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コンパクトはコンパクトでも、これはあんまりじゃ……③

陸の宣言通り、二階にある一室が三人で寝ても余裕なベッドだったため仲良く川の字で眠りについた。

翌朝、軽く揺すられる振動で目を覚ますと、そこには麗しい笑みを浮かべる美形がこちらを見つめていた。

ビックリして思わずバタバタと羽ばたかせると、ヒョイッと両手で優しく確保された。


「おはよ、茉白。驚かせてごめんね」


漸く彼の声を聞いて昨日の事を思い出した。


『お、おはよう。海』

ドキドキする心臓を抑えつつ、こちらを見つめる濃藍色の髪の美形・海に挨拶を返した。

そして両手で確保されたまま一階へ降りると、すでにご飯の用意がされていた。

キッチンの方から物音が聞こえるので、たぶん陸がいるのだろう。海は昨日と同じ位置にあるタオルの上に私を乗せると、椅子に座った。

目の前にある、スクランブルエッグとベーコンっぽい肉を細かく刻んでスプーンに乗せ始める。

そのうちにキッチンから陸が果実水が入ったデキャンタとグラスのセットを持ってこちらに歩いてきた。


「あ、茉白おはようー」

今日もさっぱりとしたパンツ姿で陸はテーブルにティーセットを置いた。

彼女が席につくと、三人でいただきます、と声を揃え食べ始めた。先ほど海が作っていたスプーンに近づく。

摘まみながら、改めて二人を伺い見た。


こちらの世界に転生した二人は親族であることをおいといたとしても、よく似ていた。前の陸は女性にしては身長も高かったが、この世界基準にしても大きいような気がする。

何気に筋肉が発達しているような……。

青鈍色の艶やかな髪は高い位置に括られ、それがまたキリッとしてカッコいい。切れ長の琥珀色の瞳は、長い睫毛に覆われて、微かな色気があった。


対して、海は、濃藍色の長い髪を緩く結び肩に流している。柔らかな笑みを浮かべるのは前世の時からも変わらずのようで、濃紺の瞳を細めてこちらを見つめている。

体は鍛えているのだろう、前よりも筋肉質になり体格も一回り大きいような気がする。


そして何よりも二人とも、デカイ。


鳥になってるからか、全てが巨大化して見えるのだ。

おそらく人間の姿なら大きいな、と思う程度だが、このこじんまりとした体から見える世界は大きく見えすぎて、ちょっとした恐怖すら感じる。


早く人間に戻りたい……。(これかなり昔の某妖怪アニメの台詞とちょっと被ってるな……)


あらかた食べ終わると、海が新しく果実水を準備して一息いれた。

グッと背もたれに体を預けた陸はチラリと海を見つめる。海は視線に気付いているものの、私のお世話を続けていた。


「さて、茉白。海から私達が転生してきた話は聞いたよね」


会話の主導を海は陸に譲ったようだ。彼はなにも言わない。彼女の問いかけに頷くと改めて聞く。


『あの大木に願って、こちらの神様に転生させて貰ったって聞いたよ』


それに陸は頷くと両手を頭の後ろで組むと大きな溜め息をついた。

「そう。いろいろと協議をした結果、あちらの世界での存在抹消と引き替えに、茉白が連れていかれた世界で共に生きられるようにして貰ったのよ。でも……」

そこで一言区切るとギュッと眉根を寄せる。

「あの神は確かに茉白と同じ世界に転生させてくれたけど、側には居させてくれなかった」

もう一度大きな溜め息をつく。

「私達二人とも同じ年で、幼馴染みになったのよ。で、記憶を取り戻したのは、お互い5歳の初顔合わせでね」

クスリと笑う。

「まあ、衝撃的ではあったけど、私達の最初の一言が貴族らしからぬ、軽い挨拶だったから両親とも卒倒しちゃってね」

『え?そんなに酷い挨拶の仕方だったの?』

貴族と言うワードが聞こえたが、ちょっとスルー。

「久しぶりに会う相方だったから、簡素すぎたのよね、言葉が。前世の記憶を思い出したからといって衝撃で倒れるような事もなくて、スムーズに融合しちゃったみたい」

お互い両親に練習されられていたのにね、と二人は目を合わせてクスクス笑っていた。

『なんて挨拶しちゃったの?』

恐る恐る聞いてみるとあっさりと答える。

「「よっ、元気?」」

その時を再現するかのように、同時にそう言った。

『……』


ご、ご近所挨拶じゃないんだから……。


呆れてしまい目が思わず点になる。

クスクス笑いながら陸は手をヒラヒラと振った。

「まあ、あとから親にこっぴどく叱られたけど。あまりに気が合って初対面から仲が良いから驚いてたわ。オマケに偶然にも私達の母親が双子の姉妹」

へぇ、と感心していると、海に口許へ果物を寄せられ条件反射で口を開けてしまう。甘い桃のような食べ物で水分があったため、嘴の端から果汁かボタボタとこぼれ落ちてしまう。


うわぁ、と驚き、こぼした果汁を啄もうと体に口を寄せていると、海が指先をクルリと回した。

すると、体の回りに水が現れぐるりと私を撫でるとあっという間に果汁が取れてさっぱりキレイになった。


ま、魔法だ!


キラキラとした瞳で海を見ると、ぱちと瞬きをして首を傾げた。

「どうしたの?茉白」

不思議そうに彼は私を見ていると、陸が訝しげに尋ねる。

「……茉白、まさか魔法知らないってことないよね」

『ん?知ってるよ、この世界に魔法が存在するって』

彼女の方を見て、こてんと首を横にする。

それに二人は口元を片手で押さえて「可愛っ!」と悶絶していた。……相変わらずの私への評価が高過ぎる。

持ち直した陸が首を振る。

「違うよ、茉白は魔法を使ったことないの?」

その問いに頷き返す。

『うん、ない。魔法を習う前に拐われちゃって、そのまま現在に至る、かな?』


その回答に二人は揃って眉根を寄せた。

「「どういうこと?」」


ん?なんか二人の顔が険しいぞ……。

取りあえずツガイの件は置いといて、海に会うまでをかいつまんで話をするとますます表情が恐ろしくなっていく。


圧し殺す様に深く息を吐いた海は考える時のいつもの癖で片手を顎に持っていき、人差し指をトントンと動かした。

「……たぶん、茉白を崖から落とされた時に救ってくれた大鷲は、巡回している警備隊の者だと思う。ここの西地区は鳥族が治める区域だから、報告には上がってるとは思う。その後に保護してくれた二人は身元が確かだったから、その大鷲は何も言わず預けたんだと思うよ」


へぇ、あの大きな影の鳥は巡回中の警備隊の獣人だったんた。


「ただ、茉白を拐って始末しようとした背後がちょっと不明でイラつくわね」

陸が苛つき露に腕組みをして吐き捨てる。海は不機嫌に説明を加えた。

「あの区域は森が深く、あまり人が訪れない場所だから、よく遺体放棄や殺人の証拠抹消のためによく使われる穴場だ。依頼されたその男もそれを利用したんだろうね。だからあそこは警備隊の巡回区域に指定されてるんだ」


うわぁ……なんてところに連れてかれたんだ。よっぽど私を始末したかったんだろうな……。

でも、そんなに恨まれるようなことした覚えもないんだけど。アッシュの屋敷にいた時もほぼ外出してなかったし、出たとしても敷地内をうろうろしたくらい。

拐って殺される理由かぁ……。

思い当たるのは二点くらいだけど、どうなんだろう。

先ほど話さなかった内容を二人に告げてみた。


『あー、きっと私がアッシュのツガイなのが許せない人達からの依頼なのかも?』

昨日言いそびれた事を追加情報として話すと、ピッタリと二人は動きを止めた。


「もしかして、南方公爵の子息にツガイが出来た、と言う情報、あれもしかして茉白の事だったの!?」


陸が悲鳴のように声を上げるとガタッと物音を立てて椅子から立ち上がった。


『あれ?四方公爵家に伝えてあるって聞いたけど、陸達知らなかったの?』

「詳しい情報は伏せてあったし、ただツガイが現れた、と言う伝達だったね。もともと普通の婚姻と違って、ツガイの詳しい情報は婚姻式まで伏せられるし、子息のツガイはまだ未成年ってことで余計に情報は規制されていたんだと思うよ」

海はそう言いながら、果実水を飲んでいた。

『え?でも公爵家で晩餐会があって、親族が集まって御披露目されたよ?』

それに海は首を振る。

「それはあくまで身内だけのものだし、口外しないように当主から口止めはされてたと思うよ。まあ、あの南方当主なら魔法契約書を全員にさせてたと思うから、尚更口外出来ないようにしてただろう」

皮肉げに笑った海は、すっと目を細めた。

「茉白」

少しトーンの低くなった海の声にビクリ、とするとチラリと見た彼の顔が満面の笑顔を向けてこちらを見ていた。

しかし、その笑顔は恐ろしく感じるもので、つい後ろに後退りしてしまう程だった。

「ちょっと、説明した情報を省き過ぎじゃないかな?」

それに便乗するように、陸も頷いてこちらに詰め寄る。

「そうよねぇ……。いつも茉白ってば、自身に関することを軽視し過ぎで、私達が必要とする情報を後だしにすること多いよね」

ふふふ……と不気味な笑いを浮かべながら、威圧的に陸が顔を近づける。

「確かにね、さあ、茉白、包み隠さず、全てを詳しく、洩らさず、俺達に話してね」

念押しの様に区切られた単語に圧を加え、更ににっこり、と凄味のある微笑みを浮かべた後方の海、前方の陸も不気味な笑みを継続中だ。

冷や汗を大量にかきながら、しどろもどろに細かく、時折指摘を受けつつ洗いざらい話をさせられた。

話し終えると精神的に疲れはててグッタリとする私に、二人は思考を始めているようだった。

その隙に渇いた喉を潤すため、小皿に入れられた果実水をちびちびと飲む。

もう隠していることも何もないので、少し安心したらお腹が空いてきた様に感じ、目の前のピンク色の葡萄の粒をもぎ取りながら黙々と食べる。

その間も二人は時折視線を合わせ、声も出していないのに会話をしているように頷いたり、首を振ったりしている。


なんだろう、テレパシーみたいなことが出来るのかな?

魔法がある世界だから、そんなことが出来たり?

便利だなぁ……魔法。

そう言えば、電気がない代わりに魔石がそれを補っていて、明かりも水道も前の世界で電気で動いていたものが全てそれになり変わっている。

私も魔力があるから、使い方が分からなくても触るだけで通電?通魔?するようで、特に不自由なく生活が出来ていた。

他にどんなことが出来るんだろうなぁー。

早く魔法を覚えてみたい。

公爵家にいた時はまずこの世界の話から覚えていたし、魔法ももうそろそろ、と言うところで誘拐されるし。

ルシア姉さんのところでは、特に魔法を使って何かしなければならない状況に置かれることもなく、普通に生活出来てたから必要性に駆られなかった。

今はこんな状態だから、魔法云々の前にまず人型になるのが先決なんだよねぇ……。

いや、まあ、コンパクトだから、消費するエネルギーも少なくてエコなんだけど。なんだけどさぁ……。


はぁ、と鳥らしからぬ溜め息をつくと、視線を感じて顔を上げた。どうも知らぬ間に話し合いが終わっていたらしく、先ほどの威圧感はどこへやら、二人は微笑ましそうに私を見つめていた。


『?話しは終わったの?』

こてん、と首を横に倒すと更にニコニコした二人に思わず引いてしまう。

「茉白が百面相をするのが可愛くて、話がそっちのけになりそうだったよ」

海は笑いを含みながらそう言うと、人差し指で私の頭を撫でる。

「そうそう。茉白が可愛く葡萄を食べる姿もスマホがあれば収めたいくらい」

うふ、と口元に手を当てて陸もそう宣った。


ホント、二人は相変わらず私を愛でるのが好きだなぁ……。久しぶりの二人に呆れを通り越しちょっと引く。

なにがそんなに楽しいんだか……。


私の目が半目になっているのに海は可笑しそうに笑うと、表情を改めた。

「腹黒神の言ってた事と統合して何となくだけどあらかた道筋が見えたかな、とは俺達二人は思ってる。そこで聞きたいのは、茉白はツガイについてどう感じてるの?」


そこかー、とは思ったが、二人に隠し事は出来ないな、と素直に思っていることを話す。

『はっきり言えば、分からない、かな。確かにアッシュと会った時なにかに惹かれる様な気持ちになったのも嘘じゃない。でも、よくラノベにあるような運命のツガイの様に強烈に惹かれ、恋に落ちるような感覚はなかったかな?』

少し考えるように上を見て、二人を見る。

『アッシュは婚約が決まってからは特に私を大切にしてくれたし、愛おしくて堪らない、という感情が全面に出てたから結構恥ずかしかったんだけど、だからと言って私も同じ熱量かと言われるとそうでもないような……』

うーん、と唸りながら何とか言葉に表そうと頭を捻る。

『特に海達に会ってから、その気持ちに疑問を持つようになっちゃって。気持ちが揺れているの。もう一生会えないと思っていた、それも一番仲の良い二人に会えたから余計なのかな?アッシュとは婚約してるから、よく考えれば申し訳ないし、罪悪感も出てきたかも……』


自分の心の内をじっくり考えつつ言葉として話していると、なんだか酷い女のような気がしてきた……。

海と陸は幼馴染みだけど、友人以上の関係で。

大切な家族だ。

特に異性の海は恋人なのかと言われると、そこには踏み入れていなかったし、どこか避けていたから深くは考えていなかった。

陸は同性だから信頼できる大親友だし、家族と思ってる。

海は異性だけど、友人以上恋人未満の家族枠。

でも、この世界へ、私のために前世を捨ててまで転生をし姿を現してくれた。

向こうの世界で死んだわけでもない、存在すら消してまで私を追いかけて来てくれた。

それに胸を打たれない人なんていないはずだ。

ましてや私をよく知っている二人だ。

心が揺れないわけがない。

こんな優柔不断になるとは思っても見なかった。


二人から視線を外し、思わず俯いてしまう。

考えれば考えるほど意気消沈して唸ってしまった。

その言葉を聞いて二人が沈黙していることに気がつく。

呆れさせてしまったのだろうかと、恐る恐る視線を上げてみると、何故か二人は嬉しそうに笑っていた。


『???』

何かいろいろ言われるかと思ったが、そんな雰囲気ではなさそうで、どことなく喜んでいるような……。


その沈黙を破ったのは海だ。

「これは予想、と言うか確信に近いんだけど、俺達が転生してきたことで、全てに少しずつ歪みが出てきているんじゃないかと思う。本来なら、俺達の転生は()()()()()()なんだよ」

どこか断言するかの様に海は話す。

『えっ?』

唖然としてその言葉の続きを聞く。

「もともと俺達が転生することはイレギュラーな事なんだ。本来ならこの世界に無かった異分子みたいなもの。恐らく茉白が転移したこの世界線には同じ名を持つ俺達二人は存在していたけれど、転生者としてではなかった。ごく普通のミディルカ、リュイとして生を受けていた筈だった」


この世界での二人の名前を初めて知る。

たぶん、ミディルカが海。リュイが陸。


「それをねじ曲げて十八年前に転生してきた。その間俺達は本来のミディルカ、リュイの性質から大きく外れた行動を取り続けていた。俺達は正常な世界線を壊し、元々の時間軸が遅れて今還り人として現れた茉白は【運命のツガイ】としてアシュレイを感じ取れなかった。それは何故かって?」


私の疑問が顔に出ていたのか、態度に出ていたのか、海はそこて言葉を区切ると陸と顔を見合わせて嬉しそうに笑った。


「「俺達(私達)が強く茉白を愛して求めて続けていたから」」


『!!』

あまりの自信溢れる言葉に愕然とする。

「その為に俺達は少しずつ茉白を迎え入れるための準備も始めていた。君が現れるのも分かっていたしね。この家も土地もその一つだよ」


まさかの事実だ。確かにこの家は前の世界の建造物に似通っていたし、どこか懐かしさを感じる佇まいだった。


「あの腹黒神は俺達を異分子だと常々言ってた。現れる還り人の運命をねじ曲げる存在だと。だから転生をなかなか了承してくれなかったんだ。正常な世界線を壊してしまうからと。まあ実際壊しまくってしまったから腹黒神の言う通りになったんだけどね」

言葉を区切ると海と陸は二人で私を両手で目線の高さまで持ち上げた。

「でも、だから何?て感じよ。私達は茉白のために在るのよ。誰よりも何よりもあなたを慈しみ愛するのは私達二人にとって当然のこと」

ふふ、と不敵に陸は笑う。

「探し当てるまでに時間が掛かってしまったのは悔しいけど、海が必ずこの西地区に現れる筈だって言い切るから待つことにしたの。ねじ曲げたせいで、まさか十八年も待つとは思いもしなかったけど」


『え?まさか誘拐されるのも私の未来に起こることだったの?』


そこには首を横に振る海。

「いいや、どんな形で現れるかまでは分からなかった。何となくの予感だったよ。しつこく腹黒神に茉白が近くに現れたら分かるようにして欲しい、と約束させたからね」


……また、その『約束』も穏便な感じじゃないんだろうなぁ……。


「はぁ?海!あんた私にその事隠してたの!?」

突然立ち上がったため、二人で囲っていた両手のバランスが崩れ海の腕の方に転がっていく。サッと上手いことキャッチしてくれた海に感謝しつつ、陸に抗議の声を上げる。


『ちょっと陸!急に立たないでよ!危うく下に落ちる所だったじゃない』


チーッと怒りの鳥声を上げつつ、海の手の中から注意をする。

あっ、と言う顔で陸が平謝りする。

「ご、ごめんね、茉白」

それに海は苦笑しつつ、陸を呆れた目で見て告げる。

「それを言ったら探しに出ちゃうだろ、陸は」

「当たり前でしょ!」

間髪いれずに即答する陸。

「だからだよ。そんな曖昧な情報で闇雲に探しても無駄な労力を消費するだけだよ。確実な証拠を固めてから迎えに行った方がそれまでにいろいろ準備できる」

なんとも海らしい、建設的な回答だ。

「西地区に茉白が現れた、という神の知らせで手懸かりを探していたら意外なところに気配があったから、ちょっと半信半疑になって、小鳥を使った手段で探っていたんだよ」


ああ……と思う。

確かに探していた人物が私達の世界で言う売春を行う地域にいたから、まさかと思うよねぇ。

元の世界の売春と違って、この世界の売春は健全な華人(娼婦)の世界なんだけどね。

もしかしてあの変わった飴が届き出した頃に、海がもしかしたら訪れていたのかもしれない。


「ある程度目星は付けていたんだけど、気配がなかなか掴めなくて、もしかしたら獣人として不完全だったのかな?と思って、獣化を促す魔法薬を混ぜた飴を何度か飛ばしたんだ」

「海、もし探し出す前に茉白が大変な状態になったり、大怪我でも負うような事になってたらどうするのよ」

問い詰める陸に海は首を振る。

「いや、それはないよ。獣化する飴も正常に働きかける作用しかないし、成体には効果の無い普通の飴だ。小さな子供に食べさせるポピュラーな栄養剤なような物だから害はない。それに俺達がたどり着く前にそんなことが起きないようにこれも神に頼んだ」


これまた用意周到な。

あの飴、結構ピリピリしたんだけど。痛みもあったし。あれが普通なの?獣人、どれだけ頑丈なのよ。

それに大怪我かぁ……。あ、大怪我したわよ、崖から突き落とされたとき!


『怪我したわよ!海。崖から落とされた時、全身打撲傷だったし』


抗議の声をまた上げる。

それに海はうん?と首を傾げる。

「それは予想外だったと、神は言ってたよ。それについては俺も業腹だったけど、不測の事態だったからすぐに発見されるように救助してくれる人を誘導したらしい」


なんと!あれは神が介入して、私を助けてくれた大鷲やルシア姉さん達をあそこまで導いてくれたんだ……。


「神曰く、世界は生きているから、神にも想定できないことはいくらでもあるんだってさ。全てにおいて神も全能ではないってさ。いくら道筋を立てたとしても、生きている者達が世界を作っていくのだから未知の時間軸は無数に広がっているんだと」


それにしても……。

『海、神様とやけに仲良しね』

衝撃的な告白あれど、いやに神様と話している海に違和感を覚える。

しかし海はなんとも無いようにさらっと宣う。

「ああ、取りあえず必要な情報が欲しいから、本来ミディルカの役目でもなかった障気対策等々をやってあげてるんだから、代わりにいろいろ教えて、と頼んだんだよ」


そんな、簡単に言うけど……相手は神様なんでしょ。


呆れて海を見ると悪気もなさそうな顔でそう言った。

陸も何となく唖然としてる様子だ。

どうやら陸は海がそこまで神と通じているとは考えてなかったようだ。


「だから、茉白を見つけられたし、今一緒にいられる」


なるほど、と思うが、まさか世界線を壊してまで越えてくるとは思わなかった。

恋愛感情が希薄かと思ったけれど、そんな事情があると分かると、ツガイに対する思いが低レベルなのも頷けた。

かと言って、もうアッシュとは婚約している。

どんなに二人が想ってくれても、どうにもならない気がした。


『二人がどれ程の想いで私の前に現れたのか分かったわ。でも、一緒にはいられない、だってアッシュとは婚約が結ばれているし、もともとの世界線では私達はツガイなんでしょ?』


それに海はニヤリと笑った。

「でもね、茉白、それは壊される前の世界線の話。今は壊されたぐちゃぐちゃな世界線だよ。それに、婚約の時点でならまだ解消が可能だ。ましてや茉白は未成年ってことで情報を正式に公開していない。だからまだ変更が効く。それにこの崩された世界線に転生した俺達がいて、そして障気が現れる事になった。それに異世界からの()()()()が登場する」

どこか独り納得した海は改めて話す。

「初め腹黒神から話を聞いた時、どこか納得できない部分があって腑に落ちない感じがしてたけど、茉白の話を聞いてなるほどな、って分かった」

横で陸はああ、としたり顔をしていた。

「そういうこと。私達が転生しなければ、もともと障気は出る筈もなかった。でもこの時期に障気が現れることになって、異世界からそれに対応出来る人をわざわざ転移させることにした。だから数十年後に現れる筈だった還り人二人が今登場するのね」

二人は頷きつつ納得しているようだ。

「そもそも還り人は異世界から現れる。ましてや希少性の高い還り人は獣人のツガイである確率が高いし、その二人はより能力が高くなるというオプション付き。そして今までであれば、還り人が現れるのは短くて数十年に一人、または数百年に一人の確率。還り人じゃなくてもツガイが現れるのはあるにはあるが、奇跡に等しい。しかし今回は異世界人、還り人が一人ではなく三人現れることになる」

海は指を三本立てる。


そのうちの一人が私。

残りの二人は……。巫女と戦士。


驚愕して海を見ると彼は頷く。

「本来の世界線が壊れてしまったからには、茉白がアシュレイのツガイである確率が下がる」

『でも!アッシュは私をツガイと認識しているのよ!?』

それに海は否定するように首を振った。

「もし、それが覆ってしまったら?」

『えっ?』

陸が私の頭を撫でて問いかけるように言った。

「壊された世界線でなら覆る可能性は高いでしょ?」


まさか!と愕然としてしまう。


『有り得ないことが立て続けに起きてるから信じなれないんだけど、こんな展開を起こしたのはわざとなの?』


「いいや。異世界から巫女と戦士なんてラノベ展開っぽいけど、世界線が崩れたせいでもともと数十年後に起きる出来事が前倒しになってるし。アシュレイにツガイが現れるのはこの時期でと神が()()用意していた。でもそこを壊した俺達が介入したせいで、ぐちゃぐちゃになった」

「話を聞くにたぶん、茉白が本来のアシュレイのツガイだったのよね。でも、私達が転生してくることで、今現在この世界に繋ぎ止められていない茉白にバグが起きた」

()()()()()()()()()()?』

二人は頷く。


二人が来たことで私にバグが起きたのは何となく分かった。

でも繋ぎ止められていないって?


「さっき分かったんだけど、茉白、まだ魔力訓練していないだろ?」

それはしていないので頷く。

「それが幸か不幸か、何故かまだ行われていない。それがバグ」


ん?どういうことだ??

魔力訓練がどうしてバグになるんだろう??


「茉白、アシュレイの家で家庭教師付けてもらってる?」

『うん』

「その中に魔力訓練をしてくれる教師は?」


それにあれ?っと思う。

魔力があるのは神殿で確認済みだから、魔力を使えることは分かってた筈だった。


『いなかったかも……』


始めは歴史や、この国の事についてのマナーなど基本的な物事を教えてくれる教師だけだった。


「普通なら魔力があると分かっている時点で、魔力訓練をしてくれる専門の教師を並行して同時に付けるんだよ」

『えっ?』


まさか意図的に外されていたの?

不安が表情に出ていたのか、海は宥めるように私を撫でた。


「恐らくそれがバグなんだよ。抜け目無い南方閣下ならちゃんと始めから専門の教師を付けてた筈なんだ。でも、何故かつけられていなかった。本当なら還り人は魔力をこの世界の誰かと交換しあって理解、定着させることで初めてこの世界の住人になれるんだと思う」


その事実に驚きを隠せない。もうこの世界の食べ物も、生活にも慣れてきたからてっきり馴染んでいるものと思ってた。

それがまさかの魔力を交換、理解、定着が出来ていないから、ツガイ認識が曖昧だったとは!

まさかの魔力が落とし穴だったなんて!

異分子である二人が介入したことで、世界線が壊れ、本来アッシュのツガイだったのに認識が出来なくなっていた。

相手が認識していて、同じ獣人であるこちらが分からないなんて有り得ないことなのかもしれない。

そもそも私はツガイの概念がない世界に住んでいたし、当然疑問に思うこともなかったからそれも要因の一つだろう。


「そこを修正するかのように、本来数十年後に現れる二人の還り人が転移してくる。これもバグの一つだと思うよ。その二人のうちの一人がアシュレイのツガイになる可能性もなきにしもあらずだ」

『えっ!二人とも女性なの?』

それに海は分からない、と言う。

「二人とも女性かもしれないし、巫女が(かんなぎ)かもしれないし、戦士が女戦士かもしれない。そこはあと数日後に分かると思うよ」


は?今かなり重要なこと言ったよね?

私の他の還り人の性別は置いといて、数日後!?


『ちょっ、ちょっと!!数日後って本当なの!?』


自分の事が吹き飛ぶかのような衝撃的事実を海はサラッと言った。

なに、二人とも平然としてるの!


「うん。ちょっと茉白を探すのに手間取っちゃったのと、再会出来た嬉しさが想像以上に上回ったせいで、Xdayが間近に迫って来てたのを今思い出した、かな?」

ハハッとあまりに軽く笑い飛ばしたため、あんぐりと口を開けて唖然としてしまった。


そういえばこの二人、巫女と戦士が現れても適当にあしらうみたいなこと言ってたよね!

本当に気にも留めてなかった!

情報過多と驚きの連続でどうにかなりそうだ。

私には情報の後出しについて説教するくせに、この二人こそ後出しが多すぎるんじゃない!?

それも新事実が多くて、軽く現実逃避したくなってきた。

結構深刻なこと話していた筈が、二人の相変わらずなところに気が抜けてしまう。

重要な雰囲気を醸し出しては、自分のペースに持っていってしまう。

ああ、もうっ!


鳥らしくない大きな溜め息を落とすと、海と陸を見る。


『バグが起きたのと世界線が壊れたために、もしかしたら、アッシュのツガイが成り代わることが有り得るってこと?』

二人は顔を見合わせ、こちらに向くと頷いた。

陸がでも……と言う。

「成り代わることがあるかもしれないし、二人ともアシュレイのツガイとならないかもしれない。茉白のまま、と言うことも有り得る」


ええっ、なにその元の木阿弥みたいなこと!

不安定なまま、感情をもて余せってこと!?


ショックを受けたかのように硬直する私に、陸は慌ててフォローするかのように告げる。

「それはあくまでも確率で、茉白が彼に対しツガイとしての感覚が鈍いってことは、世界線が壊れている証拠だし、後に来る還り人がなる可能性も有り得るってこと」

『でもそれは私が魔力訓練していないから起こり得る確率でしょ?彼女達が来る前に訓練を始めたら、私はアッシュのツガイってことを認識出来るってことだよね?』

「それはそうなんだろうけど……」

陸はちょっと不貞腐れた感じで頬を膨らます。


いや、そんな拗ねられても……。


おいおい、と陸に呆れていると、海が私の顎の下をくすぐった。ん?と海を見つめるとどこか切望するようにこちらを見ていた。


「茉白はアシュレイのツガイでいたいの?」

『え?』

少し苦しそうに濃紺の瞳を潤ませながら尋ねてきた。

「茉白には出来るなら、他の還り人が現れてから様子を見て、そこから改めて考えて欲しい。もしアシュレイがその二人のうち一人にでもツガイ反応を見せたら、彼を諦めて俺を選んで欲しい」

そんな彼に対し驚きに目を見開く。


海がこんなに感情をのせて訴えてきたことは今まで一度もなかった。それもストレートに自分を選んで欲しいなんて。

庇護はしてくれるけど、決して恋人にして欲しいとは一言も言わなかった。距離感は確かに近かったけれど、感情を込めて言うことはなかった。

冗談半分でじゃれ付いて言うことはあった。

でもそれは本気ではないことが分かっていたから流せていた。

でも、今の言葉は違う。本気だ。

長い付き合いがあったからこそ分かる。


声が震えて言葉にならない。

それを静かに陸は傍観してる。いつも何か言うのに。

真剣なのを彼女は分かっているから、余計なことを言わない。

それが自分への緊張感を煽る形になる。


「お願いだ、茉白。俺にもチャンスをくれ」


私を囲う両手が少し震えている。いつもと違う雰囲気の海が緊張で震えているのにまた驚愕する。

いつもどこか飄々としている彼が……。

心を切り開く様な想いと切ない声音に胸が痛む。

もともとはアッシュのツガイなのは確かなのだから、魔力訓練を始めたいと言えば、海は気持ちを押し殺し二人は叶えてくれると思う。

それで私が確実にアッシュをツガイとして認識すると今の迷いも消えてなくなるだろう。

でも、二人が何を犠牲にしてまで転生してきてくれたのかを知った今、それを思うと踏みとどまってしまう。

彼らに出会わなければ、と酷いことを思ってしまう。

私の意志がはっきりしていれば。

魔法に興味があったのだから、自分から魔法の勉強がしたいと申し出ていれば……。

今さらたらればを考えていても仕方がないのは分かっている。

でも、海の気持ちを聞いてしまった今は思い切れない。

ツガイへの概念が曖昧な今だからこそ迷いが出る。

アッシュに対し申し訳ない気持ちもある。

海にこんな表情をさせる自分も情けない。

どちらかを手に取れば良いのか迷っている時点で、アッシュを裏切っている。

知り合った期間は短いのに、深く私を大切に想ってくれている。

それを言うなら、海の方は決して一朝一夕のものではない。これまで長く付き合っていった中で育てられた恋心だと思う。そんななか私を慮り付かず離れずを保ちながら、大切にしてくれたし見守ってくれていた。


迷い戸惑う私に、傍観していた陸が名前を呼んだ。

「茉白」

柔らかく落ち着かせるような声音で陸は言う。

「私はやっぱり海の兄妹だから彼の肩を持ちたい。ここまで一緒に来た唯一の兄妹だからね。もし茉白に迷いがあるなら、これから現れる還り人と茉白の三人のなかで、アシュレイが誰をツガイとして選ぶのか、それを待ってみても遅くはないんじゃないかな。本当にアシュレイが茉白をツガイとして強く認識しているならば、それはそれで運命なんだ。海も諦めるよ。でも、一パーセントでもいい、海にも機会があるなら与えてやってくれない?私は海が茉白をどれだけ深く想っているかを知っているから、チャンスがあるのなら叶えてやりたい」

そう言い終えると静かに微笑んだ。

海はそんな陸に感謝するように視線を向けた。

そして私に視線を戻す。


「茉白。今は魔力があっても操れない状態だし、獣体のままだから不安はたくさんあると思う。きっと魔力訓練を始めたら、人から獣体への変化もスムーズに行えるかと思う。それを待ってくれと言う俺達は自分本位で酷い奴らだと分かってる。でも新たな還り人が来るまで俺達が茉白を必ず守る。結果、俺を選ばなかったとしても、俺達は友人だ。気持ちを整理するのに時間は掛かるだろうけど、絶対に俺はまた友人に戻る。茉白との縁はどんな形になろうとも絶対に切りたくない」


強い意思でそう告げる海はとても眩しかった。

そう言い切れる彼の心の強さが羨ましい。

マイペースなところのある彼だが、こうと決めたら突き進む。そこのところは陸と似ていた。

そんな二人の視線を受けつつも、迷いがまだ当然残ってはいる。あと数日のことだ、訪れることになる二人を待ってみても遅くはない筈だ。

そして自分達がどんな選択をして考えて決断をするのか。

それが例え苦しい選択になったとしても……。


『分かったわ。新たな還り人が来るまで魔力訓練もしない。鳥のままっでいうのも不安だけど、よろしくね』


そう言うと、二人は背後に花を散らす幻想が見える程の眩しい満面な笑みを浮かべた。そして二人は私を持ち上げて喜んだ。

「ありがとう!茉白!必ず守るよ!ちゃんと新たな還り人が現れたら知らせるし、アシュレイにも会わせる。それまでは、何か危険なことがあると困るから、この家に居て貰うことになるけど、そこはごめん」

テンション高く海は話していたが、この家に居て貰うことになるのを話すと申し訳なさそうに謝った。

今までにない海の喜色満面な表情と、それを微笑ましく見る陸に、ペコリと挨拶をする。

『こちらこそ、しばらくお世話になります』

うんうんと頷く陸に海も了承する。

「気にしないで茉白。ここは話した通り、海と私であなたが見つかったら一緒に住もうと準備をしていた家だから、気軽に過ごして!」


おおぅ、やっぱりここは海だけて住むには大きいと思っていたら、陸も含め三人で過ごす用の家だったのか~。

それにしても立派な家だな……。

二人とも貴族っぽいし、裕福そうだ。

前の御堂家を彷彿とさせるものもあるから、ここで過ごしつつ、これからの事を考えないとね……。

情報も整理したいし……。


二人はいそいそとテーブルの上を片付けたり、部屋の整理等を始めそれぞれに動く。

テーブルのタオルの上に戻された私は、ぐったりと寝転がる。

それを見た陸が声をかけてきた。

「疲れちゃったのね。寝てて良いわよ、茉白」

はーい、と片翼をあげて答えてハッと気づく。

ガバッと起き上がると、キッチンで片付けをしていた海が戻ってくる。

『海!お願いがあるんだけど』

「何?どうしたの」

タオルから下りて、テーブルの上をカチャカチャと鳴らしながら歩く。

私の前に来た海は屈んで視線を合わせる。

『ここに来る前にいた華人の館のルシア姉さんに手紙を送りたいの。絶対に心配される。たぶんまだ一日しか経っていないから私が居なくなったのにはまだ気付かれていないと思うの。明日が出勤だから、その前に手紙が届く様にして欲しいんだけど、できる?』

翼をあっちこっちにやりながらバッサバッサと説明をすると、それを微笑ましそうに眺める海。

ホンワカしているので話を聞いていたのか?と目の前で翼を左右に振ってみると、クスクス笑いだした。

「はぁ……可愛い、茉白。分かった、手紙ね。すぐに送れるよ」

なんか鑑賞物になった感じでちょっとムッとしたが、手紙を送ってくれるのでそこは収める。

『じゃあ、紙とペンを貸して!』

そこで海は、ん?となりフフフとまた含み笑いをした。

「茉白、いくらなんでもその姿では手紙は書けないよ。俺が代筆するから内容教えてね」

ハッ、として自分の姿を改めて見てショックを受ける。


確かに鳥ではペンを持つことすら難しいわぁ……。


チーン、となっていると、海は早速ペンと紙を準備し、テーブルに準備をしてくれた。

「で、内容はどう書くの?」

取りあえず、突然知り合いにところに遊びに行ってしまったことを謝る内容から、事情がありしばらくここで過ごすので心配はいらないこと。仕事を休むことになり申し訳なく思っていること。クビになるのは仕方がないと思っている事。でも用事が終われば改めて会いに行くので、その時は会ってくださいと言うような内容をお願いした。


さすがに無断欠勤になるから、クビだよなぁ……とショックを受けていると、海が心配いらない、自分が養うから安心して、とか言い出したり、どこかに行っていた陸も加わって、そうだそうだと同意をして話しがまとまらなくなったところで話を打ち切る。それから手紙を伝達魔法と呼ばれるもので送ってもらった。


アッシュにも連絡を取ろうとしたが、そこは海が伝えてくれると言うことで任せることにした。

話せば長くなるような内容だったし、要約するのが難しく、うんうん唸っていたら海が請け負ってくれたのだ。

1ヶ月近く行方不明だったから、物凄く心配をかけているのは分かっていたし、申し訳なさで余計に身が縮む思いだった。ルシア姉さんを信用していない訳ではないし、言い訳になってしまうのだが、あの生活に馴れるのにいっぱいいっぱいだったのもある。連絡しようと勢いだけは付けるが自分の特殊性を思うとどうしてもグチグチと考えてしまい、気が付けば1ヶ月近くになっていたのが現状だった。

気持ち的に逃げもちょっと入っていたので、臆病者の私は海に任せてしまい狡い選択をしてしまった。


アッシュとルシア姉さんからは何と返事が返ってくるのか戦々恐々だが、こればかりは罪人のように甘んじて待つしかない。


このコンパクトな姿では、如何とも仕様がない。

また鳥らしからぬ大きな溜め息をつくと、側で見ていた陸が慰めるように優しく撫でてくれたのだった。

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