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冬の終わり

 冬が過ぎ、春がやってきた。

 その間、僕が何をやっていたかというと、家の中にひきこもり、ひたすらテレビを見て暮らしていただけだった。というか、それ以外に何もする気が起きなかったのだ。


 なにしろ冬は寒い。僕が思っていたよりもずっとずっと寒かった。ここは、実家から車で1時間と離れていない距離にも関わらず、格段に寒かった。

 実家にいた頃は、雪なんてほとんど降りはしなかった。降ったとしても、積もったりはしない。せいぜい、年に1度か2度うっすらと地面を白いものがおおう日があるかないかといった程度。足で踏み荒らすと、すぐに消えてしまっていた。

 それが、この辺では結構な量の雪が積もる。地面の上に2~3センチとか、日によっては5センチ以上。それが冬の間に何日もあるのだ。アスファルトの道路はカチコチに凍り、自動車を運転するにもチェーンを巻いたりして対策をしなければならなくなる。今年も、とうげのカーブで何台か事故にあったらしい。


 そんなだったから、僕はできる限り、家から出ないよう出ないように気を使っていた。最低限の食糧を確保するために、どうしても必要な時はあったが、それ以外の時間はずっと家の中で過ごし、ひたすらにテレビを見続けていた。

 契約した有料放送のおかげで、ほとんど退屈することはなかったし、映画にもかなり詳しくなった。

 ただ、12月~3月までの4ヶ月間、よくわからないままにアッという間に時が過ぎてしまっていた。ある種の充実感はあったが、同時に「もったいないことをしたかな?」という気持ちもあった。


「こんなだと、1年なんてまたただな。ベーシックインカム大実験の5年間だって、すぐ。それどころか、一生いっしょうだって、何をやっていたのかわからないままに過ぎ去ってしまうだろう…」

 それは、ちょっと残念だなと思った。

 せっかく生まれてきたのに、何もできず、何も残せずに死んでいくだなんて…


 残す?

 そう、“残す”だ。

 せっかく、人としてこの世界に生を受けたのだ。何かを残す必要があるのではないだろうか?

 それが、僕の…あるいは、人としての役割なのでは?


 それは、たとえば、野菜だとかそういうものではない。

 確かに、野菜づくりも、何かを生み出している。だが、食べてしまえば、それで終わり。もちろん、栄養にはなるし、おいしいし、全く意味がないわけではない。

 だが、僕のイメージする“何かを残す”というのは、それとは全然違っている。あえて野菜でたとえるならば、新しい品種を生み出すとか、そういうことだ。それならば、意味も価値もある。後々の人々の暮らしにまで影響を与え続けるだろう。


「では、一体、僕に何ができるのだろうか?何を残せるというのだろうか?」

 僕は、ひさしぶりに畑に向かいながら、そんな風に考えるのだった。

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