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好きなら、言ってよ。  作者: ともり。


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# 第二話 既読のあと

# 第二話 既読のあと


仕事終わりのフロアは、昼間より静かだった。


定時を過ぎると、帰る人と残業する人で空気が分かれる。


にちかはパソコン画面を見つめながら、小さく息を吐いた。


覚えることが多い。


ミスしないようにするだけで精一杯だった。


「にちか、帰んないの?」


隣から声がする。


かずまだった。


「これだけ終わらせます」


「真面目だな〜」


かずまは椅子をくるりと回して、にちかのデスクを覗き込んだ。


近い。


顔が近い。


シャンプーの匂いがする。


「……近いです」


「え、あ、ごめん」


そう言いながらも、あまり離れない。


こういうところだ。


かずまは、人との距離が近い。


でも嫌じゃない。


嫌じゃないどころか、嬉しいと思ってしまう。


それが困る。


 


結局、二人とも一時間ほど残業した。


会社を出る頃には、外はすっかり暗い。


「疲れた〜……」


かずまが大きく伸びをする。


「社会人って毎日これ?」


「まだ研修期間ですよ」


「え、嘘だろ」


にちかは思わず少し笑った。


すると、かずまが嬉しそうな顔をする。


「今日めっちゃ笑うじゃん」


「……別に」


「会社でもそのくらい喋ればいいのに」


それは無理だ。


周りの目があると、どうしても距離を取ってしまう。


変に思われたくない。


かずまと仲が良すぎるって思われたら、困る。


でも、その理由を説明できるほど素直でもない。


駅までの道を並んで歩く。


沈黙があっても、不思議と気まずくない。


むしろ落ち着く。


「にちかってさ」


「……はい」


「LINEとか苦手?」


急な質問に、少しだけ肩が揺れた。


「普通だと思いますけど」


「ほんとに?」


「なんですか」


かずまはスマホを取り出しながら笑う。


「いや、連絡先まだ知らないなって」


「あ……」


確かに。


毎日一緒にいるのに、まだ交換していなかった。


かずまは画面を差し出す。


「交換しよ」


断れるわけがない。


にちかは自分のQRコードを開いた。


読み取る音が鳴る。


それだけなのに、妙に緊張する。


「よし、登録完了」


かずまはすぐにスタンプを送ってきた。


スマホが震える。


その通知だけで、胸が熱くなる。


「……早いですね」


「せっかくだし」


かずまは笑ったあと、少しだけ真面目な顔になった。


「これで、会社以外でも話せる」


その一言に、にちかは返事ができなかった。


 


帰宅後。


ベッドへ倒れ込みながら、スマホを見る。


【今日はありがとな!】


かずまからのLINE。


たったそれだけ。


それだけなのに。


にちかは、画面を見つめたまま動けなくなる。


返信を打つ。


【こちらこそ】


違う気がする。


消す。


【お疲れさまでした】


堅すぎる。


また消す。


何回も打って、消して。


結局。


【お疲れさまです】


それだけ送った。


数秒後。


【かたっ笑】


すぐ返信が来る。


その文字を見ただけで、心臓がうるさくなる。


にちかはスマホを顔へ押し当てながら、小さく目を閉じた。


こんなの。


好きになるに決まってる。


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