男性陣の部屋!
※2021/12/06修正いたしました。
夕食が終わり風呂にも入り、後は眠るだけになった。
マシューは手にブラシを持って、自らの髪の毛を梳かしている。
「んしょんしょ」
マシューは長髪かつ毛量があるので、あちこちが絡まってしまい大分苦戦していた。
短髪のケヴィンとブライアンは彼の大変そうな様子を見守っていた。
最近まで手櫛で済ませていた人達なので、手伝いようがないからなのだが、彼らには別の理由があった。
「なぁマシュー。思ったんだが、いつもは魔法でやってるんじゃないのか?」
ケヴィンはベッドに寝転がり、首だけをマシューに向けていた。
「そんなことないよっ」
「にしては慣れてないようだが?」
ブライアンはベッドの上に座り、隣のマシューに指摘した。
二人の目は誤魔化せないので、マシューはいつもと同じように魔法で髪の毛の手入れをしだした。
「お、すげー」
「器用だな」
二人は静かにマシューのブラッシングを見届けた。
「後は……」
マシューは髪の毛を梳かし終えたので、魔法で三つ編みをし始めた。
二人はまた小さく感嘆の声を上げていた。
「ん?昼間みたいに根元は結ばないのか?」
マシューは昼間は根元を毛先にゴムを使用しているが、現在はしていない。
「寝る時はしないよ。ゴムが頭に当たると痛いんだ」
「へぇ」
二人は長髪にしたことがないし、もちろん髪を結ったことがないので、ただなるほどと感心しただけだった。
「そんなに長いと大変じゃね?」
「慣れれば平気だよ」
「マシューのように魔力が多い子どもは髪を伸ばしておくのがあるらしい。と言っても昔あった風習だがな」
なんでも、子どもは体の体積が小さいので、魔力が多いと体から溢れ出てしまい危険だとされていたそうだ。
なので髪の毛を伸ばして体の体積の代わりにしていたらしいが、現在この説は否定されている。
「だってよ。マシューどうする?」
ケヴィンは体ごとマシューの方を向き直し、面白そうに言った。
「伝統を好む人や一部地域では今もやっているし、切らなくてもいいんじゃないか?」
「うん。切らない!」
マシューの意志は固い。
「えー大変だろぉ?」
「ケヴィンは何も大変じゃないんだから、マシューの好きにさせてやれ。それに、魔導師にとって髪は術を使うのに必要だったりするらしい」
「そうなの?」
媒介にしたりもするが、欲しがる生き物がいるらしい。
「へぇ。欲しがるのは魔力を含んでいるから術を手伝った対価に貰うってことだな。……つかハゲちまったらどうするんだ?」
特に男性は女性に比べて毛量が少なくなってしまう人が多い。
中には若いうちから危ない人もいる。
「髭を伸ばせば良い」
ブライアンの言葉にケヴィンは思い当たる人物がいるのか、ああとだけ言った。
「二人はお髭伸ばさないの?」
マシューは今朝、二人が髭を剃っているのを見ていた。
「髭は老けて見えるから剃ってるんだ。今は若者で売りたいからな」
「イメージって大事だものね」
「舐められないように生やすって手もあるがなぁ。今は顔を覚えて貰わねぇと」
とうめいは人間の毛の重要さなど微塵も分からないので、ずっと疑問符を出していた。
「全身ツルツルの魔物には分からないだろう?」
「!」
ケヴィンの言うとおり、とうめいには分からないらしい。
「毛が生えてるスライムっていないの?」
「さぁ?見たことないな。そもそも毛穴も毛根がないんだから生えないだろう」
「くっつけるのは出来るんじゃないか?」
ケヴィンの言葉を聞き、マシューは早速自分の抜け毛をとうめいに乗せてみた。
「……ゴミを乗せただけになったぞ」
マシューは乗せ方が悪かったのかと思い、何度か位置をずらしてみたが結果は変わらなかった。
「ブラッドかスージーの毛はどうかな?」
「んースライムはツルツルだからいいんじゃないか?」
「それもそうだね」
マシューはとうめいから自分の髪の毛を回収してゴミ箱に捨てた。
彼がベッドの上に戻って来ると、とうめいが体を震わせた。
「……!……!」
とうめいは何かを言いたいようで、小さく何度も飛び跳ねてアピールしている。
「どうしたの?髪の毛欲しかったの?」
とうめいは体にバツを浮かばせた。
マシュー達はとうめいが何を訴えているのか考えてみたがさっぱり分からなかった。
「!!!」
とうめいはなんで分からないのかと怒り出した。
いつもはヴァージニアが察してくれるのだが、この場に彼女はいない。
「わわっ、とうめい怒らないでよ」
「!!!」
とうめいはもっと話がしたいのに出来ない。
なのでご立腹なようで何度もマシューを小突いている。
「とうめい、もう一度最初からやるぞ。髪の毛は関係ないんだよな」
「自分のツルツルの体を見せつけたい訳でもないんだよな?」
「けど、何かを自慢してるんだよね」
とうめいは手を生やして、そうだとアピールした。
「……!」
とうめいはベッドの上にあったマシューのブラシを一度体内に入れてすぐに吐き出した。
「ブラシがどうかしたの?」
とうめいは人間がやるように、手?を横に振った。
「もしかして、さっきマシューが髪を梳かしていたのを、撫でていると思ったんじゃねぇか?よし、皆で撫でてみよう」
三人はとうめいを撫でてみた。
とうめいは心地良さげにしていたが数分経ったら大きく飛び跳ねて三人の手から逃れた。
どうやら違ったらしい。
「駄目だ。分からん。明日女子達に意見を求めよう」
「……」
とうめいはとてもがっかりしたらしく、ぐんにゃりと潰れた。
「ごめんね。とうめい」
「……」
とうめいは残念そうに、うにょうにょと元の丸い形に戻った。
心なしかとうめいの輝きもいつもより弱い。
もしとうめいが人間だったら、ため息をついているだろう。
「大丈夫か?」
ケヴィンがとうめいを突くとプルンと一度だけ震えた。
通常時ならもっと震えるので、気分によって震え具合が違うようだ。
それともいつもは自分自身で震わせていたのかもしれない。
「そんなに伝えたいことがあったんだな」
とうめいはまだ落ち込んでいるのか無反応だった。
「そうだ!とうめい!一緒に遊ぼうよ。何して遊ぶ?」
「?」
とうめいは追いかけっこしか知らないので、遊ぶイコール追いかけっこなのだ。
牧場でも他のスライムと遊ぶときは追いかけっこだ。
なのでマシューの質問の意味が分からないのだ。
「……マシュー、静かに遊べるのにするんだぞ。騒いだら隣から苦情が来て追い出されるかもしれないし、少しでも破損させたらホテル業界のブラックリストに載るかもしれない」
「静かな遊びって何があるの?」
マシューは体を動かす遊びしかよく分からない。
「カードゲームとかか?」
「それでは、とうめいが遊べないだろう」
マシューもカードゲームはやったことがないが、ルールを説明すれば遊べるだろう。
しかし、ルール以前の問題でとうめいはカードが持てない。
「僕と一緒にやれば平気だよ」
「!」
ということで、マシュー達はブライアンからカードゲームのルールを教わり、三人でババ抜きをやることになった。
マシューが引くカードはとうめいが選ぶ。
「とうめい、どれがいいかな?」
「!!」
マシューがとうめいの指示通りにカードを引くと、マシューの手札を減らせた。
この後も順調に手札を減らせ、ブライアンがマシューの最後の手札を引いたためマシューは一番最初に上がれた。
「やったぁ!」
マシューととうめいは両手を挙げて喜び、マシューはとうめいに抱きついた。
その間にケヴィンはブライアンのカードを引くが揃わなかった。
「んー揃わねぇな」
ケヴィンが呟いた間にブライアンがカードを引いた。
「俺も上がりだ」
次もその次も、マシューは一番最初に全ての手札をなくせた。
マシュー達は喜んでいるが、他の二人は怪しみだした。
「毎回持ってるカードと同じ数字を引けるのって変じゃないか?」
「そんな事ないよ。何回か引けなかったよ」
「いいや、その後は俺がブライアンから引いたのをそのまま引いている時があった。ってことは、俺の手元にはマシューが持っているカードと同じ数字のがなかったんだ」
ケヴィンはジロリととうめいを見下ろした。
「?」
とうめいは何の事だと知らんぷりをしている。
「俺達に気付かれないように覗いていたんだろう。思った以上に頭がいいみたいだな」
「?」
とうめいはまだ知らんぷりをしている。
それに業を煮やしたケヴィンはとうめいを突いた。
「ズルして勝ってもマシューのためにならないだろう」
「とうめい、本当に覗き見してたの?」
「?」
とうめいは首?を傾げて分からないふりをしている。
すっとぼけているようだ。
「悪い奴め。今度は指に魔力を纏って突いてやる」
ケヴィンは悪い顔をし、自身の人差し指に吹雪属性を纏わせた。
「どうなるの?」
「物理攻撃ではなく魔法攻撃になるな。ケヴィン、やめておけ」
「ちょっと突くだけだって」
ケヴィンはブライアンの制止を聞かずに、とうめいに触れるか触れないか、軽く突いた。
彼が突いたのは、とうめいが浮かび上がらせている疑問符の丸い部分だ。
「!!!」
「うわー!とうめーい!」
ケヴィンに突かれた瞬間とうめいが飛び上がり、透明から半透明になってしまい動かなくなってしまった。
「あ、あれ?」
「なんか冷たくなってるよー!とうめいしっかりしてー!」
マシューは涙目になりながら、冷たくなったとうめいの体をさすっている。
しかしとうめいはピクリとも動かず、カチカチになっている。
色も半透明から徐々に白くなってきているようだ。
「だから言ったんだ。とうめい、しっかりしろ。今、回復魔法をかけてやる」
ブライアンがとうめいに手をかざすと、柔らかな光がとうめいを包み込んだ。
すると、次第にとうめいの体から白さがなくなっていった。
「ああっ、とうめいが透明に戻っていくよ」
「これでもう大丈夫だろう。ケヴィン、お前の属性はほとんど水分のスライムとは相性が悪いんだ」
そう、とうめいは凍ってしまったのだ。
マシューは安堵からとうめいを抱きしめて涙を流した。
「…………?」
とうめいは何が起こったのか分からず、辺りを見渡している。
ケヴィンに突かれた箇所を気にしているので、凍った時の記憶だけないようだ。
「とうめい、すまない……」
「!!」
とうめいはケヴィンが怖いのかマシューの後ろに隠れた。
とうめいはケヴィンを睨んでいる!
(ババ抜きのシーンは合っているのだろうか……?)




