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第57話(累計 第103話) 大気圏突入直前。割れる星!

「とりあえず、今出来る事はこれで最後かな」


「ですわね、トシ様。既にレールキャノンの砲弾、ミサイルの残弾はゼロ。ビーム系も既にここまで距離が離れてしまっては、効果は薄いですし」


「トシ、後3時間程で、ヴァハーナは大気圏突入コースへ入るわ。姿勢制御をお願いね」


「おにーちゃん。今回は、これで納得しておこうよ。もう一回宇宙に来てもいいしね」


 今、僕たちは惑星オデッセアを周回する円軌道に入っている。

 破壊及び加速作戦を行っていた彗星ラーフ本星は惑星から離れる軌道に入っている。

 計算だと、このまま惑星によってスイングバイ、惑星の重力場により加速され惑星周回楕円軌道から太陽、恒星周回軌道に移る。


 ……と、エヴァさんから説明を受けたけど、理解している訳じゃないから、心配なんだよねぇ。


「少なくとも、これで十年単位での危機は去ったのですから、安心しましょう、トシ様」


「ですね、プロトさん」


「なに、トシ。妙に不安そうな表情ね。大気圏突入が怖いのかしら?」


「おにーちゃん。どうしたの?」


 僕の中で不安がどんどん大きくなる。

 全天周モニター上では、激しくガスとチリの尾を吹き出し惑星から離れていくている彗星が見える。

 反対に、もうじきヴァハーナは惑星の重力圏に捕まり、地上へ戻る。

 もう一度宇宙へ戻るには、軌道の都合や加速用ブースターの製造から考えて半年は時間が必要らしい。


 ……って、これもエヴァさんが言ってたんだよね。


「気にしすぎちゃったのかな。リリ、ありがとう。じゃあ、一旦進行方向側へ後方、スラスターを向けて減速体制に入ろう。で、良かったんでしたよね、エヴァさん」


「そうね。軌道修正お願い……。え! みんな、彗星に注目。割れるわ!」


【これは不味いです。破片が!】


 エヴァさんの警告で、全員の視線が彗星へ向かう。

 メインモニター上に拡大された映像では、亀裂部分からガス噴射が激しくなった彗星が、いくつもの破片にバラバラになっていくのが見えた。


「破壊行動で構造が脆くなって、ロシュ限界。惑星の潮汐力に負けたのね」


「プロト姉さま。今は破壊された要因よりも、破壊された破片の軌道計算が優先ですわ。トシ、逆噴射は一旦停止。リリちゃん、計算を手伝って」


「うん、エヴァおねーちゃん。ヴィローもお願い」


【御意、姫様がた】


 僕はモニターを注視くらいしかやることがなく、無言のまましばらく砕けゆく彗星を眺めていた。


 ……これ、半分くらいは今の軌道じゃないかな。だったら、別に……。


「え!? このままじゃ、直径500メートル越えの破片が惑星に落下するわ。落下予想地点は……! 人類の生存権内じゃないの。これじゃ、何のために破壊活動をしたのか、分からないわ」


「他の破片は……。惑星落下しそうなのは、他は一メートル以下。これなら大気圏で消えそう。エヴァちゃん、問題の破片の軌道要素をお願い」


「おにーちゃん。これ、どうしよう。もうミサイルも無いのに……」


 画面上に落下する破片の軌道が映し出される。

 このままでは、惑星の低軌道を何回か回った後に、人類が多く住む地域付近へ落下するらしい。


「皆さん、この破片をヴァハーナで少しでも破壊しましょう。まだ熱分解光線砲ディスインテグレーターも近接用アームもあります。最悪、ヴィローで直接破片に飛び移って、限界高度まで破壊行動をします」


「まったく、男の子はすぐに無茶を言うのね。分かっているかしら? 既にヴァハーナは惑星周回低軌道。高軌道から落ちてくる隕石との接触時間は数秒しかないわ。今から限界加速をしたら、今度は大気圏突入時用の推進剤や魔力が足りなくなるのよ?」


「プロト姉さま。トシの無茶は今に始まった事じゃないわ。お姉さまを倒すときも、わたしを倒すときも無茶ばかりして、それでも勝ってきたの」


「そーなの。おねーちゃん達、わたしたちで、何とかしよーよ」


 僕の提案に、苦笑しつつも準備を始めてくれるノルニルの美しき姫達。


「ありがとう、皆。こうなったら、完全に砕いて皆を守るぞ、ヴィロー」


【御意。さあ、大一番でございますぞ! 皆々様方】


「では、加速して軌道を上げます。詳細計算を宜しくです」


 僕はスロットルを最大限に押し込み、(加速度)を激しく感じた。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「これ以上の加速は、帰りが無理になるから止めてね、トシ」


「うん、エヴァさん」


 僕らは惑星周回軌道を高い位置にまであげ、落下するであろう破片と中軌道付近で交差する位置にまでもっていった。


「計算では熱分解光線砲の射程にいるのは五分間。接近戦が可能なのは最終的に数十秒程度ね。射程内に入ったら減速を開始して、少しでも接触時間を増やしますわ」


「細かい計算はお願いします、プロトさん。エヴァさんは戦闘中の情報支援を。リリは少しでも魔力炉の最大出力域での安定稼働をお願い」


 全天周モニターの頭上方向、どんどん大きくなっていくガスをまき散らす破片が見える。

 チリも多く吹き出すために、尾の後方に入りつつあるヴァハーナは、沢山のデブリ衝突を受けて機体がガタガタと揺れる。


「じゃあ、作戦開始。初弾ターゲット。エヴァさん、お願い」

「トシ、ここを狙って」


 モニター上にターゲットマークが表示される。


「発射! あたれー!!」


 僕はヴィローの腹部に装備された熱分解光線砲のトリガーを引いた。

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