魔力の墓場
「魔晶石一つで夢が叶うはずだった——しかし、世界はいつも代償を求める。」
ある異世界で、魔法が日常の力として使われていた。
その世界の住人は皆、魔力を少しずつ持っていたが、強力な魔法を使うには高価な「魔晶石」が必要だった。魔晶石は山奥の鉱山から掘り出され、王都の市場で高値で取引される貴重なものだった。
ある日、貧しい村の青年、Aは古い書物を手に入れた。そこには「魔力を無限に増幅する呪文」が記されていた。ただし、条件があった。「自分の魔力をすべて捧げ、代わりに世界の魔力を一時的に引き寄せる」ことだ。
Aは試してみた。村はずれの森で、呪文を唱える。すると、体から魔力が抜け出し、周囲の空気が震えた。木々が輝き、花々が一斉に咲き乱れた。Aの体は軽くなり、まるで神になったような気分だった。
「これで、魔晶石など必要ない。みんなが自由に魔法を使える世界を作れる」
Aは興奮して村に戻った。村人たちに呪文を教え、皆で唱えさせた。最初は小さな奇跡が起きた。水が湧き、作物が急成長した。村は豊かになった。
しかし、数日後、異変が起きた。空が暗くなり、魔力が暴走し始めた。村の家々が浮かび上がり、地面が割れた。動物たちが巨大化し、人々を襲った。
Aは慌てて古い書物をもう一度読んだ。そこには小さな注意書きがあった。
「世界の魔力を引き寄せるとき、捧げるのは自分の魔力だけではない。世界がその代償を求めることがある」
村は荒廃し、Aは最後に気づいた。無限の魔力など、最初から存在しなかった。ただ、世界の均衡を崩すだけの、愚かな願いだった。
それ以来、その森は「魔力の墓場」と呼ばれ、誰も近づかなくなった。
「魔力の均衡は、決して保たれなかった。人間がそれを試すたび、世界は静かに、しかし確実に代償を回収した。」




