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【改稿前作品】別人格は異世界ゲーマー 召喚師再教育記  作者: 星々導々
第一章 召喚師の降臨と錬金術師の献身
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26話 襲撃の暗躍者

 森の中に潜む、迷彩服のような色のローブを羽織った一人の男。深く被ったフードの中から、この状況を訝んでいた。


(どういうことだ……?)


 彼の視線の先には、セメイト村へ誘導せんとしたモンスターの群れを、たった一人で相手しようとしている召喚師の少年がいた。セメイト村が手薄になったこの時を狙い、村に大量の野良モンスターを攻め込ませようと密かに誘導させていた男の努力が、水の泡だ。


(この村は、奇妙なことが多すぎる)


 そう心の中で独り言ちる彼は、『召喚師解放同盟』の幹部の一人、ヴァスケス。


 召喚師解放同盟は、召喚師として虐げられた者たちを解放し、召喚師が相応に尊重される世界を作ることを目指す組織だ。人員はほぼ全て、召喚師になってしまったがために不当な扱いを受けた者達で構成される。

 召喚師になったがために、本人のみならず肉親までも蔑まれた者達。召喚師になってしまった途端、大切に思っていた人に見捨てられた者達。逆に、大切な人を殺された者達。

 そういった者達が集まり、召喚師を見下した者どもに復讐を果たすために、あるいは自分達のような存在をこれ以上増やさないために、召喚師達を保護する。それが召喚師解放同盟の目的であり、最終的に召喚師以外の者を世界から排除するのが悲願だ。


 召喚師は『封印(コンファインメント)』によりモンスターの瘴気を祓うという、唯一無二の役割を担う重要な『クラス』である。召喚師が居なければ、この世界は今頃モンスターで埋め尽くされ、人類は滅んでいてもおかしくはない。

 にも関わらず、ただモンスターを操るというだけで不当な扱いを行う。そのような人間が居るから、召喚師は報われないのだ。ヴァスケスは、召喚師解放同盟の幹部としてそれを痛感していた。


 だからこそ、村ではこそこそと視線に怯えながら暮らしている召喚師達が憐れでならない。彼らとて、人間らしく生きる資格があるはずだ。召喚師なくして今の人類は無いというのに、このような仕打ちを受けている。そんな者達を救わねばならない。


 そのために、召喚師解放同盟は意図的にスタンピードを起こしていた。召喚師を蔑む者たちを滅ぼし、さらに混乱に乗じて村に所属している召喚師達を救い出すために。


 あまり広く知られてはいないが、召喚モンスターの中には不思議な能力を持っているものがいる。敵対意思を持つモンスター達の注意を、その身一つに引き付けることができる能力を持つものだ。下級モンスター『猫機FEL-9(フェルナイン)』と、中級モンスター『カーバンクル』の二体が現在のところまでで確認されている。

 召喚師解放同盟の者たちが数名で、これらの召喚モンスターを使って野良のモンスター達を広範囲から集めておいた。召喚モンスターを撤退命令で召喚師に付き従えたまま、野良モンスターを倒さずに引き付け、そのまま一点へと誘導させるのだ。そうすることで、人為的にスタンピードを発生させることも可能となる。


 召喚モンスターを使って直接攻め込む手もあったが、それではすぐに発覚されてしまう。召喚モンスターは野良モンスターと違い、瘴気を纏っていないためだ。


 このセメイト村では、数年前から既にスタンピードが自然発生する下地ができていた。それなりの規模でモンスターの襲撃が相次いでいたのだ。セメイト村の南方で、瘴気が澱んでモンスターが発生しやすい環境ができていた。近年、そういったモンスターが大量発生しやすいポイントが各地で増えている。


 だが、当然ながらこのコリンス王国もその事実にすぐに気づいた。そのため、モンスターが発生しやすい地点に新たに開拓村を作ろうとしていた。

 それを察知した召喚師解放同盟は、開拓村が軌道に乗る前に叩くことを決定。

 ある程度開拓村が安定した頃を見計らい、広範囲から余分に野良モンスターを引き連れ、断続的に開拓村を襲撃させ続けた。その開拓村から定期連絡させる人員も密かに始末し、召喚師解放同盟の構成員とすり替え、『問題なし』という偽りの報告も行わせる。


 そして、開拓村の人員が疲弊したところへ一気に仕掛けた。大量のモンスターを事前に二か所に集めて置き、数が少ない方の群れを一方向から襲撃させる。それを討伐し終えて消耗し、油断したタイミングでもう一か所に集めたモンスターを襲わせて畳みかけた。既に消耗していた開拓村の連中は、救難信号を上げる暇すらなく蹂躙された。

 開拓村に駐在していた召喚師数名を救い出し、勧誘した。三人ほど拒否したため、その者たちは見せしめに殺した。ヴァスケスとしては殺してしまいたくは無かったが、リーダーの命令には逆らえない。

 召喚師は、恐怖で従わせてでも団結させなければならない。人間として生きる度胸の無い者や、他のクラスの者たちに肩入れするような者達を無理に入れて、内部を乱すようなことは避けなければならない。家族を他クラスに殺されたリーダーのその決断を、ヴァスケスは止めることができなかった。


 開拓村があった場所を拠点とし、本命であるセメイト村へ攻めこませる野良モンスターの収集に努めた。

 上級モンスター二体に、さらに運よく最上級モンスターも一体発見し、開拓村があった場所に大量に溜めることができた。開拓村を滅ぼした時よりも、遥かに強力なモンスターの軍隊が出来上がったのだ。

 開拓村を滅ぼした時と同じように二つの群れに分割し、時間差で襲わせることでセメイト村を滅ぼす作戦をとった。


 だが、この作戦がうまくいったのはここまでだった。


 最初のスタンピードを、最小限の被害で食い止められてしまった。

 決して小さな規模のスタンピードではなかった。この群れだけでも、セメイト村を充分に蹂躙することも可能なだけのポテンシャルがあるモンスターの大軍。それを死者なしで切り抜けられてしまい、あまつさえ上級モンスターの一体、『ヴァルキリー』をセメイト村の召喚師に封印されてしまった。


 こうなると、そのヴァルキリーを操る召喚師の手で二度目の襲撃も食い止められかねない。そのため、一旦襲撃を取りやめるしかなかった。

 上級モンスターや最上級モンスターは、最終的には召喚師解放同盟で封印し、こちらの戦力にしておきたかった。村の連中と戦い消耗したところを召喚師解放同盟でトドメを刺し、封印するという手筈だったのだ。逆にこの村の連中にこれ以上戦力を渡してしまう愚は避けなければならない。


 それだけでは異変は終わらない。徐々に、その村の召喚師達が村人に認められはじめた。

 あのスタンピードが何かのきっかけになってしまったのか、あるいは上級モンスターであるヴァルキリーを入手した召喚師の手管か。ある日を境に、セメイト村で『間引き』に同行する召喚師達の動きが突然巧妙化したのだ。


(あの戦い方は、召喚師の戦い方を懸命に研究している我々召喚師解放同盟の戦闘スタイルに似ていた……いや、あるいはより洗練されてすらいたかもしれない)


 『間引き』での会話を盗み聞きし、情報の収集に努めた。どうやら『マナヤ』なる召喚師がスタンピードを抑え込んだ英雄として名を上げ、さらにその戦い方を召喚師達に指導していたらしい。


 もしかしたら、召喚師解放同盟の誰かが事前に村にスパイとして紛れ込み暗躍しているのか、ともヴァスケスは思った。が、確認を取ってもそのような事実は存在しない。リーダーもそのような指示を出した覚えはないと言っていた。

 あるいは、召喚師解放同盟の中に裏切り者が居るのか。だが、召喚師解放同盟でもそうそう出来ないような、あの巧妙な戦い方。あれを教えることができる者など所属していただろうか。ヴァスケスは今一つ納得のいく答えが見つからず、悶々としていた。


 おまけにセメイト村の『間引き』のせいで、以前のようにモンスターを集めるのが難しくなってきていた。

 集めようと誘導した野良モンスター達が、『間引き』の部隊によって処理され続けてしまうのだ。セメイト村の召喚師達が優秀なのもあって、村の方面から誘導しようとしたモンスター達を効率よく封印されてしまった。


 そして今日、とうとうセメイト村に集まった戦力で、開拓村があった場所への進軍が開始された。

 準備はあまりできなかったが、こうなれば強行するしかない。幸い、以前集めた最上級モンスターが一体、さらに上級モンスターもまだ一体残っている。開拓村の東西や更に南方などから地道にモンスターを集めたので、それなりの規模の群れを取り戻していた。


 進軍したのを見計らい、手薄になったセメイト村にやや小規模のモンスターの群れを襲撃させ、村の防壁を破壊しつくす。そうして村に残った連中に救難信号を発させ、進軍した連中の戦力を分断する、あるいは前後から挟撃させるよう仕向ける作戦だ。

 だがそれにも早々に邪魔が入った。周囲を警戒していた者たちに発見されてしまったのだ。

 咄嗟に野良モンスターの群れからスカルガードを中心とした群れを小分けにし、注意を引いた。その上で野良モンスターの本隊は少し離れた位置からセメイト村に進軍させる方針に切り替えた。


 しかしそれすらも察知したというのか。一人の召喚師が、今まさにその本隊の方へと単独でやってきた。


(とはいえ、察知したというならば召喚師が単独でこの場に来るのは不自然だが)


 本当に本隊の位置が察知されたならば、救難信号が出せる弓術士か黒魔導師でも引き連れてくるだろう。救難信号を発することができるのは、その二つのクラスに限られる。


(……ん?)


 見ると、その召喚師の動きがぎこちない。どうやら足をくじいているようだ。その状態でスカルガードを主体にした、消極的な戦い方をして凌ごうとしている。


(では、この少年がこの場に居るのは、ただの偶然か?)


 この場所は非常に勾配のきつい斜面によって作られた、深い窪地のようになっていた。単に足を踏み外し、斜面から転げ落ちてしまっただけの者かもしれない。


(よく見れば、戦い方も未熟だ)


 一般の召喚師がやるような、モンスターを闇雲にぶつける幼稚な戦い方だ。侵攻部隊から外され、村の最低限の防衛として残された落ちこぼれということだろうか。だとしたら、この場をこの少年単独で切り抜けることはまず不可能だろう。


(この状況でなければ、勧誘したかった所なのだが)


 ちょうどこの少年は、モンスターの本隊に当たってしまったところだ。こうなったら、もうヴァスケスにも止める手段は無い。召喚モンスターではなく、あくまで野良モンスターの群れ。接敵した以上、もはやヴァスケスには制御できない。

 それにここでこの未熟な召喚師一人を救うためだけに、単独で派手に動き回るのは避けたかった。この作戦はなんとしてでも成功させなければならない。


(……許せ、少年)


 これも、より多くの召喚師を救うためなのだ。

 ヴァスケスはそう自分に言い訳し、野良モンスターの群れに感知されないよう、大回りをして開拓村があった地点へと戻ることにした。

ほとんど物語が進展してないので、今日中にもう一話上げます。

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