚式にはクルーダやティグスをはじめ多くの参加者がいて、盛大にお祝いしてくれた。
アディールの妻となったオフェリアは今、アディールと一緒にエルバーン邸で暮らしている。
彼と暮らす日々は楽しい。毎日が幸せに溢れていた。
「ふふふ」
アディールとオフェリア――夫婦共同の寝室に、楽し気な声が笑い声が響いた。
ベッドの縁に腰をかけているオフェリアから上がったものだ。
「幸せそうだな」
すぐ隣にいるアディールが微笑む。
「はい。アディール様との日々はとっても幸せです」
「それは俺も同意だが……ひとつ忘れているぞ」
「あっ……。えっと……アディール」
先日アディールから、敬称はやめるように、と言われたいたのをすっかり忘れていた。
でもずっと『アディール様』と呼んでいたものだから、なかなか慣れない。
まだまだ時間ががかりそうだ
「それでいい。ご褒美をあげなくてはな」
身を乗り出したアディールが、唇を重ねてきた。
オフェリアの顔が赤くなる。
いきなりそんなことをするのは反則だ。
でもやっぱり嬉しい。
見つめ合った二人は、互いに微笑む。
そしてもう一度、キスを交わした。
これにて完結です!
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それではまた、次回作でお会いしましょう!




