30話 戦場が静かになった日
前線。
平原。
風。
畑。
小さな芽。
その横で――
鍋。
湯気。
兵士が並んでいる。
椀。
スープ。
沈黙。
参謀が言う。
「……戦場だな」
サイクロプスが腕を組む。
「静かだ」
兵士がスープを飲む。
「うまい」
別の兵士。
「温かい」
さらに別の兵士。
「眠くなる」
沈黙。
そのとき。
敵襲。
遠くに軍勢。
旗。
鎧。
敵兵が止まる。
畑。
鍋。
兵士。
椀。
沈黙。
敵兵が言う。
「……何だこれは」
魔王軍兵士。
「昼です」
沈黙。
敵兵。
「戦争だぞ」
「はい」
「なぜ畑だ」
「野菜です」
「なぜ鍋だ」
「スープです」
沈黙。
風。
スープの匂い。
敵兵の腹が鳴る。
ぐぅ。
完全な沈黙。
そのとき。
メウラが言う。
「食べますか」
参謀が止まる。
敵兵が止まる。
サイクロプスが言う。
「……椀はある」
沈黙。
数分後。
前線。
敵兵。
椀。
スープ。
飲む。
沈黙。
敵兵。
「……うまい」
別の敵兵。
「温かい」
さらに別の敵兵。
「軽い」
完全な沈黙。
サイクロプスが言う。
「戦うか」
敵兵。
「……後で」
沈黙。
夕方。
両軍。
並んでいる。
鍋。
畑。
静か。
玉座の間。
参謀が報告する。
「本日の戦闘」
沈黙。
「なし」
魔王が言う。
「敵は」
参謀。
「野菜を持って帰りました」
沈黙。
メウラが言う。
「整いました」
魔王が窓の外を見る。
前線。
緑。
鍋。
兵士。
そして静かな空。
魔王が言う。
「戦とは、力の奪い合いだと思っていた」
沈黙。
メウラ。
「整っていないだけでした」
風が吹く。
畑が揺れる。
遠くで声。
「三刻目、水!」
少し間。
「三刻目、日陰!」
さらに間。
「三刻目、収穫!」
沈黙。
戦場は――
静かだった。




