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GLAIVE (狂炎伝承)   作者: 団栗山 玄狐
Ver.03 宗教団体《幸福の導き》
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act27 目覚めるsecret sword

久々に頑張ってみました。少し長めです。

act27 目覚めるsecret sword(霊剣)




ヒカラやツヌキは見下していた。目の前にいる若造一人で何ができるか、と。

相手をなめていた。このことが判断を遅らせたのだ。


自慢の使徒すべてたおされたのだ。

たかが、一人の若造に。


当のカルウは教団の連中を見据えていた。

その目は相手の次の動きを見逃さないといった感じである。


頭を振りながら立ち上がるヒカラ司祭とブロム・シュテット。

目の前を見て愕然とする。


自分たちの自慢の兵隊である使徒が全滅していた。

今までこの部隊ですべての作戦を成功させてきたのだ。

今回も成功させることができたはずだ。

その自信もあった。

だが、結果は見ての通りである。


部隊は全滅だ。


その事実に愕然しながらブロムはあることに気づく。


それは、目の前いる青年の後ろから赤いオーラが下に流れ落ちているのだ。

もちろん、血ではない。

地面に落ちると霧散していくのだ。


なんだ、という疑問が生まれる。

隣のヒカラ司祭は、ゆらゆらと立ち上がり、カルウを指さし

「貴様は何者だ。」


「ただの村人Aだ。少しお前たちよりケンカがつよいな」

と、カルウは射抜くような視線を向けに答える。



そこにいた全ての人は『喧嘩が?』というツッコミを心の中で入れていた。

そりゃそうだ。

あの動きであの戦い方でケンカで済ますのは異常だ。

格闘家だ。と言っても問題ないくらいである。


本人はケンカが強い程度の認識かもしれないが。



「時間がかかりすぎだヒカラ。次で決めなければ私が奴を片付ける」

とツヌキ司祭長は言う。

言い方はあくまでも自分が上だという感じだ。


その言葉に慌てるヒカラ。

今までこんなに追い詰められることはなかった。

常に自分は勝者であり、見下す立場だった。


今は、手駒失い信用も失ったのだ。

あと残る手段は、自分の格闘技術と話術、そして副官である女性ブロムの洗脳能力頼みある。


「ブロム、奴をとっとと洗脳ししてしまえ」

ヒカラはまだ、立ち治れていないブロムに聞こえる程度の声で命令した。


「もうしています。でも全然通用してません。条件も満たしているのに」

と弱気なブロムに


「ならば、お前の最大出力でやれ。それならばできるだろう」


「はい、わかりました」

というとブロムは異能力《心の楔》を発動させる。それも最大出力で

この能力は相手と視線を合わせ相手も自分を見るということで発動させることができる。

なのでブロムはカルウを凝視する。


カルウもそれに気づいたのかブロムを見る。

その瞬間、「ぎゃーっ!!!」ブロムは頭を抱え空を仰ぐ。

そして、涙目のまま膝をつき意識を失った。


「どうしたのだブロム。早くしないか」

ヒカラはブロムを叱咤するがその声は届いていない。


「無駄だよ。その女はオレの深層心理に触れて心が折れた。しばらくは再起不能だ」

カルウは淡々という。その言葉には感情がなく事務的にしゃべっているようだった。


「貴様、なにをした」

ヒカラは声を荒げ、叫ぶように言う。


「何聞いてたんだよ。そいつはオレに洗脳をしようとして失敗した。それだけだろ」

その言葉にヒカラは苦虫を嚙み潰したようになっていた。

もう手段が残っていない。

自慢の話術の通用しない。

格闘技術も素人に毛が生えた程度である。

もう勝てる要素がない。

だが、何とかしないといけない。

ヒカラは必死に考えた。

そして、「信者たちよ、奴を囲め。たとえ力が強くても相手は一人だ。

数に物を言わせれば抑え込める」

と、ヒカラは叫ぶ。


それに合わせて残りの信者たちはカルウを囲む。

その顔には獲物をいたぶることができることを楽しみにしている愚か者の顔が浮かぶ。


「めんどくさい」

とカルウは言うと両手に持っていた短刀を腰の鞘にしまい、

背中にしょっていた細い袋の上の部分を左手でつかみ、その場にしゃがむ。

そして、右手の平を地面につけた。

すると、赤いオーラが波紋状に現れ、広がっていく。


広がっていく赤いオーラが信者たちを通り抜けていくとバタバタとれ始める倒れ始める。

その様子に慌てるヒカラ。だが自身も赤いオーラに触れたことで意識を失い、倒れた。


その後、残ったのはカルウとミナミたち、そして教団の教祖らしき女性、司祭長であるツヌキだけとなった。


「やはり、私が始末しないといけないか」

ツヌキは手に持っていた刀を抜き、前にでた。


刀は太刀ほどの長さで鈍い輝きを放っており、刃の部分を薄く覆うように黒いオーラをまとっていた。


「ふんっ。やっぱ、あんたを押えないとこの騒ぎはおさまらないか」

カルウは腰の短刀を両手で抜き、体の前で腕を交差させて構える。


「そんなナマクラでこの霊剣に対抗できるとでもおもうのか」

ツヌキは見下すようにカルウを見る。

とても聖職者には見えない。

野望を胸に秘め覇道目指すものの眼だ。


「ああ、これ短刀じゃないぜ。ただの鉄板だ、短刀の形をしたな。

 この日本でしかも警察がいる所で銃刀法違反なんて面倒ごとするかよ」

とカルウは言う。


「ほう、ナマクラ以前のおもちゃか。私もためられたものだ」

というと羽織っていたマントを投げ捨てる。

よく見れば60~70ぐらいの年配で170ぐらいの身長で白髪頭で容姿で。

さえない管理職のように見えるが目はぎらついている。

カルウとは違う威圧を放つ。


「プライドでも傷ついたのかよ。三毒・痴≪ち≫の霊剣とは何か知っるのかよ。それは聖職者が持つようなものじゃないぜ」


「なにが言いたい」


「三毒・痴≪ち≫の霊剣。別名愚者の黒刃≪ぐしゃのこくじん≫は真理に対する無知の心、【おろかさ】を意味する。

 身を亡ぼす最も強い心の毒とされているものを使う聖職者ってどうよ」


「はは、きれいごとでなんでもできるとは思っていないよ。それに私自身聖職者でもないしね」


「司祭長さまがそんなこといってもいいのかよ」


「世間的にはまずいだろう。だがそんな建前など今、気にする必要はないだろう」


「確かにな。でも、これだけの騒ぎを起こしたんだ。責任は取ってもらう」

というとカルウは、ツヌキに向かって駆け出した。


ツヌキは近づくカルウに向け黒刃を振り下ろす。


それをカルウは右の短刀で受ける。受ける際わずかに短刀を斜めにする。

これにより相手の力をわずかにずらすのだ。

見事に受けきられ驚くツヌキ。

それを見逃さずカルウは左の短刀でわき腹を薙ぐ。

手ごたえはあった。だがその手ごたえに違和感があった。


まるでゴムをたたいているような感覚である。


その証拠にツヌキは何事もなかったように再び黒刃を振り下ろす。


今度はカルウが対処に遅れた。


短刀をその場に置くように手を放し、左に転がる。


ツヌキはかまわず黒刃を振り下ろす。


空中に置かれた短刀は二つに斬られ、地面に落ちる。

短刀のように作られたとはいえ、鉄板であるしかも0.5ミリの厚さがある。

0.5ミリの厚さと言えば薄いと思われるがフライパンでもそのぐらいの厚さだ。

プロレスラーや怪力自慢の筋肉人間でも折り曲げるのに苦労する厚さだ。

普通の人には0.5ミリの厚さの鉄板を手で折り曲げるなんて不可能に近い。


ましてや空中に固定されていないものを豆腐を切るように切断なんて達人でもできない。

ツヌキはそれをやってのけたのだ。


これは脅威としか言いようがない。


カルウは、片膝をついたままの状態で左手に持った短刀をツヌキに投げつける。

ツヌキはそれを斬り落とした。

冗談のような現実が目の前で起きていた。


それを冷静に見ていたのは他ならぬカルウ自身である。

相手の力量を見るために短刀を投げつけたのだ。


「なるほど、薄くオーラついているだけだと思ったけど使いこなしているようだ。

 一部は体にもまとっている感じかな」

と解説交じりに言うと


「ほう、割と冷静だな。正解だ、オーラの量は確かに少ないがうまく使えば鉄だろうが何だろうが斬れる。

 それに体にまとえば鎧にもなる。この霊剣がある限りつまりオマエがオレに勝てる要素はない。

 おとなしく刻まれるか、降伏するかしかないんだよ」



「おとなしく刻まれると思うか」

と言いながらカルウは立ち上がる。


「思うね」

というとツヌキは右斜めに黒刃をカルウめがけて切り下す。


カルウはそれをよけようと足を踏み出そうとするが動かない。

よく見れば黒いオーラがわずかに足にまとわりついていた。

それを確認したカルウはちっ、と舌打ちをする。

そのまま左手で背中にある細い袋を縛っていたひもをほどき、右手で袋の中身をつかむ。


そしてそれを迫る黒刃に向けて振り下ろす。


キンッ!と金属がぶつかる甲高い音が響き、カルウに振り下ろされるはずの黒刃が止まる。

ツヌキはそれを見て驚きながらも後ろに下がり間合いを取る。


改めてカルウの手にあるそれを見て歓喜の浮かる。

そこにはツヌキの持つ黒刃と同じくらいの長さ刃と同じような柄のこしらえをしている太刀が赤いオーラをまとい存在していた。


ただ、一つ違うのはその赤いオーラが多いことだ長さは刀の二倍ほど幅は20センチほどあった。

刃からあふれ出るという表現がまさに一番的確なのだろう。


「それをよこせ。こぞう!」

声が大きくなっていた。あまりにもうれしくて、求めていた三毒の霊剣の一振りが目の前にある。

その興奮が抑えられなくなっていた。


「大人げないね。でも、アンタには使えない。試してみるか」

というとカルウは刀を放り投げる。


刀は赤いオーラを揺らめかせ、ツヌキの足元に突き刺さる。


その行動はさらにツヌキを歓喜させる。


「貴様はバカなのか。唯一この黒刃に対抗できる霊剣を手放すなど・・・まあ、最善の選択だよ。」

求めていた霊剣が今目の前にあることに興奮が抑えられなかったツヌキは相手の意図など眼中になかった。

カルウが言った一言、アンタには使えないという言葉など頭になかったのだ。

左手で目の前に突き刺さった赤いオーラを放つ刀の柄をつかむ。


その瞬間、頭の中にというよりも心に強烈な感情がなだれ込む。

目の前が赤くなり、怒りの感情が心を支配する。

というよりも怒りの感情が心に注ぎこまれ内側から破裂しそうになる。

わずかに残った意識を振り絞りつかんでいた左手を刀から離す。


今まで流れ込んでいた怒りの感情は収まり、気持ちが落ち着いていく。

赤く染まった目の前のもとの色を取り戻す。

息が荒くなっていた。心が折れるという表現はよく使われる。

だが、心が破裂するという表現が正しい状態から脱出したツヌキは、息を整え、

「きさま、何をした~~~~~~~!!」

と絶叫しカルウをにらみつける。


「何かしたのはあんた自身だ。それに最初に言ったはずだ。アンタには使えないといったはずだ」

とカルウは呆れながらいう。


「そんなはずはない。オレが持つこともできない刀をなぜ貴様が持てるのだ。これは貴様が何かしたからだ。

 そうでなければ、選ばれしものであるオレが使うどころか持つこともできないはずがない」

と見事なまでに自分勝手な論理を振りかざす。


「アホなのか。」

とため息まじりの一言をつぶやく。

それは、ツヌキにも聞こえたらしく憤慨し始めた。


それを見てさらに呆れるカルウは

「三毒・瞋≪しん≫の霊剣。別名、憤怒の赤刃ふんぬのせきじんの継承者だからオレはそれを使える。理由はそれだけだ。」

と言った。


「継承者だと、それがどうした。私は選ばれ者だ。そんな私が触れないはずがないのだ。

そんな戯言などに騙されんぞ」

とツヌキは聞く耳を持たない。


「アンタが何者で誰かなんてどうでもいい。この面倒なやり取りももう邪魔くさい。

とっとと終わらせる」

とカルウは呆れながら言うと


「ははっ。武器もない貴様になにができる。今度は逃がさないこの黒刃で切り裂いてやる。

 そうすればこの刀に仕掛けられた仕掛けも解けるだろうよ」

あくまでも赤刀を触れないのはカルウのせいと思い込むツヌキの目の前で


カルウは赤刀に右手の平を向け

「戻れ」と一言いう。

すると赤刃から赤いオーラがカルウの右手に絡みつき、そのオーラを通り赤刃が持ち主の手に戻る。


「何をした」

驚くツヌキに対して


「もうオマエのおもりをするつもりはない」

といい捨てた。

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