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大河の真ん中に立ち、流れを止めようとする

 自動車の免許を取ったりしている間に、いつの間にか時が過ぎ去ってしまっていた。

 その後も、日々の労働に忙殺されていく。


 去年と同じように夏が過ぎ、秋がやってきた。

 収穫期になると去年以上に忙しくなった。なにしろ、自動車の運転免許を取ってしまったのだ。必然的に、近所からの頼まれ事は増えていく。

 収穫された野菜や果物を隣街の市場に出すために、僕は近所の農家さんたちに頼まれて軽トラを運転した。


 何も考えず、同じ日々の繰り返しの中で、ただ時間ばかりが過ぎていく。時の流れは止められない。

 まるで、大河の真ん中に突っ立って、その流れを止めようとするかのごとく。そんなのは無理に決まっている。僕は完全に無力だった。


         *


 気がつくと、もう冬が近づいていた。

 畑仕事に精を出し、たまに保育園に給食を食べに行く。空いた時間でアニメを見たり、映画を見たりもしていたけれども、もう以前のように浴びるほど見るというわけにはいかなくなっていた。

 物理的にも精神的にも、そんなゆとりはなくなってしまっていた。


「もう、そんなに映画も見なくなったし、衛星放送の有料放送も解約しようかな…」

 そんな風に思いつつも、踏ん切りがつかずにいた。たかだか2500円で最新の映画が見れる。前みたいに頻繁ひんぱんにというわけにはいかなくなったし、やっている映画も再放送が多かったけれども、完全になくなってしまうとそれはそれで寂しいものだ。

 近所にレンタルビデオショップもないことだし、残しておいても悪くはないか…

 それに、冬になれば、また暇になるだろう。農作業は完全にストップし、家の中にひきこもりの日々が続く。

 そう考えて、ずっと契約しっぱなしだった。


         *


 最近、近所の人たちは、絵を描いたり詩を書いたり曲を作ったりと、創作活動に打ち込むようになっていた。中には演劇の経験者たちがいて、自分たちで劇団を立ち上げたりもしていた。

 こんな田舎いなかにも物好きな人たちがいるものだ。

 でも、それだけ人々の心にゆとりができてきたというコトなのだろう。そういう意味では、このベーシックインカム大実験も成功だったといえるかもしれない。


「僕も、もうちょっと心にゆとりができてきたら、何か始めるかな~?」

 そんな風に思った。

 最近、ちょっと仕事のしすぎだったかもしれない。その割には大した収入にはなりはしない。確実に郵便局の貯金通帳の残高は増えていっていたが、それでも都会に出て働くのに比べれば微々たる収入だ。農作業なんて、そんなにもうかるものではない。

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