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書き終わり

 モゾモゾと布団からの物音を聞いて、わたしは時間を確かめる。

 そろそろお昼の一時を過ぎたところで、昼食には遅い時間だろう。

 今朝起きてから夢中で文章を吐き出していたわたしは集中ゆえに空腹を忘れていたのだが、一度気づくとやはりお腹が物足りない。

 そろそろヨハネとデートとでも洒落こもうか。


「今朝は随分と遅起きね。昨夜は寝るのも遅かったし、今は無茶がきかない体なのはわかってはいるけれど」

「そういうミレッタは今日も例のレポートかい? 相変わらずの元気いっぱいだ」

「そういうヨハネだって昨夜は元気いっぱいだったじゃない」

「ふふ……違いない」


 ちょっとした下ネタな会話にお互いに笑みが溢れていた。


 この日わたしがノートパソコンに書き出したのはマリーちゃんとのある日のやり取り。彼女が原因でヨハネと少しケンカしたが、最終的には雨降って地固まると言うヤツだろう。

 今でこそ明確に婚約関係にあるのであの程度は余裕で受け流す範疇だが、まだ恋人同士ですらなかったあの頃はまだ嫉妬に囚われるくらいにわたしはヨハネを信用できていなかった。ヨハネも逆にわたしを好きだと言わなかったので同じような心境だったのだろう。

 マリーちゃんの風邪の看病をするために初めて彼女の部屋を訪ねたあの日の翌日、風呂場で全裸の彼女と鉢合わせをした場面はおかしくてよく覚えていた。

 あの後もマリーちゃんはけっこうお色気なポカをやることが何度かあったので、同じ顔をした友人を見ると時折それを思い出してしまう。

 彼女はあの頃のわたしと同様にヨハネへ片想いをしていた。そんな彼女が時折艶やかに見えたのは、きっと彼女の恋心が滲んでいたからなのだろう。

 彼女への対抗意識は今や無いが、たまにはそれを思い出すくらいの方が刺激になろうさ。


「着替え終わった? だったらお昼ついでにデートしましょうよ」

「良いけれど、どこか行きたい場所でもあるのかい?」

「これと言って決めてはいないんだけれどね。それを含めてブラブラするのもいいじゃない」

「み、ミレッタ?!」


「あらやだ。やっと起きてきたと思ったらお盛んね」


 わたしは着替え終わったヨハネに抱きつくと、そのまま腕を引いて街に繰り出す。

 それを見ていた母ですらわたしの行動に呆れていたが、それを恥じるようでは若さゆえのいちゃつきなど出来ようものか。

 逞しく熱いヨハネの腕は抱きつくだけで胸が張り裂けそうになる。特に今日は初々しさを取り戻しているせいなのか、その気持ちが普段よりも昂ってしまう。

 この場にいないマリーちゃんに対し、一方的に勝ち誇るわたしの笑顔は今日も艶やかだった。

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