第24話(累計 第70話) 師匠との再戦に対して。
「……そうか。デイアーナ殿が居たから、トシ殿は今のトシ殿になられたのじゃな」
「はい。戦う方法、生き残る方法。社会の仕組み、そして愛情。全てを僕は師匠に貰いました。そして、最後には身代わりになって命まで貰いました」
僕は、伯爵様や妹たちに師匠の事を色々話した。
大事に僕を育て、愛してくれた師匠の事を。
……性的プライベートな事は話さないけどね。僕の『初めて』の人は師匠なんだ。
「そうなんだ。わたしと別の奴隷商に買われて、そんな大変な目に遭っていたんだね、お兄ちゃんは」
「それをいうならナオミの方が大変だったよ。僕は戦闘奴隷扱いだったとはいえ、師匠や仲間達には大事にしてもらっていたし」
ナオミは僕の境遇を大変だったと感心してくれているが、僕以上に彼女の方が大変だったと思う。
僕は戦う事で命の危険はあったが、戦闘以外は安心できる仲間と一緒だった。
しかし、ナオミは普通に生きるだけでも、命や貞操の危険にずっと晒されていたはずだから。
「で、そんな『大事な』ヒトと戦えるの、トシ? 甘過ぎる貴方じゃ無理じゃないかしら?」
「……正直、厳しいと思う、エヴァさん。技量も経験も師匠、姉さんの方が上。僕の戦い方自身が姉さんから学んだ部分が基本にあるから、手の内を読まれるんだ。その上、恩義ある人だから……」
【ミサイルで追い込むのは、凄く上手いですね。避けるのに必死になりますから、そこに隙が出来てしまいます。幸い、向こうも空中戦はそこまで慣れていなかったのが幸い。二次元的な攻めでしたから、逃げる事が可能でした】
この間の遭遇戦。
師匠は僕と戦うという認識があったのだろう。
僕が避ける時の癖を見抜かれていて、ヴィローのいう通り罠に追い込まれていた。
しかし、こちらが逃げの一手に集中。
かつ地形を利用しきっての逃亡をしたから、生きて帰れた。
迂闊に攻めに行けば、そこの隙を狙われていたに違いない。
……師匠、引き際の大事さも良く言ってたな。
「だからこそ、次は完全に動きを呼んでくるでしょうね。だから、僕。今回は勝てるイメージが思い浮かばないんです」
「だったら、おにーちゃん。こっちはデイアーナさんが知らない方法で戦えばいいじゃない? 知らない事は対応できないでしょ? エヴァおねーちゃんの時も、知られていない装備で倒せたし」
「あ! そ、そうか」
僕はリリの一言で、固まっていた心。
負けて当たり前という考えを、一気に壊された。
……向こうは僕の『これまでの】動きを知っていても、『これから』の行動は知らないんだ。それに、一回戦ったから、敵の攻撃手段も一部とは言え、分かったんだ。
「流石はわたくしの可愛い妹ね、リリちゃん。ヴィローを更に改造しちゃって、ぶっ倒しましょう。どうせ、トシの事だもの。相手の命までは奪わないんでしょ。なら、気にせずにぶっ倒して、どうして敵に回ったのかを、後からじっくり聴いたら良いじゃない。どうせ、イジワルなプロト姉さまが噛んでいるに違いないわ」
「お兄ちゃんなら絶対に勝てるよ。わたし、応援しちゃう!」
「トシ殿。今は出来る事を全部すべしじゃ。どうせ、いずれノルニルとやらの手は、ここまでの伸びてくるじゃろう。その時に勝てば何の問題も無いのじゃ!」
皆が皆、僕の背中を押してくれる。
【マスター。私の改造プランはどうなさりますか? 既に本体の改造は難しいですが、追加装備ならいくらでもOKです。先日、神話級ギガスの中枢部を入手しています。あれを活用しては如何ですか?】
「皆、ありがと。僕は負けないよ。そういえば、師匠が昔言っていたんだ。もし、僕と師匠が戦う事があってもお互い手は抜かないって。だから、僕は真剣に戦って師匠を取り戻すよ」
……他にも言ってたよね。負けても生きていたら勝ちだって。最後まで立っていれば、それで良いって。
僕たちは再び勝つために立ち上がった。
◆ ◇ ◆ ◇
ということで、僕たちはラウド騎士団のギガス整備工場にアカネさんを訪ねてきた。
「で、またアタイに泣きつくのかい。はぁ。神話級をいくらでも触れるっていっても限度があるんだけど」
「ごめんなさい、アカネさん。でも敵は今までで最強なんだ。打てる手は全部打っておきたい。だから、お願いします!」
「おにーちゃんを助けてあげて、アカネおねーちゃん」
「申し訳ないけど、お願いしますわ、アカネさん」
「兄がいつもお世話になっています。今回もお願いします」
【アカネ殿。先日撃破した神話級ギガスの動力部と重力制御部。あれを使えば、何かできませんか? 今からマザー殿に通信をして、何か出来ないかを考えてもらいます】
以前、僕が倒して持ち込んだギガスの修繕はひと息をついており、今は伯爵様の専用ギガス「バーグマー」の改修作業をしていたアカネさん。
……他の整備部隊員さんたちも、間借りしている共和国軍のギガスや騎士団のギガスを整備してくれているんだ。この人達が頑張ってくれているおかげで、僕は戦えるよ。
「ふぅ……。で、今度の相手はこの間遭遇したアイツかい?」
「はい。おそらくですが、パイロットは僕の師匠。手の内の大半は読まれていると思います」
僕は、アカネさんに敵の装備やパイロットの事を説明した。
……ヴィローがモニターに戦闘データーを表示してくれたのは助かるよ。
「なるほど。確かに凄腕だし、機体も強力。だから、敵が知らない手を使いたいんだな。分かった。じゃあ、アタイの趣味全開になるけど、皆、文句は言うなよ。ヴィローの旦那も想定外なんて嘆くな!」
「はい。お願いします」
【お願いします。アカネ殿】
「おねーちゃん、ありがとー」
「お願い致しますわ」
「毎度、兄がご迷惑をおかけします」
「うふふ。神話級な魔力炉一個分のパワーを全部、重力制御とかにぶち込んだら、どうなるのかなぁ。今も凄いのに威力、ワクワクしちゃうよぉ」
……あれ? これ、間違えた?
「トシ。これ間違っていないけど、間違っていないかしら?」
無邪気に喜ぶ妹ズを他所に不信そうな顔のエヴァさん。
僕も、やや不安を感じてしまった。
「大丈夫……。だと、良いですねぇ」
僕は師匠と戦うのとは、別の不安に襲われた。
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