刺客
静かな森の中を歩く二人。
静まり返った森の中で、聞こえるのは二人の大地を踏み締める足音だけ。
『早く皆の所へ帰らなきゃね。』
『そうね、沢山の収穫もあったわね。』
二人は早足で仲間の元へ急ぐも、何者かの気配に立ち止まった。
『そこに居るのは誰?』
目を細めて気配のする方を向く海紗。
『出ておいでなさい、不届き者めが!』
魔力で創った小刀を容赦なく投げつける庵。
今の彼女に何時もの優しさは微塵もない。
『ふふ、人間にしては俊敏だ事。』
木の影から現れたのは仮面を付けた魔族の女性であった。
『小娘二人だけなんて、私には物足りないかと思っていたけれどー…訂正しますわ。』
そう言うと、魔力で創られた幾つもの矢が四方から容赦なく二人に襲いかかる。
『くっ…これ位……!』
海紗の肩に一本の矢が掠るもかわした。
『この程度……如き…』
庵は防衛の魔術で防ぎ、反対に跳ね返した。
『そうでなくては、楽しくないですわ。』
愉快だと言わんばかりの仮面の女。
がしかし、次の瞬間予期せぬ事が彼女を襲う。
『何処を見ているんだい?お姉さん?』
『悠ったら、あれを“お姉さん”呼ばわりする訳?有り得ないわ~』
『そっか、ならおばさんかな?』
『そうでしょ!?』
火炎球と氷水球の攻撃魔法が彼女を襲った。
『おの、れ……』
二つの攻撃魔法を背後から直接受け、膝を付く。
『降参したらどうだい?』
『悠の言う通り。そして往生際が悪いおば様~』
嫌みをポツリと一言。
『今の内に,魔法で灯をあげましょう!』
『はいよ!……我らに示せ,光の道標を!!』