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(20)いがぐり消しゴム

【前回】

水から解放された晴太は、雨音と共に例の海水処理場の麓へと向かう。そこで雨音と話す内に、雨音も、もちろん水や晴太も、同じように少年少女であることに気付く。

「あ、おかえり、お兄ちゃん」


晴太が家に帰るとそこには、部活の大会で首都に行っていた夏希の姿があった。


「ただいま。あと夏希もおかえり」


木曜の午後に出発したため顔を合わせるのは木曜の朝以来となる。


「試合ねー、負けちゃったんだよね-。なんか相手が強くって……」

「そうなんだ」

「それより見てこれ!」


試合結果の報告もそこそこに、夏希は小さな袋を晴太に渡した。


「お兄ちゃんへのお土産。みんなで選んだんだよ!」


みんな、とは部活のチームメイトのことだろう。確か、中央寺アスカと原田桜子といっただろうか。晴太は会ったことがないのだが、夏希の話によく出てくる二人だ。そんなことを考えながら晴太は袋からそれを取り出す。


「…………何これ?」


出てきたのは何やらトゲトゲとした丸い物体。首をかしげる晴太に夏希は嬉々として言った。


「それね-、消しゴムなんだよ!」

「消しゴム?ああ……ホントだ」


確かに、よく見るとそれは消しゴムだった。表面にくっついていたタグを見ると『いがぐり型消しゴム』と書いてある。しかし、こうもトゲトゲしていてはかなり使いにくい。


「あ、なんかね、それ半分に割れるみたいなんだよね」


夏希に言われて晴太はその消しゴムをいじる。よく見ると真ん中あたりにそれらしい亀裂が入っている。


「これか……?あ、割れた」


夏希の言うとおり消しゴムは半分に割れた。そして中を見ると、栗の実と思われる欠片がいくつか入っている。まさにいがぐり、色も本物に似せており、かなりの完成度だ。しかし消しゴム本来の用途である消しやすさを犠牲にして造形の完成度を追求するとは、かなり攻めた商品である。そしてこれをお土産として買ってくる夏希もかなり攻めている。


思えば、夏希は昔から変わった物を見つけてくるのが上手かった。変わった形の石や変わった形の枝、用途不明の物を買ってくることもしばしばだったおそらく変わった物が好きなのだろう。


「夏希は面白い物を見つけてくるね」


晴太がそう言うと、夏希は嬉しそうな顔で笑うのだった。


「えへへ、でしょでしょ?これで今度のテストもばっちりだね!」

「え?これをテストで使うの?」

「うん!」

「あ、じゃあ……使おうかな」


先生に怒られないだろうか。晴太は少し心配になった。

ありがとうございますとともにすみません。


クッソ短いですが、色々考えた結果ここで切ることにしました。っていうか、いがぐり消しゴムって実際にあるのかな?一応自分で考えたつもりなんですが。なんにせよ、攻めてますよね、だいぶ。

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