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【改稿前作品】別人格は異世界ゲーマー 召喚師再教育記  作者: 星々導々
第一章 召喚師の降臨と錬金術師の献身
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25話 続きくる異変

 テオが戻ってきてから数日。騎士隊長からセメイト村の村人達に通達があった。

 南方の旧開拓村への進軍を開始すると。


 これまでの村周辺の『間引き』で、意外とモンスター出現数が多かった。そのため、進軍前に充分にモンスターを処理しておく必要があった。

 旧開拓村への進軍には、セメイト村の住民も戦力として参加することになっていた。ゆえに、一時的にセメイト村の戦力が低下する。安全を確保するため、村周辺のモンスターを徹底的に少なくしておく必要があったためだ。


 セメイト村の召喚師達も当然駆り出される。

 しかしテオは、セメイト村の護衛として村に残ることになった。


(……僕が、弱いから)


 それを指示されたテオは、唇を噛みながらも納得した。今の自分は『ヴァルキリー』を加味してなお、召喚師の中で一番弱いのだろう。

 だから、自分は外された。


 もっとも、村に最低限の戦力を残しておくのも必要なことだ。

 徹底的に『間引き』したとはいえ、モンスターがまた襲ってこない保証はない。数年前から襲撃が連続していたからだ。どんな突発事態があってもおかしくない。


 テオの一家も村に居残ることになった。

 むろん、テオの母であるサマーがいるからだ。片腕が無い弓術士は戦えないので戦力にならない。戦闘用の錬金装飾(れんきんそうしょく)が扱えないシャラも同様だ。そのため、スコットも村に残る非戦闘要員を護衛するための戦力として残ることになった。


 テオにとって意外だったのは、アシュリーも居残り組だったということだ。


「……どうして、アシュリーさんも残ることになったんでしょう?」


 そうやって旧開拓村へと進軍していったのが、今朝。

 テオは、村の中心にある畑や牧場から穀物や牛の乳などを受け取ってきた。同行したアシュリーを伴って、村の中央広場から自宅へと移動していた。


「……あんたの監視を頼まれたのよ。仕方ないでしょ」


 アシュリーは横を歩くテオに向かって、ぶっきらぼうにそう言い放った。

 彼女は村でも特に腕の立つ剣士。旧開拓村への進軍を行うのであれば、どう考えても連れていくべき人材のはず。にも関わらず自分が外され、テオの監視に回されたことを根に持っているのかもしれない。


「か、監視、ですか」

「あんた、別世界からの人間を装ったり、突然召喚師たちに指導したりしてたのよ? 怪しまれて当然でしょ」


(……そうか)


 もしかしたら自分が進撃部隊から外されたのは、そういうことかもしれない。自分が怪しまれていて、進軍中になにかしでかさないか警戒されたのだろうか。


「――ただいま、父さん」

「ああテオ、戻ったか」


 やや気まずい沈黙の中、テオはようやく自宅へと辿り着いてスコットに声をかける。


「あ、テオ! おかえり!」


 と、そこへ家の中からシャラもぱたぱたと出迎えに出てきた。


「ただいま、シャラ。食材、貰ってきたよ」

「ありがとう。さっそく、使わせてもらうね」


 ふわ、と優しい笑みを浮かべるシャラに、一抱えもある袋を地面に置きながら応える。


「じゃ、あたしはこれで。休憩後にまた合流しますから」


 と、同じく袋を抱えているアシュリーがここでスコットへ淡々と報告する。


「ああ、アシュリーさん。……よかったら、私達と一緒にお昼をどうだい?」

「……いえ、遠慮しておきますよ」


 スコットが誘うが、すげなく断るアシュリー。

 しかし、ここで唐突に。


 ――ドウッ


 南の方角で突然、光の柱が立ち昇った。魔法の救難信号だ。


「……緑! テオ、行くわよ!」


 それにいち早く反応したアシュリーが、袋を地面に投げ出した。

 緑の救難信号は『少数の増援求む』というものだ。距離から見て、村の南門からほど近い森の中。テオ達と交代して村周辺を警戒中だった部隊が奇襲を受けたのかもしれない。

 既に剣の柄に手をかけてそちらへと急行しようとするアシュリー。


「わ、わかりました!」

「テオ!? 大丈夫なの!?」


 テオもすぐさま立ち上がった。シャラが、心配そうにテオの肩に触れる。


「大丈夫だよシャラ。南に近いのは僕達なんだから、僕が行かないと」


 村の東西南北の四方向にそれぞれ、村と周辺を護衛するための戦力が配置されている。当然、四方向に召喚師も一人ずつ配備されていた。南側はテオとアシュリーの管轄だ。


「……気を付けて」


 きゅ、とテオの手を握りながら、シャラが不安そうにしながらもエールを送った。


「ま、待てテオ! それなら私も――」

「父さんは村内の護衛要員でしょう! もしモンスターが侵入してきたら、父さんが頑張ってくれないと!」


 村に残った戦力は、必要に応じて周辺にも遊撃に出る班と、村の最終防衛ラインとして残る班に区分される。サマーを守るために、スコットは後者に区分されていた。


「く……本当に、無茶はするんじゃないぞ!」

「わかってる!」


 そう言って、テオはすぐさまアシュリーの後を追って走った。



 ***



「よし……【ヴァルキリー】召喚」


 門を出て森に入ったところで、テオはすぐさまヴァルキリーの召喚を行った。

 黒魔導師や白魔導師と違って、召喚魔法はマナさえ使えばほぼ一瞬で発動できる。走りながらでも召喚できるのは、召喚師の強みの一つだ。

 またマナを蓄積するという意味もあった。召喚師のマナ回復速度はぶっちぎりで早い。敵と遭遇する前からモンスターを用意しておき、移動しながらマナを回復させるというのは常套手段だ。


「【戻れ】っ!」


 さらに『戻れ』命令を下す。

 移動中には『戻れ』命令で召喚師の元へと移動させ、その状態で連れていくようにするのがセオリーだ。


(よし、しばらくマナを回復させて……)


 テオは敵モンスターが見えたら一気に上限まで召喚するつもりで、今はマナ回復に努める。

 召喚師には一度に制御できるモンスター数に上限がある。同時には八体までしか出せないのだ。生きている召喚モンスターが八体になると、そのうちのいずれかが倒れない限り、追加で召喚することはできない。

 そのため、一人の召喚師が無制限に大量のモンスター軍団を出して敵を圧倒する、という真似はできない。


「――あそこよ!」


 先行しているアシュリーが交戦している仲間を発見した。見やると、何体かの飛行モンスターが空から攻撃している。


「【ライジング・アサルト】!」


 アシュリーが叫ぶと、その体が一瞬にして前方上空へと舞い上がる。ズバッ、と空を飛び回っている中級モンスター『ナイト・ゴーント』を斬り裂いた。


「【スワローフラップ】」


 そのままさらに空中にも関わらず刀身を翻し、続けさまに斬り裂く。真っ黒な人型に蝙蝠のような翼が生えた飛行モンスター『夜鬼(ナイト・ゴーント)』が消滅した。


「【封印(コンファインメント)】」


 すぐさまテオが、倒れたナイト・ゴーントに封印(コンファインメント)をかける。


「【ドロップ・エアレイド】!」


 空中に居たアシュリーが、高速で落下するように地上へと突撃した。

 ズン、という地響きが、テオからは木に隠れて見えない前方に響き渡る。


「【ヴァルキリー】、【行け】っ!」


 すぐさま、テオはヴァルキリーを突撃させた。一気に加速し、僅かに浮いた状態で高速で飛ぶように突進していくヴァルキリー。

 テオも急ぎ後を追った。



「……これは!」


 現場に辿り着いたテオは、周囲の状況を確認して思わず目を見開く。


 周囲に見えているのはスカルガードの大軍。その中に何体か、別の中級モンスターが混じっているのも見える。

 そして自陣側はというと、三人ほどが手前に倒れているのが見えた。死んでいるわけではないようだが、傷が深く意識が無いようだ。

 倒れているのは白魔導師と、召喚師、そして弓術士だ。黒魔導師を除く後衛がことごとくやられてしまっている。後方から奇襲を受けたのだろうか。


 同時に援軍を要請した理由も把握する。召喚師が倒れてしまったので、封印要員が居なくなってしまったようだ。白魔導師が倒されてしまったため、治療することもできない。

 その上、よりにもよって敵はスカルガードの群れだ。スカルガードは倒しても三十秒ほどで勝手に復活してしまう。それを防ぐためには封印するしかないが、肝心の召喚師が意識不明だ。無限に敵が湧いてくるのに等しい状況に追い込まれてしまった。

 黒魔導師も攻撃に躊躇している様子だった。下手にスカルガードを倒しても復活してくるだけだし、マナの損耗も無視できないためだろう。


「【封印(コンファインメント)】」


 テオはすぐさま、倒れたスカルガードの封印を始める。とにかく復活するスカルガードの数を減らしていかなければ、ジリ貧だ。


「テオ、スカルガード以外の封印もしなさい!」


 前方でアシュリーが、防御を担う建築士のサポートをしながらテオに叫んだ。

 復活能力を持たないモンスターは、封印しなければ瘴気紋が拡散してしまう。そうなると、未来のモンスター襲撃やスタンピードの種となりかねない。スカルガードは瘴気紋が拡散せずに復活してくるため、瘴気に戻ってしまう心配がないという意味では安心なのだ。


 現状、アシュリーはスカルガード以外のモンスターにトドメを刺さず、足止めに専念している。


「【バニッシュブロウ】!」


 彼女はそう叫んで刀身を光らせ、紫色の金属の体を持つ中級モンスター『牛機VID-60(ヴィドシックスティ)』を吹き飛ばす。威力よりも、敵を突き飛ばして遠方へと押し出すことに重きを置いた『技能』だ。


「は、はい! 【封印(コンファインメント)】」


 状況を見て、テオは封印に専念した方がよさそうとスカルガードではないと思われる瘴気紋の封印に走った。


「――ぐうッ!」


 と、そこへ黒魔導師の男性がうめき声を上げた。

 テオが振り返ると、人の頭よりも一回り大きいサイズの黄色い甲虫、『イス・ビートル』が黒魔導師に突撃していた。黒魔導師が腕につけた木製の小さな盾でなんとか受け止めはしたものの、勢いに負けて倒れこんでしまっている。


「くっ、【スカルガード】召喚! 【行け】っ!」


 咄嗟にテオはスカルガードを召喚した。自身が召喚したスカルガードも復活能力を持つため、長期戦で戦線を維持するのに便利である。と、学園の教官から教わったためだ。



『――慌てて召喚するんじゃない。相性を考えるんだ――』



(っ! こんな時にっ!)


 またしても突然記憶から勝手に響く声に、テオは片手で頭を抑える。しかし。


 ――バシュウッ


「あっ!」


 テオのスカルガードは、イス・ビートルの攻撃を受けてあっさりと倒されてしまった。イス・ビートルにはほとんど傷がついていない。


(しまった!)


 甲虫型のモンスターであるイス・ビートルは、その甲羅ゆえに斬撃攻撃がほとんど効かない。そのため、剣で攻撃するスカルガードとの相性が良くなかった。


「――まったく、もうっ!」


 それを見たアシュリーが咄嗟に身を翻し、黒魔導師の元へと一気に駆け寄る。


「【シフト・スマッシュ】」


 アシュリーが声を張り上げると彼女の剣にオーラがまとわりつき、その光が斧の形状を象った。『シフト・スマッシュ』、剣士の『技能』の一つで、攻撃属性を”打撃”へと変換する技だ。

 斧状のオーラを纏った剣を叩きつけられたイス・ビートルは、甲羅をひしゃげさせながら木に激突し、その体が消滅する。


「テオ、封印!」

「は、はいっ! 【封印(コンファインメント)】」


 アシュリーに催促され、すぐに倒れたイス・ビートルを封印する。


「――こっちもか! 【封印(コンファインメント)】」


 テオはさらにスカルガードのものではない瘴気紋が増えているのを見て、慌てて封印に走った。

 原因はテオのヴァルキリーだ。『行け』命令のヴァルキリーが相手構わず攻撃している。テオのペースとはお構いなしに、スカルガード以外のモンスターもどんどん倒してしまっていた。



『――目先ばかりじゃなく、自分の立ち位置も確認しないと危ないぞ――』



(だからっ! こんな時にやめろっ!)


 またしても声が頭に浮かび、テオは目を閉じてそれを追い払おうとする。

 しかし――


「――うわあああッ!」


 目を瞑っていたため、すぐ近くにあった急斜面に気づかなかった。足を踏み外してしまい、体が急斜面へと吸い込まれる。


「――テオ!? まずい、もう一度救難信号を――」


 慌てるアシュリーの声が遠ざかるのを聞きながら、テオはそのまま斜面を転げ落ちていってしまった。

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