【28話】ルブリオの処遇
「オフェリアは俺のすべてだ。貴様のような男のもとへなど、絶対に返さない」
「は? 誰だよお前は?」
ルブリオは嬉しそうに開いていた口を、きつく結んだ。
瞳を吊り上げて、アディールを睨みつける。
「俺はアディール・エルバーン。レシリオン王国魔術師団の団長をしている」
「はっ! たかが魔術師団の団長ごときが、第一王子であるこの僕に楯突く気かよ! 身の程をわきまえるんだな!」
ルブリオが得意気に鼻を鳴らした。
勝ち誇った表情を浮かべる。
「父上! 今のをお聞きになりましたか! この無礼な男は第一王子であるこの僕を――」
「黙れ。身の程をわきまえるのはお前の方だ」
ベルクの声はなんとも重々しい。
ズシンとお腹に響いた。
「…………へ?」
よほど予想外だったのか、ルブリオは愕然。
気の抜けた声を上げて、ポカンと口を開けていた。
「アディール殿。愚息の無礼を詫びよう。すまなかった」
「はぁ!? なんで父上が謝るのさ! どう考えても謝るのはこの無礼な男の方でしょ!」
「……私はお前を甘く育てすぎたようだ」
ベルクは呆れ顔で首を横に振る。
大きなため息をついた。
「そうだ、お前の処分がつい先ほど決まった。あとで側近に伝えさせようと思ったが……今ここで伝えるのがちょうどいい」
「ちょうどいいって……え、それってどういう意味?」
「勘違いしている頭を冷やすのにちょうどいい――そういう意味だ。心して聞け」
ベルクがルブリオをまっすぐに見た。
射貫くような視線は、すさまじいまでに鋭く尖っている。
「お前は廃嫡の上、罪人として収容所へ送ることに決めた。王族とはいえ国を危険に晒した責任は重大。重い罰がくだることを覚悟せよ」
ルブリオは王位継承権を失っただけでなく、罪人として罰を受けることになった。
しかも重罪人ともなれば、無期限の懲役刑が課せられる可能性が高い。死刑という可能性もある。
「……じょ、冗談ですよね。父上は僕にそんなことしませんよね?」
顔を真っ青にしたルブリオは、ガタガタと体を震わせた。
瞳には涙がたまっている。
「冗談で言っているのではない。私は本気だ」
「そ、そんな」
ルブリオはその場に膝から崩れた。
虚ろな瞳で天井を見上げるその顔は真っ白で、魂が抜け落ちているのかのようだった。
「行こうか」
「……そうですね」
オフェリアにはこれからやらなければならないことがある。
オフェリアとアディールは、部屋の出入り口へ向けて歩きだした。
部屋を出る直前、ルブリオは最後に「オフェリア」と力なく呟いた。
でもそれを聞いても、オフェリアの足がとまることはなかった。




