第23話(累計 第69話) デイアーナ視点:弟子たち
「歴戦の勇者にして凄腕のギガス乗りも愛する弟子相手だと戦いにくいのかしら?」
立って報告をするアタシを嘲笑するように豪華な椅子から見え上げる娘。
その外見は、まるで豪華な鑑賞人形や美術石像の様。
しかし、その表情は完全にイタズラ娘だ。
「プロト様。あまりアタシをイジメないでください。戦う以上は手加減はしません。それがトシ坊と別れる前に約束していた事ですから」
プロト。
超古代文明によりつくられた人類の上位種を名乗る者達の長女。
貴族同士の抗争に巻き込まれ、死んでいたはずのアタシは彼女たちに救助された。
そして得体のしれない機械を沢山ぶち込まれ、今や人工な心臓の停止スイッチを握られている。
……生殺与奪なのよね、文字通り。
「そうなの。じゃあ、慣れない機体で仕留めきれなかった。そういう事にしてあげるわ、デイアーナ・パドレスさん」
美しい金色の髪をかき上げるプロト。
小憎らしい小娘たちに命を握られているのは、少々癪だ。
だが、愛する弟子の進歩を見られたのは感謝である。
……トシ坊、すっごく強くなっていた。もう一度、あの可愛い顔を見てみたいものね。
「何か不満ですか、プロト様?」
「いえ。面白くなったと思いますわ。愛し合う師匠と弟子が殺し合いをするなんてね」
「……悪趣味ですね」
思わずアタシは愚痴ってしまう。
この上位種を名乗る小娘は、人を弄ぶことばかり考えているのだろうか。
「プロトお姉さま、少々言い過ぎですの。デイアーナ様は十分頑張られてます。映像で、あの凄い機動を見られていますよね、お姉さま。愚かなラザーリとは大きく違いますわ」
わたしと一緒に神話級ギガスに搭乗していたアルクメネ。
暗闇の中、金色の瞳を光らせて姉に抗議してくれた。
……アルクメネという子、アタシの背後席に座って、戦闘中は悲鳴ばかりあげていたものね。少々激しいマニューバーを見せすぎたかしら?
「あら。アルクメネにも怒られてしまいましたわ。では、その優秀なデイアーナさんにお願いがありますの。今度、わたし共の秘密を知り過ぎたカレリアを襲撃しますが、その際に馬鹿の面倒を見て下さらないかしら?」
「……『命』を握られているアタシに拒否権なんて最初からないわ。お願いなんて言わずに『命令』してくださればいいじゃない?」
「それでも言葉を尽くして『お願い』をするのが、理性的な人の行動ですわ、デイアーナさん」
……よくもまあ、いけしゃあしゃあと言える事。アタシの表面思考は全部見える筈なのに、イヤらしいわ。
「はい。了解しました」
◆ ◇ ◆ ◇
「デイアーナ様、少しお話をして宜しいでしょうか?」
「ええ。どうぞ、アルクメネ様」
アタシにあてがわれた私室。
そこのドアをノックして入っていたのは、ノルニルの美少女アルクメネ。
アタシに貸与された神話級ギガス「バイラヴィー」に搭乗し一緒に戦ってくれた娘。
……この子、前より表情がはっきりしてきた気がするわね。
出会った当初、アルクメネは能面の様な無表情な人形だった。
しかし、先日のトシ坊との戦闘以降。
アタシに対してもよく話しかけてくれるようになった。
……トシ坊が可愛い弟分なら、この子は妹枠かしら? まあ、トシ坊は可愛すぎて『食べ』ちゃったけど。
「わたしの事はアルクメネと呼び捨てにして頂いて構いません、デイアーナ様。戦闘中に些細な事で時間を取るのは危険ですから」
「では、アルちゃんとでも呼ばせてもらおうかしら。で、人類の上位種なアルちゃんは、ただの人間のオバちゃんに何の様かしら?」
アタシはプロトに弄られた仕返しにアルクメネをアルちゃんと呼んでみると、意外と好印象な様子。
彼女は「え、あ、アルちゃん……。う。え。あ」と白磁な顔を真っ赤にしている。
「デ、デイお姉さま。貴方は戦う事が怖くないのですか? お身体中に傷跡がいっぱい。それに一度は死んでいますのに? わたしは怖くてたまりません。画面越しの戦いは幾度も見てきましたが、実際の戦いはあんなに恐ろしいなんて……」
「そうね。アタシも怖くないと言えば嘘になるわ。そりゃ戦わないで済むのなら一番ね。でも生きている以上、何かと戦う運命なのはヒトも貴方達も同じはず。それが他人との戦いなのか、自分自身とかは色々だけれども」
今度はアタシの事をお姉さまと呼んで来たアル。
この子、どうやら姉以外のヒトとは積極的に触れ合った事がないようだ。
そして画面越しと実戦の違いを今更気が付いた。
「わたし。実はプロトお姉さまとデイお姉さま以外とはあまり話した事が無いのです。情報を集めてくる妹たちとは業務以外の事は話しませんし、ヒトとも長くお話しするのはお姉さまとが初めてで……。なんというか、わたし達ノルニルと違ってお姉さまは眩しいのです」
……この子は箱入り娘なのね。優秀な分、頭でっかちになってしまった。そして姉のいうがままに行動をしていたのが正しいと思い込んでいたと。
「アタシなんて、戦場でしか生きる場所が無かったオバちゃんだよ? 大したこともないし、アンタ達とちがって綺麗でもないよ」
「いえ、お姉さまはとっても綺麗です! ご自分を卑下なさらないでくださいませ」
頬を朱に染め、恋に恋する娘の表情をアタシに向けてくるアル。
戦場の恐怖から情緒、感情を得たような気がする。
「はいはい。ありがとね、アルちゃん。じゃあ、もひとつ教えてあげる。他人の意見はあくまで参考。最後は自分で考えて決めなさい。そして決めたら行動。結果が間違っていても、生きていたらOK。反省して次に生かしたらいいわ。戦いは、一生続くんですもの。負けても生きていたら勝ちね」
「はい、ありがとうございます! わたしにも何かと戦う運命があるのですか、お姉さま?」
「それが何なのか。それはオバちゃんも教えては上げられないの。でもね、戦う術はいくらでも教えてあげるわ」
「お姉さま! わたし、もっと色々な事を知りたいんです。ご教授お願いします」
両手をぎゅっと握り、赤い顔で懇願してくるアル。
アタシは苦笑しつつ、小さな娘の頭を撫でた。
「ええ。良いわ」
「おねぇさまぁ!」
……アタシは自分の子供を産めなかったけれど、トシ坊やこの子に何か残せそうね。さて、トシ坊と次に戦う時は、アタシが死んでた後の話を聞きたいから、少しでも長く戦いたいわ。それにこの子には生き残ってもらいたいし。
アタシは、感激のあまり抱きついてきたアルを優しく抱き返した。
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