運転免許を取得してよかったコト
自動車の運転免許を取得して、行動範囲が随分と広がった。
それは、そうだ。これまで自分の意志で移動するには、徒歩と自転車しかなかったのだから。あとは、せいぜいバスに乗るとか、誰かの自動車に乗せてもらうとか、そのくらいしかない。
それが、いくらボロとはいえ、自分の自動車を持つことができた。これは非常に大きい。
これまでは、ホームセンター1つに行くためにも、自転車をエッチラオッチラこいで行っていた。
どうしても肥料などの重量が重い物を買う時には、誰かに頼んで買ってきてもらうか、何かの用事のついでに車に乗せていってもらうかしていた。いずれにしても、とても気を使う行為であった。
僕は、できる限り人には頼りたくないのだ。何か頼み事をしてしまうと、どうしても悪い気になってしまう。なので、自分でできるコトは、できるだけ自分でするようにしていた。
そんなわけで、自分の力で(というか自動車の力で)遠出できるようになったのは、非常にありがたかった。
また、自動車1つ運転できるようになったことで、仕事の幅も広がった。
これまで僕が頼んでいたようなコトを、今度は僕が頼まれるようになったのだ。隣街のホームセンターやスーパーまで買い物をしてくるとか、そのような用事だ。
そうして、そのお礼にちょっとしたお菓子だとか食べ物だとか、時にはいくらかのお金をもらえることもあった。
さらに、近所の農家のおじさんの手伝いで、軽トラだとかトラクターだとかも乗せてもらえるようになった。これは、貴重な経験だった。
畑の上をトラクターに乗って走り回り土地を耕すのは楽しかったし、軽トラの便利さも理解した。人は2人しか乗れないけれど、後ろに山のように荷物を載せて走ることができるのだ。肥料だとか野菜だとか、乗せ放題だ。
「次に車を買う時には、絶対に軽トラにしよう!」と心に決めたくらいだった。
こうして自動車の免許を取得して、できるコトの幅が一気に広がった僕だったが、同時になんだか目標を失ってしまった。
できるコトは増えたはずなのに、日々の暮らしは変わらない。毎日毎日、同じような作業の繰り返しで、頭がおかしくなってしまうそうになる。
「ああ~あ。僕は、いつまでもこの小さな田舎街で暮らし続けるのだろうか?このまま家事だとか農作業だとかに追われて、いずれどこかの農家にでも婿入りして、一生畑作業を続けながら生きていったりするのだろうか?」
そんな風に考え、憂鬱になった。
そろそろ、次の目標が必要だった。
何かもっと別のコトがやりたかった。畑を耕したり、草を刈ったり、お皿を洗ったり、洗濯をしたり。そういうのとは全然違う別のコトが…




