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GLAIVE (狂炎伝承)   作者: 団栗山 玄狐
Ver.06 正義の味方と見方
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act53 山奥にto head towards

act53 山奥にto head towards(に向かう)




動き出したバカな連中は、あちこち盗聴器を仕掛け、人を探し回る。

勿論、それを許す人などこの村にはいない。


喫茶店の外、裏口で携帯片手にもたれかかるペルボ。

「ユズか、すまんな。入り込んだ連中は何人おる…

そうか、なら位置情報もらえるか。

ん?ああ俺一人でやる。

分かっとる、相手はただの調子乗った子供どもなんやろ。

それでもや、やりすぎ取るのは確かや。

ええと歳してやったらあかん事の区別がついとらん以上お灸をすえたらなあかん。

大丈夫や。でフォローを頼むで、わかっとる。

大事にならんうちに畳みかける。

じゃあ、頼むで」

携帯を切り、一呼吸つく。


本来ならペルボは、裏方である。

前線にでたとしてもバックアップに入る。


その彼が積極的に行動するのは、ごくまれである。


そのまれな事が今なのだ。


『さてユズのフォローは取り付けた。

あれでも防波堤の主任や。慣れてはいないが大丈夫やろ。

後はオレ次第か。

まったくガキどもが、せっかく隠居しとる爺さんを担ぎ出そうとしおって、

ええ迷惑や、きちんと叱ったるさかい覚悟しとけよ。

と、店の片づけしてから動かな、またナズナに叱られるわ』

と、慌てて店に向かうペルボ。


今一つカッコが付かないのである。


村の犯罪監視局、通称:防波堤。

そこの主任である二沢ユズは、悩んでいた。


自分の直属の上司にあたるペルボから依頼・・・

断れるはずもなく、でも対処方法は浮かんでいた。


失敗し、その失敗を取り戻すことで手に入る対応能力。

数多く失敗して対処する。


その経験は、どんな状況でも臨機応変に対応できる人間を育てる。

その一人が二沢ユズである。


彼女も数多くの失敗を経験していた。

それでも周囲の人たちはその失敗を取り戻すために手貸してくれた。


自分みたいな役立たずの引きこもりを見捨てないどころか、励ましともに手を取り進んでくる村の人たちが彼女は大好きなのだ。


だからこそ、村の人たちが困りそうなことを見つけてはフォローできる人に橋渡しをする、または犯罪者を厳しく取り締まることに協力している。


危ない事が起きる前にそれを止める課…防波堤と呼ばれるゆえんである。


今回もその意識は高い。

実際の所、彼女自身もペルボたちに拾われてきた人間だ。


村の人たちのおかげで立ち直りつつもあるが、それでも性分は、変えられない。

そんな彼女を村の人たちは認めてくれている。



部屋で仕事漬けになりやすい彼女は、定期的に連れ出される。

強制休暇や運動の為、はたまた女子会などもう見事に。


彼女自身もそれが嫌ではなく、嬉しかったりする。


その為、彼女は村を守りたい、恩返しがしたいという気持ちが大きいのだ。

だから、一人で何とかしようとするペルボを心配している。


でも、大事にはできない、

ならどうするか、決まっている。


ペルボの親友たちに動いてもらおう、と考える。

勿論、それはペルボの意志に反することなのだが、

彼女も一応探偵社に在籍しているのだ。


つまり、おせっかいという事になる。

そのことを当のペルボは忘れている。


そして、別の所では動き始めていた。

老人ホームで仕事にいそしんでいるカルウが、一人の職員を呼び止める。

「立山ミナミさん、これから訪問介護に向かうので手を貸してください」


「はい、ここの準備が済んだら準備に入ります。少しお待ちください」

そのセリフに立山ミナミは、慌てて返事をする。


「慌てなくてもいいですよ、偏屈爺さんの所なんで多少遅れてもいいです」

そのセリフに


「染村さんですか?新人の立山さんでは大変じゃないの」

他の職員が声を上げる。


「そうかもしれないけど、経験値がある分立山さんが適任と感じました。

それにここで仕事をしていれば、いずれは相手をしないといけませんからね」


「それは、そうですが…」

口ごもる職員。


「大丈夫ですよ、私も村の一員です。頑張ります」

と、力強い返事をする。


「あと、ユタカも連れていきますんで」

カルウの言葉に


「えっ、公然デートなの?」

「山奥に連れ込むなんてなんてアグレッシブ」

「逃げられないようにするなんて恐ろしい事を」

なんて、職員たちが言い始める。


それに頭を抱え嘆息するカルウ。

その言葉を真に受け全力で照れるユタカ。


「あのね、どうしてそうなる?

あそこは寺でもあるんだよ。

アンタらが考えるような事できるかよ」


「「「ああ、そういえば…」」」

と納得する一同。


「お寺何ですか?以前はありませんでしたよね?」

立山ミナミは、不思議そうにつぶやくと



「以前の宗教テロで引き取った信者たちで

まともそうな者たちの厚生施設を兼ねた寺を建立したんですよ。

まあ、職業訓練校みたいなものです」

と冷静に言うカルウに


「お寺が厚生施設?訓練校?どういう感覚何だろう?」

と、復活したユタカが呆れ気味につぶやくと


「良いだろ、分かりやすくて。

そこは駆け込み寺としての機能もある。

精神を病んだ人用だけどな、自然の中で癒すという意味で…」


「いろいろやってるね、ここ。

山奥の村ならでは何だろうけど…すごいよ」

ユタカは素直に感心している。


「ですけど、私たちが同行するのは意味があるのですか?」

立山ミナミが疑問を吐露する。



「その話は車の中でしよう」

と、言ってカルウは二人を車にいざなう。


「あ、所長。例の女子会も近いのであまり二人に無理をさせないでくださいね」

と、職員の一人が言うと


「まあ、善処するよ。とにかく行こうか二人とも」

三人は、車に乗り込み山に向かう。


舗装もされていない山道を。



車を運転しながらカルウは説明を始める。

「さて、立山さんを指名したのは元信者たちのメンタルケアをお願いしたいからだ。

で、ユタカは今行く寺には無縁仏を埋葬しているところだからだ」

と、行く目的を説明した。


「無縁仏?私には寒けないと思うけど…」

不思議そうな顔をしている彼女に


「その寺は、あまり公にできない人たちが埋葬される修験者の寺でもある。

まあ、簡単に言えばアンタの親父さんの墓もある」

その言葉にハッとするユタカ。

村についてからは目まぐるしい事が起きすぎて大事な事なのに失念していたことに気づく。


「そう、父さん。何で今まで忘れてたんだろ…私」

と座席で落ち込み始める。


「仕方がない、なんせ考えている暇がなかったからな。

オレもここまで話がこじれるとは思わなかった。

でも、今は割と落ち着いたから丁度よかったよ」


「ありがとう、気にしていてくれて」

優しい顔で泣きそうである。


「あ、あの先ほど女子会と言われていたのは何です?」

立山ミナミが、質問してきた。


「ああ、それは、今から行く寺の爺さんの弟子のひとりである桐山ユズを引きずり出す会合だと思えばいい。アイツこもっているから引きずり出す口実だよ。

そこで村の女性陣との交流会も兼ねてるよ。

ウチの村の男性陣が頭が上がらなくなる会合だって聞いたことがある」


「参加したことないんですか?」


「名目上、女子会だからね。男子は出禁だよ、でも行ったら行ったでどんな目にあわされることやら」

苦笑いを浮かべるカルウ。


確かにそうである相手は海千山千の女性陣どうなるかを考えるだけで恐ろしいものがある。


そんなこんなで彼らは山奥の寺に向かう。


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