表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力の均衡  作者: 酒酔
10/34

二重の偽英雄都

「魔晶石一つで夢が叶うはずだった——しかし、世界はいつも代償を求める。」

城塞都市では、魔王軍の影が年々濃くなっていた。本物の勇者と本物の聖剣は、ほとんど現れないというのが人々の共通の認識だった。

ある日、広場に完全な勇者が現れた。金髪で青い瞳をし、凛とした声で語りかける。手に持つ聖剣は振るうたびに神々しい光の軌跡を描き、魔物を遠ざける力を発揮した。

騎士団の隊長は満足した。これで士気が保てる。

市場の女は娘に言った。勇者がいる限り、明日も店を開けられる。

貴族の青年は酒を飲みながら笑った。本物より立派ではないか。

路地の少年は母親の手を握り、いつかあのような剣を持ちたいとつぶやいた。

勇者は毎日広場に立ち、市民を鼓舞した。「私はここにいる。魔王など恐れるな。」

聖剣の光が広がるたび、街は歓声に包まれた。志願する若者が増え、交易も活気づき、誰もがこの街には勇者がいると信じた。

技師Hは工房で静かに微笑んだ。エクスリアでニセモノの聖剣を作り、バリオンでニセモノの勇者を作った自分が、二つのニセモノを組み合わせた最高の作品だと。

数ヶ月が過ぎた。

隊長は気づき始めた。勇者の言葉が、昨日と同じものばかりだと。

女は広場で、勇者が独り言のように「まだ大丈夫」と繰り返す姿を見た。

青年は仲間と囁き合った。あの剣の光は派手だが、実際に何かを倒した話は聞かない。

少年は母親に言った。勇者様は疲れているようだ。休ませてあげた方がいい。

しかし、大半の者は気づかないふりをした。勇者がいなくなることが、何よりも恐ろしかったから。

やがて聖剣の光が不自然に揺らぎ、勇者は街の外へ勝手に出陣するようになった。騎士たちは命令に従い、無意味な行軍を繰り返した。市民は食料を送り続け、貴族は勝利の宴を開いた。現実の斥候が近づいても、勇者は「まだ大丈夫」と繰り返すだけだった。

技師Hは最後に、制御装置の小さな注意書きを読んだ。

「ニセモノの勇者とニセモノの聖剣を組み合わせれば、世界は本物の絶望を二重に求める。偽りの希望は、二つ重なると均衡を保てない。」

街は偽りの勇者と偽りの聖剣に導かれながら、静かに陥落した。

今ではその都市は「二重の偽英雄都」と呼ばれ、誰も聖剣や勇者の名を口にしなくなった。

「魔力の均衡は、決して保たれなかった。人間がそれを試すたび、世界は静かに、しかし確実に代償を回収した。」

「魔力の均衡は、決して保たれなかった。人間がそれを試すたび、世界は静かに、しかし確実に代償を回収した。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ