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好きなら、言ってよ。  作者: ともり。


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第十七話 少しだけ遠くなる

# 第十七話 少しだけ遠くなる


その日を境に、かずまは少し変わった。


話しかけてはくれる。


笑ってもくれる。


でも。


前みたいに、ぐいぐい距離を詰めてこなくなった。


 


「にちか、これ部長に確認お願い」


「……はい」


業務の会話。


必要なやり取り。


前なら、そのあとにどうでもいい雑談が続いていた。


『今日疲れた〜』


『昼なに食う?』


『帰りコンビニ寄る?』


そんな小さい会話が、最近減っていた。


 


昼休み。


かずまは別部署の社員たちと食べに行っていた。


笑い声が遠くで聞こえる。


にちかはコンビニで買ったパンを一人で食べながら、ぼんやりその方向を見ていた。


当たり前だ。


かずまは、誰とでも仲良くできる。


ずっと自分だけを待ってくれるわけじゃない。


そう理解しているのに。


胸が痛い。


 


スマホが震える。


反射的に画面を見る。


でも、家族からの通知だった。


……何期待してるんだろ。


にちかはスマホを伏せた。


その時。


「にちか、一人?」


顔を上げる。


別部署の女性社員だった。


「あ、はい」


「珍しいね。いつもかずまくんと一緒じゃない?」


その言葉だけで、胸がざわつく。


「……今日は別なので」


「そっか〜。かずまくん、人気だもんね」


悪気のない言葉。


でも、刺さる。


「優しいし、話しやすいし」


「彼女とかいそうだよね〜」


にちかは曖昧に笑った。


その話を聞きたくなかった。


でも、止める権利もない。


 


午後。


資料を取りに給湯室へ向かうと、中から笑い声が聞こえた。


「だからそれ絶対無理だって!」


かずまの声。


覗くつもりなんてなかった。


でも、足が止まる。


女性社員たちと楽しそうに話している。


その輪の中に、自分はいない。


前なら。


かずまは自分を見つけた瞬間、「にちか!」って手を振ってくれた。


でも今日は。


かずまは、こちらに気づかなかった。


胸の奥が、じわっと冷える。


 


その夜。


帰宅したあとも、気持ちは重かった。


ベッドへ座ったまま、スマホを見る。


かずまとのLINE。


前は毎日のように続いていた。


でも最近は、業務連絡みたいな短いやり取りばかりだ。


自分がそうした。


自分が、距離を作った。


なのに。


いざ離れられると、こんなに苦しい。


スマホを握りしめる。


送りたい言葉は、たくさんある。


『今日は一緒に帰りたかった』


『最近、なんか遠い』


『他の人といると嫌だ』


でも。


そんなこと言えるわけがない。


結局。


トーク画面を開いたまま、何も送れなかった。


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