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【完結】二番煎じでも三番煎じでもいいから、スローライフがしたい!  作者: きちのん


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37 一人ぐらい増えたって誤差ですよね!?

 悔しがるガイラさんを落ち着かせ、俺達はギルマスに報告へ向かった。


「おお! クラタ殿、ミユ殿! よく戻ってくれた!!」


 早速ギルマスのニドアールは両手を広げ、俺達の無事を心から喜んでくれている。

 しかし、中央のギルマスのサンドアールと同じ顔なので、内心複雑だ。

 それはミユも同じみたいで、心なしか猫耳に元気が無い。


 一方、ルネイアナは普通に驚いている。

 そりゃ、ギルマスがサンドアールの兄だとは教えてなかったしな。


「え? え? えぇ? なんでここにギルマスがいるの!?」


「うむ? 私がギルマスだが……? 私がここにいたら不都合があるのかね?」


 二人して首をかしげてるのが面白いから、このままにしておこうと思ったが、話が進まないので種明かしをしておく。



「もう、ビックリしたなあ、中央の町のギルマスのお兄さんだったのね……」


「ははは、弟の方が出世してしまってな。お恥ずかしい限りだ」


 サンドアールは領主の座を狙う野心家でもあったが、こちらはほのぼのとしたやり取りである。

 兄弟で顔は似ていても、性格は随分と違うらしいな。


「それはそうと、ギルマスって、お兄さんがいるよな?」


「クラタ殿、何故それを知っている!?」


 弟さんとまったく同じ反応で、なんか笑ってしまった。

 雑談は程々にして、ドラゴンを追い払ったという報告の他、ルネイアナの着任の挨拶を済ます。



「いやあ、本当にお疲れ様だった。まさか、我が町の冒険者がドラゴンを追い払うなんて、鼻が高い!」


 本当は、そのドラゴンをこの町に連れてきているのだが……。

 そんな事を言える訳が無いので、笑って誤魔化す。

 ミユには黙っているようにと、アイコンタクトで伝えておく。

 自由奔放だけど、こういう線引きはできる子なのだ。


「ただ、残念な事にドラゴンが去り際に領主の館を襲撃したのだけどな」


 これは本当の事である。

 一応、俺達の事を思ってガイラさんがやったのだが、流石にあれはやり過ぎだ。


「領主の館が……!? 父は無事なのですか!?」


 おっと、すっかり忘れていた。

 アイニは領主の娘なのである。そりゃ実家が襲われたと聞いたら心配するよな。


「えっとな、なんか大丈夫だったみたいだぞ。最後にドラゴンが嫌がらせをして行ったらしい」


 ガイラさんが金銭を巻き上げたなんて、口が裂けても言えない。


「心配ないにゃ! ドラゴンは器用だったので、アイニのお父さんとお姉さんには怪我をさせなかったにゃ!!」


 ミユさんや、そのフォローはどうかと思うぞ。

 それに姉の話が出た途端、アイニの眉間にしわが寄っているぞ。


「そ、そうでしたか。だったら、まずは安心ですね……」


 取り敢えず安堵しているアイニに、ルネイアナが興味深そうに顔を寄せた。



「ねえ、あなたアイニちゃんだっけ? 実家と上手くいってないの?」


 ルネイアナは何を考えているんだ!?

 いきなり他人のプライベートに土足で踏み込むなよ!!

 おかげでアイニが顔面蒼白になり、ギルマスも狼狽してしまっている。


「すまない、アイニ。こいつはデリカシーが無いやつだから、勘弁してやってくれ。決して悪意がある訳では無いんだ」


「なによう! ソウ君だって、大概じゃないのよう!!」


「俺とお前を一緒にするな!!」


 ルネイアナが掴みかかってきたので押し返すが、こいつも中々しぶとい。

 突き放すのに難儀していると、アイニが上目遣いで尋ねてきた。


「あのう……」


「ん? 何かな? アイニ」


「ソウ君って、なんですか?」


 上目遣いだけど、無表情のアイニさんが大変恐ろしいのですが。

 実家云々より、俺の方が気になるとか言わないでくれよ……。


「ねえ、クラタさん。ルネイアナさんと妙に親し気ではないですか?」


 アイニから発せられる負のオーラにミユが怯え、ギルマスは部屋の隅に退避してしまっている。


「い、いや、普通に向こうのギルドで世話になっただけだぞ……」


「え~。私とソウ君って、それだけの仲じゃないでしょ~?」


「おい、これ以上ややこしくするな!!」


 これ幸いとルネイアナが俺の腕を取って、しなだれかかってきやがった。


「ほほう。クラタさんは中央の町に行って美人さんとイチャイチャしていたのですね。ええ、私みたいな田舎娘なんて眼中にないですよね。そうですよね」


 何故俺がこうまで責められなきゃいけないんだ。

 原因のルネイアナは満面の笑みを浮かべてるし。絶対にこいつはアイニをおちょくってるよな。


「アタシ、思ったにゃ。アイニって、クラタんとお付き合いをしている訳じゃないにゃ? お付き合いしてないのに、なんでクラタんを責める事ばかり言うのにゃ?」


 ここでまさかのミユの的確なツッコみ!!

 いつにも増して、的を得過ぎていないか!?

 実はアホの子を演じてるだけだったりして……。


「え……? そうでしたっけ? って、私、変な事言いましたよね!? すみません、今のは忘れてください!!」


 アイニが恥ずかしそうに両手で頬を押さえている。

 物凄い変わり身だな。


「ははは、アイニ嬢は実家の話を聞いて気が動転していたのだろう。今日はもう上がりなさい。ルネイアナ嬢も中央のジョークは刺激が強すぎる。程々にお願いしますよ。クラタ殿達も報告書はまた後日にでも。じゃあ、今日はこれで解散!!」


 ここに来てギルマスが最高に素晴らしい締め方をしてくれた。

 ギルマスの事をちょっと見直したぞ。


 さあ、こんな場所に長居は無用だ。さっさとガイラさんと合流しよう。





 ギルドの飲食スペースに戻ってきた俺達が目にしたのは、ガイラさんが他の冒険者達と飲み比べをして、酔い潰していたところだった。


「おー! ソウジ!! ここの冒険者達は軟弱でしょうもないなー!! 我と飲み比べで勝てる者はおらんのかー!?」


 こんちくしょう! ほろ酔い気分で楽しそうじゃないか!

 って、そうじゃない。

 まったく、あれだけ騒ぎを起こすなと言ったのに。


「でも、ガイラは暴れてないにゃ。ちゃんとクラタんの言いつけを守ってるにゃ」


「う……そう言われると、そうかもしれないけど……」


「ソウ君、私が勝負してきていい? 飲み比べには結構自信あるんだ~」


「これ以上騒ぎを大きくしないでくれ。マジで頼む……」


 人外同士の飲み比べ勝負なんて、想像もしたくない。



「あのう……」


「ん? どうしたアイニ」


「……あの方とはどのようなご関係なのですか?」


 またかよ!!

 なんでそうやって、君は負のオーラを出しちゃうかなあ。


「彼女はエーシャのお姉さんだ」


「え? 冗談ですよね? だって、彼女はエルフじゃないし……」


 そこまで言って気づいたようだ。

 血が繋がっていないか、親のどちらかが違うのかもしれない。

 アイニ自信も身に覚えがあるからこそ、その事に気がついたのだろう。


「色々と事情があるのですね……」


「そういう事だ。深く考えない方がいいぞ」


「分かりました」


 理解してくれて何よりだ。

 一安心したところで、ガイラさんが呼び掛けてくる。


「ソウジー! 今日はお主の家に厄介になるのだから、早めに夕飯の材料を買って帰るぞー」


 もうマジで勘弁してくれ。

 アイニの視線が突き刺さりっぱなしだ。


「実は私もソウ君の家にお邪魔するんだー」


 ルネイアナまでもかよ!!

 冒険者の野郎どもが酔いつぶれてて良かった。

 危うく、嫉妬で襲われるところだった。

 その代わり、女冒険者達からはクズを見る目で見られているが。


「クラタさん。これは一体どういう事でしょうか?」


「えっとな。旅は道連れ、余は満足……じゃなくて世は情けだ」


 くそ! ミユが変な事言ってたから、うつったじゃないか!!

 アイニの満面の笑みが怖い。


「クラタさんはいつから、そんなに女性にだらしなくなったのですか? まさか、リグミナさんやマナシエちゃんにまで手を出してるとか……!?」


「おいふざけんな! 流石にそれは無いぞ!!」


 すっかりアイニが面倒な子になってしまった。

 こうなったら、ミユに丸投げだ。女子同士なんとかしてくれ!!


「じゃあ、アイニもうちに泊まりに来るにゃ!!」


 ああ、はい。

 もう好きにしてくれ。


 全てを諦めたところで、エーシャが戻ってきた。



「おとうさん、どうしましたか? 疲れ切った顔をしてますけど……?」


「まあ、色々あり過ぎてな。そっちの首尾はどうだった?」


「はい。ヴァネリーさんとギルデオさんは、知り合いの酒場の主人に紹介してきました。用心棒兼従業員として、住み込みで働いてもらう事になりましたよ」


「それは良かった。あの二人もそこそこ訳アリだったしな」


「ただ、ひとつ問題がありまして。戸籍の問題ってやつです」


「どういう事だ?」


「あの二人は死亡した事になっていますけど、今後新たな生活をするために戸籍が必要なのです。新たな住民カードの発行とかしなくてはいけません」


「それはそうだな……。何か手があるのか?」


「まあ、その件も含めておとうさんにご協力をお願いしたいのです。今日はもうお疲れの様子ですし、難しい話は落ち着いてからでも」


「それは助かる。じゃあ、今日はさっさと帰るか」


「そうしましょう」


 ギルドを出て我が家に帰る事にした。





 ……この状況は、なんだろうな。


 夕飯の食材を市場で買って、帰宅中である。

 同居人のミユは分かる。

 住居が見つかるまで面倒を見ると言ってしまった手前、ガイラさんも分かる。

 取り敢えず、今日のところは泊まりに来るルネイアナも百歩譲って分かる。

 まあ、ミユが誘ってしまったアイニも仕方がない。


「なんで、エーシャまで一緒に来てるんだよ!? 自分の家があるだろう!?」


「ええ!? この状況で、私だけ仲間外れにするのですか!? それは流石に私に対するイジメですよね!? もうこうなったら、一人ぐらい増えたって誤差ですよね!?」


 こいつ、開き直りやがったぞ。

 俺の家を便利な別荘だと思ってないか?


 それはそうと、問題はアイニだ。

 彼女はガイラさんとルネイアナの正体を知らない。

 何かの拍子で知られたら、面倒な事になるのは火を見るよりも明らかだろう。


 どうやら、気づかないうちに眉根を寄せていたらしい。

 ルネイアナが心配そうに顔を寄せてきた。



「アイニちゃんの事よね? 隠してても心苦しいし、教えちゃおうかなって」


「……いいのか? 中央の町では正体を隠していたのだろう?」


「うん、あの子は悪い子じゃないと思うから、隠し事はしたくないなあ~って」


「だけど、正体を明かして拒絶されたらどうするんだよ? せっかく来たのに、この町にいられなくなるかもしれないぞ?」


「ソウ君って優しいね。でも、心配要らないんじゃない?」


 ルネイアナが指し示した方を見ると、ガイラさんが角と尻尾を生やしていた。


「おい!! アンタ何やってんだよ!?」


 流石にそれは不用意すぎる。


「むむ、何が悪いのだ。我は己を偽るのは嫌いなのだ!!」


「言ってる事は正しいと思うけど、時と場合によるでしょうが!!」


 アイニがガイラさんを目の当たりにして、唖然としてしまっている。

 ドラゴンと知られたら大騒ぎになるぞ。


 ……と思ったのだが。


「凄いです! 私、竜牙族の方とお会いするのは初めてです! 北の大陸で暮らす少数民族と聞いてましたが、こちらにも来ていたのですね」


 よく分からないけど、勘違いしてるっぽい?

 当のガイラさんは何やら不服そうだ。


「待て娘、我はそんな偽物じゃなくて、本物のドラゴンだぞ!!」


「そういう冗談がお好きなのですね。分かります」


 こうなるとガイラさんも形無しである。

 まあ、勘違いしたままで平和ならそれも良いだろう。



「ところで、エーシャ。竜牙族とやらって珍しい種族みたいだが、知り合いにいたりするのか?」


「おとうさんも中々鋭いですね。勿論いましたよ。父が竜牙族の族長とその妹に手を出していたと聞いた時は、どうしようもないと思いましたけどね……」


 まあ、その辺りはノーコメントで。


「竜牙族って、強いと聞いたにゃ! アタシ戦ってみたいにゃ!」


 ミユさんや、どんどん好戦的になっていませんかね。


 結局、ガイラさんの正体はウヤムヤになってしまったが、ルネイアナはどうするのだろう……って、こっちもかよ!?

 ルネイアナが黒髪になって、翼を生やしていた。


「大丈夫、怖くないからね~? ちょっと夢の中で精気をもらうだけだから~」


「お前も何やってるんだよ!? 正体を明かすにしても、順序があるだろ!!」


 ルネイアナにアイアンクローをして黙らす。


「いだだだだだ! 女の子に暴力とか最低過ぎるんだけどーーー!!」


「おおう、ソウジも中々やりおるな!」


「さすおとです! 女性の顔にためらいなく攻撃を与えるとは鬼畜ですね!」


「クラタんとルネイアナが仲良しにゃ!」


 ここまで誰も止めないとか逆に凄いよな。

 この無茶苦茶な状況に、アイニは呆然としてしまっている。



「えっとな、これには物凄い深い訳があって、ルネイアナも悪い奴じゃないんだ。だから、怖がらないでやってくれ」


「怖いのはソウ君よ! 顔に痕が残ったらどうするのよ!! 責任取ってもらうからね!!」


 取り敢えず、ルネイアナは黙っててくれ。

 肝心のアイニだが、困ったように微笑んだ。


「そうですよね。異世界出身のクラタさんですから、周囲にいる人も変な人ばかりなのですよね」


 その変な人の中に、自分が含まれている自覚はあるのだろうか。

 怖いから敢えて指摘はしないが。


「聞き捨てならないぞ、娘! 我は変人ではないからな!」


「そうですよ! 変なのは姉さんであって、私はごく普通ですからね!」


「ま、私も普通だし関係ないかな~?」


 こいつらはどの口が言うのだろうな。

 呆れていると、ミユが背中をポンと叩いてきた。


「クラタん、ドンマイにゃ」


 なんだかんだ言って、一番まともなのはミユだったりするのかもな……。

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