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【完結】二番煎じでも三番煎じでもいいから、スローライフがしたい!  作者: きちのん


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49 お前は致命的なミスを犯している

 マナシエがエーシャの店に行くのに同行する事にした。

 ダメ元な感じもするが、盗賊討伐に力を貸してもらおうと、一応声を掛けておこう。

 エーシャは本業が商人なので、変なところでシビアなんだよな。

 自分に利益が無いと普通に断るタイプだが、最後の手段として、マナシエを利用させてもらおうと思う。

 彼女はマナシエが大のお気に入りなので、早々断れないだろう……。


「クラタんが悪だくみをしてる顔してるにゃ!」


 ミユさんや、俺の事を凄く観察してるね。

 ちょっと怖いぞ。


「なんと! ソウジ様に限って、そのようなあくどい事をする訳がないでしょう!」


 フィルデの信頼が時々息苦しくなる。

 俺はそんな聖人君子ではないぞ……。


「そんな事ないにゃ! クラタんが悪い事を考えてるにゃ!」


「ソウジ様に失礼です! 謝ってください!」


「嫌にゃ! アタシは事実を述べたまでにゃ!」


「ソウジ様が悪人ですと! それこそ無礼ですよ!!」


 ついには二人が掴み合いになってしまった。

 そんな彼女達を見ても、最近のマナシエは反応しない。

 最初の頃は、俺とリグミナが口喧嘩するだけで止めに入ったのだが、こんな光景はもう慣れたのだろう。

 少し寂しいけど、これも成長の一つだな。


「クラタんは悪人にゃ!」


「私はどんな犯罪に手を染めていても、ソウジ様の事を信じます!」


 それはそうと、道の往来で不穏な言い争いをしないでほしいなあ。

 通行人がみんな見てるんですけど。

 どうでもいいけど、遂には俺が悪人に認定されてるし……。

 とうとうマナシエまでもが俺の事を不安気に見つめる始末。


「あの……クラタさんって、悪い人なのですか?」


「マナシエ、あのお姉さん達の言う事を真に受けないようにな」


 まったく、朝から疲れるお嬢さん達だ。


 そんなこんなで、ちょっとしたトラブルを交えつつエーシャの店へと向かう。

 途中、フィルデが尋ねてきた。


「リグミナ様は普段から、あまり外に出られないのですか?」


「ああ、なんか薬を作るのが楽しいんだとさ」


「アタシ、リグミナの薬で助けられたにゃ!」


 そういえば、ミユにリグミナの回復薬を使った事で、この子とも縁が繋がったような物だな。

 そこはリグミナに感謝しよう。

 前に聞いた話だが、リグミナは元の世界では薬関係の勉強をしていたとか言っていた気がする。

 なんでも、古い文献を調べたりとかして、今では忘れられた技法で薬を作るのが趣味だとか……。

 見た目は若い娘だけど、あいつも随分と渋い趣味してるよな。

 感心していると、またもやマナシエが不安そうに俺を見つめる。


「どうした? 何か気になる事でもあるのか?」


「い、いえ……リグミナさんって、薬師の資格を持っているのかなって……」


 その言葉で、俺とフィルデが思わず無言になる。

 そうだよな。薬の生産販売って、流石に異世界でも資格が必要だよな。


「みんなどうしたにゃ? 何かいけない事でもあるにゃ?」


 ミユは訳が分からないって顔をしてるが、これはとても大変な事のような気がする。


 ……うん、聞かなかった事にしよう。

 それがいい。


「フィルデも、今の話は聞かなかった事にしておけ」


「え!? それでは……」


「取り敢えず、帰ったら家族会議だな」


 外傷用の回復薬だからあまり問題にならないと思うが、これが状態異常回復の内服薬だったら洒落にならない。


 そうこうしているうちに、エーシャの店に到着。



「先生、おはようございます!」


「マナシエちゃん、おはようございます……って、おとうさん達までどうされたのですか?」


「朝から悪いんだが、ちょっと相談事があってな」


「そうでしたか。少し待っててくださいね。今日の予定を片づけてしまいますので。マナシエちゃん、今日はここの作業をお願いしますね」


「分かりました!」


 マナシエがエーシャから書類のような物を受け取り、店内備え付けの机に向かう。

 何か課題でも出されているのだろうか。

 その一方、ミユとフィルデは物珍しそうに店内の魔道具を見ている。

 エーシャはマナシエに何か説明しているので、ちょっと失礼して覗いてみた。


「今回はここの背景とモブの作画をお願いしますね。マナシエちゃんのセンスで構わないですから」


「はい。それで、ここの集中線は軽くでいいですよね? このキャラの髪はベタ塗りですか?」


 なんか普通にマンガを描いてるんですけど。

 それにスクリーントーンまで貼ってるんですけど。


「……あのさあ、何やってるんだ?」


「何って、にゃんにゃんキュートの新作マンガですよ。大きなお友達は、絵本よりマンガの方がウケが良いのです」


 取り敢えず、異世界でマンガ云々はどうなのかっていう話は、ひとまず置いておこう。


「いやいやいや、なんで原稿をマナシエに手伝わせてるのかなぁ!?」


「なんでって、マナシエちゃんが普通に才能あるからじゃないですか。一を聞いて十を知るを地で行く子ですよ? その才能を活かさないでどうするんですか!?」


 あ、こいつ言葉は通じるけど話が通じないやつだ。


「クラタさん、わたし今凄く充実しているんです! 将来は北の大陸で作家を目指したいです!」


 う……! そんなキラキラした目で俺を見ないでくれ!

 というか、学府で勉強するのが夢じゃなかったのか?


「おとうさん、子供の夢を応援するのが保護者としての義務じゃないのですか?」


 くそう、正論だけに言い返せない。


「ほら、マナシエちゃんはこんなに絵が上手いのですよ」


「あまり誉めないでください。わたしなんて、先生の足元にも及びません」


 すっかり師弟の関係になってるし。

 確かに、マナシエは絵の才能がある。というか、なんでも卒なくこなす子だよな。

 器用貧乏とかそういうレベルじゃない。恐らく天才だ。


「ほらほら~、おとうさんもさっさと認めてくださいよう。マナシエちゃんは、将来きっと私の専属アシス……じゃなくて作家になるんですから」


 こいつ、普通にアシスタントって言い掛けたよな。

 だけど、ここはマナシエの自主性に任せるのも、保護者としての役割かもしれない。



「分かった。だが、これだけは言わせてもらおう」


「な、なんですか……?」


「エーシャ、お前は致命的なミスを犯している」


「この私が致命的なミスですって!? 一体なんの根拠でそんな事を言うのですか!?」


「ここのシーンだよ。このキャラが主人公の右にいるのに、次のコマでは左にいるじゃないか。瞬間移動して左右入れ替わったのか?」


「ああぁ! なんて事ですか!? これ致命的なミスじゃないですか!? って、もう今から描き直す時間はないですよ!!」


 アナログ原稿の不便なところだな。

 これがデジタルならササっと修正できるのだろうけど。


「あああああああああ! どうしましょう!! どうしましょう!!」


「先生、落ち着いてください! わたしが描き直します!!」


「駄目です! マナシエちゃんに任せられませんよ!」


「わたしでは実力不足なのは分かっています! だけど、締め切り厳守じゃないですか!!」


「そうじゃないんです! マナシエちゃんの作画が上手くて私が嫉妬しちゃうんです!!」


 こいつ、やっぱポンコツだろう。

 流石に呆れ果てていると、いつの間にかミユが隣で原稿を手に取って読んでいた。

 そのミユが妙案が浮かんだのだろうか、元気よく手を上げる。


「アタシ、いい事を思いついたにゃ! ここのコマとコマの隙間に『瞬間移動しました』って説明を入れるにゃ!」


 ミユさんや、流石にそれは読者を馬鹿にしすぎじゃないかな。


「流石はミユ殿ですね! 素晴らしい妙案です!」


 フィルデも諸手を挙げて賛成するんじゃありませんよ。


「ふむ……それも一理ありですね。分かりました。こうなったら背に腹は代えられません。その案でいきましょう。マナシエちゃん、説明文をお願いします」


「分かりました先生!」


 君達、本当にそれでいいんですかね……。

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