第56話(累計 第102話) 愛は脅威を砕き、世界を幸せにする。
「……ということで、これが氷小惑星『ラーフ』の表面マップ、及び立体構造図ですわ」
「では、この脆い部分にレールキャノンで重力子弾を。更にミサイルをこの辺りに広範囲に撃ち込んで、ガスの発生量を増やすのですね、プロトさん」
「それで、多分ラーフはいくつかの欠片に分裂。その後は加速された大半は惑星落下軌道から逸れ、小さくなった一部は惑星落下時に空力加熱で溶ける訳ね」
「リリ、難しい事は分かんないの」
僕らは一旦休憩室に集まり、そこで作戦会議をしている。
今、ヴァハーナは氷小惑星。
いや彗星となったラーフとほぼ同じ軌道を、やや後方から追いかける形。
太陽風に流されて、なびくガスやチリの尾から少し離れた場所を飛行している。
……こういう状況なら、ヴィローに航行管制を任せておいても問題無いからね。しっかし、油断大敵。いつ、エヴァさんが妙な事を言うか分からないし。
「あら、トシ。わたしを警戒しているの? もうエッチな事は全部終わるまで言わないわ。リリ、貴方もトシに作戦終了までは迫り過ぎないようにね」
「うん、おねーちゃん。わたし、おにーちゃんの裸見て満足しているもん」
僕の思考を読んだのか、はたまた顔に考えが出ていたのか。
エヴァさんは、ちゃんとリリに釘を刺してくれるのだが、当のリリは分かっているのか、分かっていないのか。
今も僕の腕に自分の腕を絡ませ、男性には存在しない、されど「かすか」だが確実に存在する柔らかな「小山」を僕に押し付けるリリ。
まったく油断も隙も無いのだが、満面の笑みを持つリリを前にして、力任せに引き離すのも違うと思った。
「リリちゃんは満足している様だし、エヴァちゃんも絶好調。わたくしも、姑や小姑の立場として楽しませてもらいました。トシ様、ここで決めましょう。そして、帰ったら盛大な結婚式をしましょうね」
「はい! 皆さん、宜しくお願いします」
僕は、ステキな姉妹たちに頭を下げる。
僕一人だけでは何もできなかった。
……リリと出会わなかったら、復讐に身を焦がして破滅していたんじゃないかな?
リリと出会い、ヴィローをマザーさんから預かって人生が大きく変わった。
……そして伯爵さまと出会い、ワイズマンやエヴァさんと戦ったんだ。ワイズマンを殺した事は後悔していないけれど、時々寂しそうなエヴァさんを見ると、悲しくなるよ。
そして多くの強敵と戦った。
ラザーリさんとレダさん
師匠とアルクメネさん。
そして、プロトさん。
……僕一人じゃ誰にも勝てなかったし、皆不幸になっていた。皆が助けてくれたから、僕は敵を殺さずに倒す事が出来たんだ。そして、今はみんなで笑いあって助け合いをしている。
「今更なの、おにーちゃん」
「全く妹といい、妹嫁といい。ボケボケなんだから、わたしがしっかりと第二婦人の枠に入らなきゃ、安心できないわ」
「今に思えば、トシ様は我らノルニルのパートナーになる運命だったのでしょうね。凝り固まったわたくしでは、敵を作るばかりでしたし」
皆が皆、僕に対し笑みを返してくれる。
「もー。真面目にお返事したのに。じゃあ、作戦開始しましょうね」
「はい!」
◆ ◇ ◆ ◇
「姿勢制御及び慣性制御開始。四連レールキャノンに魔力伝達。砲身に通電、冷却魔法発動。おにーちゃん、レールキャノン、いつでも撃てるよ」
「連続発射に備え、各砲塔に重力子弾を装填。照準、全て目標地点へロック。トシ、トリガータイミングは任せたわ」
「ヴァハーナ、全能力完全開放。魔力炉、全開運転。ミサイル、各目標座標を入力。トシ様、後は良しなに」
各員が戦闘準備をしてくれている。
今度の敵は、オデッセアに落ちようとしている彗星。
向こうからは攻撃してこないだろうけれど、あまりに巨大すぎる。
象VS蟻どころではないのだが、今更ここまで来て辞められはしない。
「ありがとう、みんな。ヴィロー、いくよ」
【御意。我は人類すべての剣。名も無き人々を守る力なり。今、その力を解放せり!】
僕は深呼吸をしたのち、命令を下してトリガーを引いた。
「うちーかた、始め。ファイヤー!」
慣性制御で打ち消せないショックが、僕らを襲う。
初弾が四本の砲身から紫電を放ちながら飛んでいく。
そして、ターゲットにしていた彗星の地表上にあるヒビに突き刺さり、奥の方で炸裂した。
「スラスター、噴射。彗星との相対速度を維持したままに」
【御意、プロト姫】
「まだ、一発くらいじゃダメだね。次弾、発射準備」
「うん、おにーちゃん。三連射まで可能だよ」
彗星表面のヒビは僕の攻撃で大きくなり、そこから吹き出すガスも多くなる。
しかし、それは巨大な彗星の一部でしかない。
「じゃあ、次はバースト連射を。みんな、いくよ」
「了解」
四本のレールキャノンから紫色の光を放った弾が、三発ずつ放たれる。
その反動で大きく機体が揺れるが、各部スラスターが起動して姿勢を直す。
「これで、どうだろう?」
彗星上の亀裂がどんどん広がっていくが、まだそれは彗星全体の三分の一にも至らない。
「どうしよう、リリ。これじゃ、どうにもならないよ」
「おにーちゃん、落ち着いて。計算し直したけど、軌道が大分変ってるの。プロトおねーちゃん、細かい軌道計算をお願い」
「はいはい。可愛い妹と妹婿を守るのは姉の仕事ね。ふーん。彗星のガス放出量が多くなったから、多分このまま攻撃をしていたらいいわ」
僕は、攻撃があまりに効かないのを嘆くと、リリやプロトさんが慰めてくれる。
「モニターに軌道を表示するわ。今のままなら、惑星から少しずつ離れていきそうね」
エヴァさんは、サブモニターで彗星、ヴァハーナ、惑星オデッセアの軌道要素を表示してくれる。
彗星の軌道はどんどん惑星と重なる部分から遠ざかっている。
「ありがと、みんな。じゃあ、もう一回計算して、最適な部分に残り全部を撃ち込もう」
「了解」
【御意】
僕らは、さらに巨大な彗星へ攻撃を続けた。
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