~冬の訪れ~
「これなら歩いて行ったほうが早いな」
「ですねぇ」
僕と柚希様は窓の外を見つめた。
あの合唱コンクールから1ヶ月と少し経った12月1日・・・なんと時期は少し早いが雪が降っていた。
「天気予報では雨だったので車にチェーンつけてませんから車では行けないです」
雪が降ると分かっていれば冬用にできたのだがいかんせん突然の雪ということで車が出せなくなってしまった。
「わかった。気分は最悪だが車が出せない以上歩いて行こう・・・問題はヘレーネを説得出来るか、だな。頑張れ灯華」
「か、かしこまりました」
ヘレーネ様はお屋敷の改装が終わったけれど今年中は柚希様のお屋敷で過ごすことに決めたようで、未だに僕たちと一緒に暮らしていた。
結局、僕の指が骨折していたことは素直にユリアさんに話した。
最初は謝られたりしたけれどほぼ完治できたこともあり、最近ようやく元の彼女に戻ってくれたので一安心できた。
「ヘレーネ様、尾上灯華です、よろしいでしょうか」
朝食には少し早い時間、僕は客室のヘレーネ様が使っている部屋に訪れた。
「あらトーカ、どうしましたの?もう朝食の時間かしら」
「いえヘレーネ様、朝食まではあと20分ほどです。それとは別にお伝えしなければならないことがあって参りました」
「ではいったい何の用ですの?」
「本日の天気は雪となっております」
「まぁそうでしたの。どうりで寒いと思いましたわ」
「はい、なので防寒をしっかりなさってください。それで本題なのですが、予報外れの急な雪ということで車に雪対策ができていないため、本日の送迎ができませんので徒歩での通学ということになってしまいます。申し訳ございません」
「・・・」
ヘレーネ様は唖然とした顔で僕の肩を掴む。
「この雪の中私に歩けと申してますの!?」
「大変申し訳ございません」
「・・・まぁいいですわ。世話になってる身ですし今回は諦めますわ」
「ありがとうございます。お優しいヘレーネ様」
「ですが、今後はこのようなことがないようにしていただきたいですわ」
「はい、申し訳ございませんでした。ではまた朝食の用意ができましたらお呼びしますので。失礼します」
僕は一礼してヘレーネ様の部屋を後にした。
ここまで来たしついでにユリアさんにも伝えておこう。
隣の部屋の扉をノックすると中からまだパジャマのユリアさんが出てきた。
「あ、灯華さん・・・おはよぉございますぅ」
「朝早くからごめんなさい、ちょっと大丈夫ですか?」
「・・・あい」
とても眠そうだけど僕も朝食の用意があるし手短に話さないと。
「本日の天気は雪となっておりまして--」
「雪ですか!?」
突然覚醒したユリアさんに思わずびっくりしてしまったが、そんな僕をよそに彼女は自室に戻って窓の外を見ている。
「ホントだ!雪が降ってます!すごい真っ白ですよ!」
楽しそうでなによりだ。
「それで本題なのですが、急な雪ということで車が出せないので本日は送迎ができません。なので徒歩での通学ということになってしまいます」
「あぁなるほどそうなんですね。わかりました。私は大丈夫です。ヘレーネ様には伝えましたか?」
「はい、既に話してあります。ではまた朝食の時に来ますね」
それだけ告げて僕はキッチンに戻る。
「うーさぶいですわー」
「ドイツはもっと寒いだろう?日本に慣れすぎたか?」
「元々寒いのは苦手なんですの・・・。あー夏が待ち遠しいですわ」
「灯華さん!見てください!雪玉できました」
ドイツ出身の2人は対照的だった。
「にしてもだいぶ積もりそうだな・・・はぁ」
柚希様もヘレーネ様と同じく白いため息を吐き出していた。
「きゃっ」
「おっと、大丈夫ですか」
「助かりましたわ。ありがとう」
足を滑らせたヘレーネ様を咄嗟に抱き寄せて支えた。
「ん、んんっ」
柚希様の咳払いではっとなった僕はヘレーネ様からそっと離れた。
「灯華って見た目より力ありますわよね」
ほら言わんこっちゃないと柚希様の顔が言っていた。
さて、なんて言ってごまかそうかな




