第18話 結婚
帰途の途中も、俺はずっと沈痛な表情をしていたようだ。
「大将、いつまで落ち込んでるんだよ、しょうがないじゃん」
「そうですよ、ハンには責任がないですよ、あんまり落ち込まないで下さい」
「そうです」
「みんなのいう事は分かってるんだ、だけどどうにも気分が盛り上がらなくてね」
「時間をかけるしかないんでしょうね」
「そう思おうよ、もう少し一人にしてくれ」
みんなの気持ちは本当にありがたいが、どうしても気落ちしてしまう。俺も一端の責任はあるような気がするんだ。
「仕方ないか、少しほっとこう」
「勝ち戦なんだけどなー、なーんか意気が上がらねーな」
俺は鬱々と帰路に就いた。
屋敷に帰ってもこの気分は治らなかった。
「おかえりなさいませ、大勝利おめでとうございます」ユングが満面の笑みで出迎えてくれた。
「ああ、ありがとう」
ユングは俺の表情になにか察したようで、それ以上何も言わなかった。
夕食の時も、言葉は少なかった。だがその時もユングは普通にふるまっていた。
俺が寝室に入った後に、ノックの音がした。
「入れ」
ドアを開けて、ゆっくりとユングが入ってきた。
「こんなことをいうのは、申し訳ないと思っています。しかし、どう考えてもあなたの態度はいつも通りではありません。ここはあなたと私しかいません。心の内を話していただけないでしょうか」
「ユング」
俺はそれ以上黙っていることはできなかった。俺が冬季装備を提案したこと、シュバルツ様が、それを利用し、敵の撃滅を計ったこと、そのため敵全軍一万人が凍死したことをすべて話した。
それを聞いて、ユングはとてもやさしい顔をしていた。
「私は、そんなことは大変なことじゃないです、気にすることはありませんと言って、あなたの心を軽くするとこはできないと思います。それは死んでいった人を冒涜することになり、あなたの意思にも反すると思うからです」
「でも、私があなたの隣に立って支えることで、あなたと一緒に重荷を背負うことができると思います」
「そして一緒に重荷を背負うことで、あなたの重荷を減らし、結果としてあなたの心を少し軽くすることはできると思います」
ユングは俺の眼を強く見て言った。
「私に、いつもあなたの隣にいて、あなたを支えさせて頂くことをお許し頂けませんでしょうか」
俺もユングを見つめ返した。それから跪いて、ユングの手をとった。
「ユング、私と結婚してくれませんか」
「喜んで承知いたしますわ」それは、薔薇の花が咲いたような美しい笑みだった。
翌朝、心配だったのか、リュウ、ヤン、シュタインの3人が、訪ねてきた。
「ハン、大丈夫か」
「え、何が」俺は満面の笑みで答えた。
「あれ、なんか今日は明るくねえか」
「いったい何があったんだ」
ここで俺は、ユングにプロポーズしたことを話した。
「昨日の状態で、どうしたらそうなるんだ」
「まあ色々あったんだよ」
「それで吹っ切れたのか」
「まあ、それもあるんだが」俺はちょっといいよどんだ。
「そのあと、やっちゃった」
「やっちゃった!」シュタイン以外は心の中で突っ込んだと思う。やったんかいと。
「え、何を」
「黙れシュタイン、余計な事いうんじゃない」リュウがシュタインの口を塞いだ。
そこへユングが入ってきた。
「あーら皆さんお揃いでどうしたの。ああ、マイダーリン」
ユングが俺に抱きついてきた。
「そんな訳で吹っ切れた」
全員が呆然としていた。
「よーくわかったよ、おじゃま様」
全員げんなりして顔で帰っていった。
「まー元気になってよかったかな」
「心配して損したぜ」
「なにやったんだ」
「お前は黙っていろ」
「ユング早めに式を行おう、ご両親にも連絡しなければ」
「うれしいわ、すぐ連絡するわ」
2週間後、厳かに結婚式は行われた。通常の結婚式で特筆すべきことはなかったが、シュタインが盛大に酔いつぶれた。




