第一町人発見!
歩き始めてすぐ、金髪のイケメンがこちらに向かって手を振りながら近づいてきた。
(……オレに手を振っているのか?)
いや、違う。違うはずだ。
そう思いたい。だが、もしオレに向かって手を振っているのだとしたら……どうする?
引きこもっていたせいか、初対面の人間とまともに話したのなんていつぶりだよ。
マジで、いきなり引きこもりにはハードな展開だろ。しかも相手はイケメン。眩しすぎるぜ……。
っていうか、そもそも話は通じるのか?
勢いに任せて外に出てみたはいいが、心の準備なんてできていなかった。
やべぇ……。
そんなことを考えているうちに、金髪のイケメンはオレの目の前までやってきた。
「アレン、おはよう!」
……アレン?(どちら様ですか?)
頭の中で疑問符を浮かべていると、金髪のイケメンが続けて話しかけてきた。
「アレン、今からギルドか?」
……ギルド?
オレは返事に困り、黙り込んでしまった。
「ん? アレン、どうかしたのか? 具合でも悪いのか?」
金髪のイケメンは不思議そうにオレの顔をのぞき込んでくる。
「黙ってちゃわからないだろ。お前、どうしたんだよ……」
「あっ、うっ……」
ダメだ。何か言わないと。
そう思えば思うほど、言葉が出てこない。
「アレン、やっぱりどこか悪いのか? 診療所にでも行くか?」
心配そうに尋ねてくる相手を前に、オレは必死に頭を回転させた。
どうする?どう説明すればいい?
まさか、自分が誰なのかもわからないなんて言えるわけがない。
……いや、待てよ。
記憶喪失ってことにすれば、なんとかなるんじゃないか?
「き、昨日、転んで頭を打ったんだ。それで……記憶が、定かじゃなくて」
自分でも苦しい言い訳だと思う。
だが、ほかに説明のしようがなかった。
「……は?」
金髪のイケメンは、ぽかんと口を開けた。
「オレは……アレンって名前なのか?」
恐る恐る尋ねると、相手はますます心配そうな顔になった。
「お前、本当に大丈夫か? お前はアレン。十八歳の冒険者だ。……オレのことはわかるか?」
「すまん。覚えていない」
正直に答えると、金髪のイケメンは困ったように頭をかいた。
「マジかよ……。オレはバルト。お前と同い年で、家も近い。オレも冒険者で、たまにお前と一緒に依頼をこなしてる」
バルトはそこで一度言葉を切り、真剣な表情でオレを見つめた。
「それに、オレとお前は孤児院で育った幼なじみだ」
……なるほど。
つまり、こいつはバルト。十八歳。冒険者。オレの幼なじみ。
そして、どうやらオレはアレンという名前らしい。話しは通じたが、情報が多すぎる。いや、待て。
そもそも、なんでオレはアレンになっているんだ?昨日まで、実家に引きこもっていたはずなのに……。
痩せた気がしていたのも、気の所為ではなく転生した感じか?
アレン、オレは今からギルドに行き採取依頼を受けるがお前はどうする?診療所にでも行くか?
ここがどこかもわからない。どうしたらいいかさえわからない。なら付いて行くしかないのか⋯。今は少しでも情報が欲しい。でもお腹が空いたが店もわからない。今持っている通貨がどのくらいの価値で食事をするにも、いくらかかるかもわからない。バルトについていくのが一番か。なんて言おうか⋯。その時アレンのお腹が鳴った。ぐぅぅぅ。
アレンお腹空いてるのか?ならいつもの店で飯にしようぜ!
腹の虫に救われた⋯。それよりもいつもの店とはどこなんだよ。
なら飯食った後に診療所に行こうぜ!
しかしバルトっていいやつだなぁ。いきなり記憶がないって言うやつとか怖すぎだろ普通は。簡単に信じてはいけないが情報がほしい。付いていくか。
じゃあ行こうぜ!バルトはオレの前を歩きついてくるように促す。オレはバルトについて行きながら周りを観察しながら向かうのであった。
西洋風のレンガ造りの建物ばかり。まだ朝早いせいか人はあまりいない。向かっている途中井戸らしき物があったり、馬車等もあった。やっぱりここは異世界なのか。と考えながら少し歩くと、「着いたぜ!」
バルトが小さな木造のフォークと剣が描いてある看板がぶら下がった店の前で立っている。看板には何か書いてある⋯。分からない文字だが、頭にはすぐ冒険者の晩餐と思い浮かんだ。良かった⋯。話しも通じる。文字も読めるのは本当に助かった。
普通異世界転生って説明やらチートがあったりするもんじゃないのかよ!と思いながらバルトの後に続き食堂に入った。




