20話 ドラゴンがまだ動けません
前線。
空。
轟音。
巨大な影。
ドラゴン部隊。
旋回四十回。
だが着地が不安定。
尾が左右に振れる。
どすん。
地面が揺れる。
サイクロプスが言う。
「回数は減らした」
「なぜ安定せぬ」
沈黙。
メウラが尾を見ている。
「尾を使っていますか」
副官。
「飾りではない」
「ですが、旋回時に振るだけです」
沈黙。
メウラが言う。
「体幹が弱いです」
ざわめき。
「竜だぞ」
「巨大だぞ」
「体幹とは何だ」
メウラ。
「背中ではありません」
「尾の筋力不足です」
完全な沈黙。
ヴォルグが低く言う。
「……尾?」
メウラは尾を軽く持ち上げる。
重い。
だが、支える力が弱い。
尾がだらりと落ちる。
どす。
参謀が小さく言う。
「……重機だな」
メウラ。
「上だけで回っています」
「尾が支えていません」
参謀が言う。
「だから、背中に負荷が集中した」
メウラがうなずく。
「飛びすぎではなく」
一拍。
「偏りです」
沈黙。
訓練変更。
旋回回数そのまま。
だが――
尾の筋力訓練導入。
・尾で岩を押す
・尾でバランス保持
・滑空中、尾で姿勢制御
若手竜が言う。
「地味だ」
別の竜。
「飛べぬ」
さらに別の竜。
「尾が疲れる」
メウラ。
「尾ですから」
若手竜。
「筋肉痛だ」
メウラ。
「正常です」
尾で岩を押す。
ごり。
岩が転がる。
別の竜が尾で押す。
岩ではなく参謀を押す。
参謀が転がる。
沈黙。
メウラ。
「人は押さないでください」
訓練続行。
尾でバランス。
尾で着地制御。
尾で姿勢保持。
若手竜が言う。
「……尾とは、こんなに働くのか」
別の竜。
「今まで飾りだった」
サイクロプスが腕を組む。
「尻尾軍だな」
沈黙。
数日後。
試験飛行。
旋回。
滑空。
着地。
どす。
……揺れない。
尾が地面を軽く叩く。
安定。
サイクロプスが呟く。
「……暴れぬ」
ヴォルグが立ち上がる。
尾をゆっくり動かす。
「軽い」
一度、旋回。
無理がない。
二度。
三度。
着地。
完璧。
沈黙。
若手竜が言う。
「……まだ飛べる」
別の竜。
「尾も元気だ」
メウラ。
「尾も休ませてください」
玉座の間。
参謀が報告する。
「ドラゴン部隊、着地安定」
「腰痛、再発なし」
「参謀の打撲、一件」
魔王が言う。
「竜は強い」
メウラ。
「はい」
「だが、支える竜は、さらに強い」
外から轟音。
だが、以前より静か。
メウラが小さく言う。
「飛びすぎではなく、偏りです」
空に竜。
羽ばたく。
尾が支える。
風が整っている。
遠くで若手竜の声。
「三刻目、尾トレ!」
別の竜。
「尾は休みたい!」
さらに別の竜。
「尾も自己責任か!」
沈黙。
メウラ。
「尾は自己責任ではありません」
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