結局、全員を公平に救うのは無理なのではないだろうか?
シェアハウス同士の集まりにて、僕はこの前の疑問を提示してみる。
「全員に同じ額を配るというやり方は、かえって不公平になるのではないだろうか?」と。
すると、「そりゃあ、そうさ」とすぐに答が返ってくる。
「人によって必要なお金の額は違ってくる。10万円ないと困る人もいれば、2~3万円もあれば随分と生活が楽になる人もいる。わずか1万円を、のどから手が出るほど必要にしている人だっている。それを一律で同じ金額を配って、みんなを幸せにしようって方が無理があるんだ」
「じゃあ、このベーシックインカムってのは、なんなんですかね?最初から意味がなかったってコトですか?」と、僕はさらに質問を重ねてみる。
「まあ、そうともいえるが。そうでないともいえる」
「どういうコトですか?」
「そりゃあ、100%完全に理想的な方法であるとはいえないだろう。だが、今までのやり方に比べれば、随分とマシになるかもしれない。少なくとも、その可能性はある。それを実験によって確かめようっていうんじゃないか」
「フ~ム」と、僕は一応は納得してうなづいてみせる。
すると、今度は別の方向から声が飛んでくる。
「私は、ちょっと難しいんじゃないかと思ってるわ。みんなにお金を配るだなんて、やっぱり現実的じゃないもの。それには、とてもたくさんのお金が必要になってしまう」
「前にも話題にあがっていたけど、財源の問題ですね」
「そうそう。それだったら、ほんとに困っている人にだけ援助してあげた方がいいと思うの。それも期間限定でね。それだったら、それほどたくさんのお金は必要なくなるもの」
「生活保護みたいにか?」
「そう。現状だと、アレが一番現実的だし、理想にも近いと思うわ」
「でも、生活保護もいろいろと問題が多いといわれてるけどな~」
「必要もないのにもらってる奴も多いって聞くしな」
「不正受給ってヤツだな」
「それは、一部の人だけよ。ほとんどの人は、ほんとに困ってるから生活保護を受けてるのよ」
「その“一部”ってのが、どのくらいかだな」
「そうそう。実際は、思ってる以上に不正受給者は多いのかもな」
それから、話題は給食費の問題へと切り替わっていく。
「とはいえ、生活保護受給者なんて、日本全国民の内のわずか2%とかそこらだからな。全員に一定額を配るに比べれば、随分と安上がりなもんさ。たとえば、給食費と同じさ」
「給食費?」
「そうそう。最近、よく話題になってるだろ。給食費を払わない親が増えてるって。それで、“未納の子供には給食を食べさせない方がいいんじゃないか?”なんて案も出てるくらいだ」
「それも、かわいそうな話よね。子供には罪はないわけだから。それだったら、給食くらい全員無料にすればいいんじゃないの?」
「それが、そうでもないのさ。ちょっと計算してみればわかる。小中学生全員に給食を無料で食べさせるとなると莫大な予算が必要となってしまう」
「え~っと…今、給食費っていくらくらいでしたっけ?」と、僕は尋ねる。
「大体、月に4500円くらいね」
「結構するんですね。1学年が100万人くらいだから。4500円×12ヶ月×100万人×9学年=4860億円。5000億円近く計算になりますね」
「な?それだったら、未納の子供だけ無料で食べさせた方がいい。それならたいした額にはならない。実際には、夏休みもあるし、学校によっては給食ではなく弁当だとか学食なんてとこもあるから、もうちょっと必要な金額は減るだろうが、それでも相当な予算を必要とする。それも、毎年だぜ?」
「しかも、ほんとに給食費が払えない親なんて、極々わずかだろうからな。結局、金を払うのをケチってるだけなんだ。しかも、その浮いた金で何をしてるかといえば、携帯料金を払うとかうまいもん食いに行ったりするわけだ。酷いのになると、ギャンブルする資金にあてたりしてやがる」
「もし、どうしても給食費を払えないほど困窮してるとなれば、それこそ生活保護なんて援助もあるしな」
結局の所、全員を公平に救うというのは、割に合わないらしい。
それだったら、ほんとうに困っているわずかな人を助けるのにお金を使った方がいい。どうやら、それが“効率のよい方法”というヤツらしかった。




