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シェアハウス同士の親睦会

 油山さんに髪を切ってもらって以来、僕は坂道さんたちが住んでいる家に遊びに行くようになっていた。

 さすがに散髪代が500円では安すぎると感じた僕は、その分を埋め合わせるつもりで畑で取れた野菜などを持参していく。

 すると、その日は、その野菜を使って料理が振る舞われる。そうして、僕は晩ご飯をごちそうになって帰るのだった。

 こういうのを“持ちつ持たれつの関係”というのだろう。


 坂道さんが住んでいる家には、油山さんの他にもう2人の男の人が住んでいる。全部で4人の共同生活だ。

 それ以外にも、女性だけで住んでいるシェアハウスというのも近くにあって、よくそこの家の女性も集まって、みんなで食事するのだった。

 こういうところが田舎いなかの家のいいところだ。どこの家にも10人や20人くらい入れる広い部屋があって、大勢で食事をしたり、くつろいだりできる。


 元々この街に住んでいた3000人の他に、ベーシックインカム大実験によってあらたにやってきた2000人の人々は、こうしてアチコチで連絡を取り合うようになってきてきた。もちろん、中には孤独をつらぬき生活を続けている人もいる。

 そういうところも自由なのだ。あくまで自分の生き方は自分で決める。必要だと感じれば協力し合えばいいし、そうでないと思えば1人で暮らせばいい。


「君も一緒に住まないか?」と、坂道さんたちにさそわれはしたが、僕は遠慮させてもらった。

「いえ、1人で生活する方が気が楽なので」といって。

「そうか…まあ、気が変わったらいつでもいってくれよ。歓迎するから」

 坂道さんは、そういってくれた。


 一緒に住むのはお断りさせてもらったが、その代わりによく夕食を共にさせてもらった。もちろん、大量の野菜を持って。どうせ、1人で食べてても余らせてしまうのだ。それだったら、みんなに食べてもらった方がいい。料理をする手間もはぶけるし。

 それ以外にもバーベキューや花火大会などが行われることもあった。こういうのが田舎のいいところだ。庭で、炭火で焼き肉をしたりしても、誰1人文句をいってきたりはしない。それどころか、気さくに話しかけてきて一緒に参加してきたりもする。


 シェアハウスの人たちが集まっての親睦会しんぼくかいでは、よく農作業のコトが話題に上がった。

「農作業ってのは、なかなか難しいものだな~」

「そうですね。特に、水やりはコツが要りますね。僕も、水やりに失敗していくつかダメにしちゃいましたよ」

「でも、やりがいはあるのよね。私、土いじりなんて、この街に来てから初めてやったけど、意外と楽しいものね」

「そうそう。自分が育てた植物が成長していく様子を見るのって、ワクワクするのよね~」

 などといった会話が繰り広げられる。

 ここで、新しい野菜の育て方やコツなどを学ぶことも多かった。また、持っていない種やなえなどをわけてもらえることもあった。そうして、それらを自分の畑で栽培してみて、また次の機会に報告するのだ。

 おかげで、1人で作業していた頃よりも格段に効率はよくなり、楽になった。


 こうして、僕らの農業技術はメキメキと音を立てるように上達していく。

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